飛田俊雄の場合 04
第四節
「…それは、精神が折れるかどうか関係なく、変身させられきった時点でさせられた方の負けってことですか?」
「そういうことだ。単純だろ?」
「つまり、その時点で変身させられた側がギブアップ宣言する確約をするってことだな」
「察しが早くて助かる」
少し考える斎賀。
「僕は構いません」
「待てよ。誰が戦うか決めてねえ」
「三人とも相手になろう」
被せる様に飛田が言う。
「…三人まとめて?」
「いや、三人順番にだ」
「…一人で全員倒せるってのか?」
「悪いが、キミたちレベルなら十人でも負ける気は全くしないね」
「随分挑発的なおっさんもいたもんだ。年寄りの冷や水は危険だぜ」
ボキボキと指を鳴らす橋場。
「おー怖い怖い。受けてもらえるってことでいいんだね?」
「ここまで挑発されちゃあ仕方がねえな」
「確認いいですか?」
斎賀である。
「変身決着ってことですけど、僕らが一人目で勝利したら?」
「その時はその時だ。そちらが希望すれば勝敗に関わらず三試合目までやろう。私が勝ったなら三人目までお相手したい」
「こっちも条件を出したい」
肩をすくめる飛田。アメリカンなリアクションが絵になるおっさんだ。
「こちらが勝ったら変身させるのは勿論だが、あんたが知ってるメタモルファイトについての情報が聞きたい」
「情報?」
「何でもいい。知ってることを教えてくれ」
「それが君たちの条件かね」
「ああ。そっちにもあれば聞きたい」
「特に無い。ただ…」
不気味な沈黙。
「敗者である以上、多少のペナルティは覚悟してもらう。解除条件の話だ」
「…確か敗者であっても、余りにも理不尽な場合は解除条件の拒否が出来ますよね?」
「よく知ってるな。だがまあ、ささやかなものだよ。それくらいのことが無ければ君たちも本気になれまい」
「俺はいいぜ。アキラは?」
「俺が先鋒だ!」
「よろしくお願いします」
斎賀が頭を下げた。
「一応言っておくが」
飛田が少し距離を取る。
「私はこれを試合だとは思ってない。レクチャーだ」
「…あんだと?」
「若いファイターと戦いたかったのは、ベテラン(古参兵)の技術を伝承しなくちゃと思ったんでね」
「…言ってくれるじゃねえかおっさん。アキラ!いいから畳んじまえ!」
「では勝負だ」
(続く)