小柴弘樹の場合 14
第六節
「で?どうしてる」
「何を?」
「その学校に何かガサ入れしたりする予定はあるのか?」
「…何の罪状で?」
「そりゃ…」
「今は無理だね。憶測以前の妄想段階だ。ただ、制服そのものの入手はこの学校の関係者が一番簡単な位置にいるのは間違いない」
「だな」
「だが奇妙なことに制服の在庫は減ってない」
「…何だと?」
「学校内と、それから卸問屋の倉庫のどちらのストックもこれらの事件の前後で在庫数の変動は無しだった」
「どっかのコスプレメーカーが作ってんじゃねえのか?」
「本来なら現物を見せて制服屋に証言を貰いたいところなんだが…」
「流石の小柴もそこはやってないんだな?」
「こんなことに物証使えるかよ。捜査権だって無いのに」
「ふん…」
考え込んでいる大迫。
「お前のことだ。また何か仮説があるんだろ?」
「あるが…」
「いいから言ってみろ。もう驚かん」
「…。ストーカー女やらギャンググループの場合は、行方不明の前後、誰にも目撃されていない時間が長い。だから「余地」がある。しかし、電車内に立ち尽くしてた謎の女子高生となると…」
「何だよ?」
「仮に彼女が行方不明のサラリーマンと同一人物だったとする」
「馬鹿馬鹿しいがな」
「ああ馬鹿馬鹿しい。馬鹿馬鹿しいが、そう考えてみるとある可能性が浮かんでくる」
「…何だよ?」
「この一連の性転換劇においては、…着ている服までが一瞬にして変化しているのではないか…」
ガタン!と音を立てて立ちあがる大迫。
(続く)