安藤士郎の場合 21
第八節
「で?どうだったんです?水木さんってあまり普通のコミュニケーションが得意な方には見えなかったんですが」
「見事なもんだったよ。正式にバイトとして働いて欲しいくらい」
“チャイナさん”になれて嬉しそうに働いているところが目に浮かぶ様だ。
「あ、そうそう。その日は結構酒飲みの性質悪いお客の来る日だったんだけど、普通にお尻触られたりしてたね」
「…あの…」
「厨房帰って来るなり『生まれて初めて職場でセクハラされちゃった!』っつって泣くほど喜んでたけど」
シチュエーションが許せばテーブルごとひっくり返して吉本新喜劇みたいにずっこけるところだ。どどどどどどどど…。
「…ありそうな話ですね。水木さんなら」
「だな」
「こちとらガキのスクール水着なんて冗談じゃなかったけど…まあ面白いもんが見れたわ」
「ん?あいつは必ずしも対戦相手を変身はさせんが?」
「それはウーさんが特殊系だからですよ。どちらも望んでなくても必ず相打ちになっちゃうっていうね」
「まーそーゆこと。で?どう。一回一万円で」
「値段が上がってるぞ」
「あ、ごめんごめん間違えた。五千円で」
「金貰っても御免こうむる」
「あによつまんなーい」
(続く)