小柴弘樹の場合 26
生地に隔てられていた両脚の皮膚が接触する。
脛毛に覆われた荒い表面の皮膚だったはずのものが、柔らかく剥きたての卵の様につるりとしていた。その生まれたばかりの柔肌同士が優しくも直接触れ合った。
男の衣類のままではあり得るはずの無い皮膚感覚だった。
「はぁっ!」
服の内側で、ズボンに隔てられていたことでせき止められていたスリップの裾がはらりと舞い落ち、両脚の太ももまでを包み込む。
「あ…」
変形した生地の量が競り上がってくる。
「よせ…やめろぉっ!」
きゅっとタイトに両脚を包み込み、膝丈となってその下を空気に晒した。
そ、そんな…これは…す、スカート…じゃないかぁ…。
小柴は羞恥に頬から火が出そうだった。
清潔感のあるメイクが顔に施されて行く…。
「ほい、出来上がりだ」
「こ、これは…」
そこにはフレッシュで凛々しい婦人警官がいた。
「そんな…そんあ…俺って…」
自らの変わり果てた肉体と衣服を見下ろし、あちこちを触ったりしながら小柴が言う。
「そうさ。婦人警官になっちまったんだ。ミニスカポリスってか?」
「お前…何を考えてんだ!」
「俺はあのミニスカポリスの安っぽい衣装が大嫌いでな。これは『本物』だ。縫製もしっかりしてる」
「そういう話じゃ…」
「どういう仕組みなのか知らんが、内側の輪っかみたいなひもも、商品タグまでついてる『本物』だ」
「え…えええっ!?」
何とも可愛らしい声である。
「同じ警察官だ?そうだろ?」
(続く)