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安藤士郎の場合 07
一八〇度リアクションを変化させたモヒカン…だったお嬢さま…が絹を裂く様な悲鳴を上げ、破れた制服の部分を抱きかかえる。
「何が『きゃー』だってんだよ!」
構わずブラウスに手を掛け、更に引き裂く安藤。
「よせ!やめろ!やめてええっ!」
男言葉と女言葉がごっちゃになりながら服を破り取られて行く令嬢。
ブラウスはもう引っかかった布きれと成り果て、ブラジャーが空気にさらされている。
スカートもむしりとられ、膝まである長いスリップに包まれた胴がむき出しになっていた。
周囲はパニックになった。
「やられる」
この言葉の意味がこれほど真に迫ることがあったろうか。
余りにも非現実的な有様に理解が追いついていなかったが、その場に張りつめた空気の不穏さが動物的なカンで危機を告げている。
「逃がすかよ!」
続けざまに何人かのか弱い悲鳴が上がる。
後日、また一つストリートギャング団が壊滅したことが流布された。
その場に残されていたお嬢さまたちの噂と同時に。
(続く)