飛田俊雄の場合 03
第三節
三人は連れだって飛田の後をついて歩いていた。
空港はとても広く、どこを連れまわされているのか分からない。
徐々に関係者専用エリアっぽいところに突入していた。
「…おい、ここ何処なんだよ」
「知りませんよ!僕だってそこまで空港マニアじゃないんで」
「心配いらないよ。取って食う訳じゃない」
渋く、落ち着いた低い声だった。
「失礼ですが、飛田機長ってお幾つなんですか?」
「ん?四十五だ」
橋場と武林の間に緊張が走った。これまで遭遇したメタモルファイターの中でも最年長である。
「キミたちは若いね。結構試合は重ねてるのかな?」
振り返らず背中越しに問う飛田。
「ま、そこそこです」
「そうか…」
飛田が立ち止った。
「この辺ならよかろう」
そこは一般のロビーと変わらない様に見えるが、全く人気のないエリアだった。
「改装中のエリアだ。基本的に人は立ち寄らないが、関係者ならそれほど怪しまれない。かといって機密性が高すぎる訳でもない」
「ファイトにあたって人払いしてくれたんですね?」
「そういうことだ。我々のファイトはちと特殊なんでな」
「勝負ってことだけど、誰とやるんだ?」
年上なのにため口の橋場。
「橋場さん!失礼ですよ!」
「生憎こちとら疑い深くなっててな。メタモルファイターとやらは正々堂々としたスポーツマンみたいなのばかりって訳でもなさそうでよ。敬語つかって最初から飲まれる訳にはいかねえ」
ふっ…と微苦笑する飛田。
「いいねえ。そのトガッた感じ。私の若いころにそっくりだ」
「何でもいいから勝負の説明しな」
「キミたちはいつもどういうルールでやってる?」
「別に…」
「僕ら同士では余りやってません。今は情報収集してるってところです」
「ほうそうか…一応確認するが全員そうなんだよね?」
斎賀だけが頷く。橋場と武林は疑い深そうな目で飛田を見ている。それで答えだった。
「仲間がいるのに戦わないのは勿体ないぞ」
「いいから!ルールを」
「うむ。変身決着だ」
(続く)