安藤士郎の場合 01
第四章 安藤士郎の場合
第一節
「本当にタイマンでいいんだな?」
「ああ」
人気のない公園、時刻はかなり遅い。
「大した自信だぜ。武器でも持ち込んだか?」
筋肉質に引き締まった身体を安っぽいジャンパーで包んだ金髪の男がふんぞり返っている。
「お前がこの所ここいらを締め上げてる新興グループのボスなんだってな?」
黒髪にサングラスと黒ずくめの安藤士郎がサングラスを軽くずらして金髪マッチョを見る。
「…どうやらそういうことになってるらしい」
「聞いたぜ?必ずタイマンで勝負を付けるってな。しかも代表者は必ず行方不明」
「そりゃ大げさだ。そうじゃないこともある」
「悪いがあんたはここで終わりだよ」
金髪の顔がニヤリと歪んだ。
「…まさかタイマンじゃないって?」
「当たり前だろうが!お前みたいな噂のある奴相手に一人で来るとでも思ってんのか!?」
周囲の闇に人の気配がする。囲まれているらしい。
「…代表戦方式にしたのはせめて被害が少なくて済むようにって配慮なんだがな」
「それじゃ何か?この人数全員をテメエはボコれるってのかよ?」
「流石に多いな。二十人までは一度に相手したことがある。試してないけど、普通の人間なら百人くらいはいけるんじゃないかな」
「面白れえ。いい実験になりそうだな」
す…と手を上げて掌を見せる安藤。
「こちとらなるべく平和的に解決したい。ギブアップしてくれるか?」
「テメエ…アンパンのやりすぎじゃねえのか?」
(続く)