小柴弘樹の場合 20
「無事なのか?」
「服はボロボロだったがレイプ検査は陰性。あれだあれ。管轄の副所長のせがれが事件をもみ消してた地域の話だよ」
「ああ、あれ」
「警察官のせがれなのに札付きでね。この時行方不明になったメンバーにも入ってる」
「っ!…そうなのか?」
「ああ。ここからの最初の結論だ」
大迫がごくりと唾を飲む。
「この現象は明らかに「人間」が引き起こしてるってことだ」
「そうなのか?」
「犠牲者の多くは問題を抱えてる。どうも偶然の事故や偶発的な現象には見えない。何らかの意思を感じるんだ」
「で、お前はその女子生徒が加害者だと思ってる訳だ」
「例のストーカー女だけどな」
「あ、ああ…話が飛ぶなあ」
「すまん。あの中学はこの高校から歩いて行ける距離だ」
「…で?」
「あー悪い悪い。つまり、例の男子生徒も同じように加害者と推定できる…が、この空港の顛末においては被害者になってる。一時的に」
「一時的…」
「そう。一時的に。あの監視カメラの映像から出来る分析を素直に取るならば一時的にCA…昔風に言えばスチュワーデス…になり、女子高生になり…次の日は元に戻ってる」
「連中、自分の力で変身出来るのか?」
「いや、自分に能力を向けたり、着替えさせる服装を選べるとは思えない。選べるならこんなに『同じ』物証残しまくったりはしないだろう」
「つまり固定ってことか」
「そう。だから空港内でCAになってたのは、別の『使い手』によるものだと考えれば平仄が合う」
(続く)