小柴弘樹の場合 19
第八節
「こりゃどうにもならん。何の参考にもならねえな」
「だろ?因みに空港から出た人間にあの三人は見つからなかった。ただ、一人は見つかった」
「何だって?」
「これだ」
三々五々あちこちに向かって歩いている人間の中に、確かにそれらしい人間が見える。
「よくこんなの見えるな」
「そういう部署なんでね。問題は一緒に歩いてるこの制服の二人組の女子高生だ」
「両手に華たあ憎らしい奴」
「実はこの制服もこれまでの行方不明事件で現場に残されていた制服の一角だ」
「…マジかよ」
「結論まで言うが、恐らくこの二人はさっきの三人組の男の子の内の二人だ」
「はぁ?」
「さっきは三人ともCAになってたが、この時点では一人は男に戻り、二人が今度は女子高生になってる訳だ」
「…お前…本当に大丈夫か?押収した脱法ハーブでもやってんじゃねえの?」
「まさか。あとあれは危険ドラッグな」
「どうでもいい。で、お前の分析は?」
「この男子…空港を出たのが確認出来なかった…は翌日通学路を学校に向かって歩いているところをカメラに撮られてる」
「そっか…」
「つまり、別人の姿形で自宅に帰ったと推測できる訳だ」
「そういうことか…」
「そしてこの一連の事件においては、行方不明者も、正体不明者も出ていない」
「…」
「実は例の中学校をストーカーしてた女が着ていた制服の学校で、少し前に事情聴取された女子高生がいる」
「何をやらかした?」
「友達がヤクザにオーバードーズ(薬物の過剰摂取)された事件で現場で襲われたのさ」
(続く)