安藤士郎の場合 12
このウーとは因縁浅からぬ仲である。
初めて出会った身内以外のメタモルファイターという事実も衝撃的だが、例外ばかりのイレギュラーな存在である。
基本的に「メタモル・ファイト」は相手を女へと性転換させ、女装までさせる能力をぶつけ合うものだ。
相手への征服欲の押し付け合いとでもいうべき恐ろしい戦いである。相手を性転換かつ女装させることは「メタモル・ファイト」勝利の絶対条件ではないのだが、多くの場合は一方的に性転換能力を食らった側の精神が折れてしまうことが多い。
男と言うのは何とも厄介な存在である。
攻めの性である男が受けの性へと転換『させられ』てしまう恐怖を代償に行われる駆け引きは、逆説的に「男の世界」でもあった。
ところがウーは生まれつき女なのである。
術者が女ならば「女同士が相手を男にする戦い」をするのかと思えばさにあらず。彼女はあくまでも「相手を女にして女装させる」能力使いなのだ。
戦う相手ももっぱら男。
多くのメタモルファイターが精神をざわつかせる「負ければ女にされる」恐怖が彼女には無い。当たり前だ。元から女なのだから。
同時に「無理やり女装させられる」恐怖もまた無い。日々女装しているんだから怖いわけがない。
これだけでも一方的に有利な立場である。
(続く)