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安藤士郎の場合 15
第五節
「うん…まあね」
「何で用があるって思うんだよ」
これは橋場。
「だって戻すだけだったら別にその場で戻せばいいわけでしょ?こうやって落ち着いて話せる様にお店に入る必要はない。ましてやおごってくれるなんてね」
「…」
じっと斎賀を見ているウー…若く、女子高生姿になっているが、元が女なのでその造形を活かしている。恐らく本当に若かった時はこんな感じだったのだろう。
「あの時に相打ち戦略でこっちを追いつめたのはあんただね?」
「…ええ」
「ふん…頭いいんだ。ま、いーわ。あたしだって渋谷に遊びに来ることくらいはあんのよ。あんたがたに心当たりがある事とか聞きたいのはついでだから」
「何です?」
しまった!という表情をするウー。心理的ブラフを使いこなせるタイプの性格ではなさそうだ。
「わーったわよ。じゃあ単刀直入に聞くわ」
「下らん質問なら返るぞ」
「うるさいよセーラー服男子が」
「お前な!」
「いいから!」
珍しく斎賀が制止する。
「どうぞ」
「…この頃あんたがたのところにデカが来たりした?」
(続く)