小柴弘樹の場合 16
第七節
「それでどうする?」
「どうもせん」
「その生徒にあたらんのか?」
「はっきり言うが誰も相手になんぞしてくれない。それこそ正気を疑われて病院にブチ込まれるだろう」
「だよな」
「だが、こうやって情報監視はし続けるだろうな」
机に山積みになって新聞をポンポンと叩く。
「こちとら国家権力だからな、いざとなったら銀行口座だろうが覗く。とはいえ、そう気軽に出来るもんじゃない」
「…一応聞くが、ここは科警研だよな?」
「…いかにも」
「ここでの研究結果は全警察に配信される…そうだよな?」
「まあな。プロファイリングの累積データやなんかがそうだ。DNA検査キットもウチが発明してる。偉大なる先輩たちだけど」
「さっきまで解説してくれたことは、その気になれば警察関係者なら掴めるよな?どうしてお前以外に誰も注目してこなかったんだ?」
「警察同士は横の連携が苦手だ。ましてやこんな小さな事件性の無い物件の間接的状況証拠みたいなものをずらっと並べて検証しようなんぞとやってるのは俺くらいだろうさ」
「この事件を配信する予定は?」
「どうかな。今のところはありえないな」
「ふん…」
考えている大迫。
「どうした?帰るんじゃないのか?大丈夫かこんなに油売ってて」
「お前…まだ何か隠してるだろ」
「何の事かな?」
(続く)