安藤士郎の場合 14
第四節
「にしてもあんたがた、随分すんなり戻ってるよね。あたしの能力を食らったファイターって結構戻るのに苦労してんのに」
「あれから色々あってな」
「ええ。ボクら学習したんですよ」
「メタモル能力について?」
「そういうことです」
ふーん…と感心がありそうでない風情でコーヒーを煽る女子高生。
「この格好だとお酒飲めないのは辛いね」
「とんだヤンキー娘だな」
「悪かったねこのチャイナドレス男子が!」
「なんだとテメエ!」
「だから落ち着いてってば!」
何という大人げない人だろうか。男女の違いはあってもウーの方が一回り年上なのにまるで同じレベルでケンカしてる。この人本当にビジネスオーナーなんだろうか?…と斎賀は思った。
「ネタバレしてもどうしようもないんでいいますけど、ウーさんの能力って要するに『開始の手続きを踏まずにメタモルファイトを始める』能力なんですよ」
「みたいね」
肘で頬杖をついている。態度の悪いギャルだ。
「だからその後ちゃんと終わる手続きを踏めば無事に終了です。ついでに言うとウーさんの方にちゃんと試合をする意識が希薄だから次のファイトが始まれば簡単に終了しちゃいます」
「ふーん…興味無いや」
「折角説明してるのに…」
「あたしにゃ必要ないもん」
「いつもどうやって戻ってるんです?一応ウーさんだって相打ちとはいえ相手の能力食らってるんでしょ?」
「何となくだね」
顔を見合わせる男子高校生二人。お互いの顔に“駄目だこりゃ”と書いてある。
「…で?何か用なんですか?」
(続く)