小柴弘樹の場合 12
「…」
「制服のデザインから学校を割り出した」
「おいおい」
「その学校の生徒だと断言できる訳が無いし、破り取られていた。写真しか残っておらず俺が病院を訪問した時には現物も無かったんだが、二~三校まで絞れた」
「やれやれ」
「この学校の通学範囲の電車で奇妙な事件が起きた」
「何だよ?痴漢冤罪か?」
「ちょっと違う。日がな一日突っ立っていた女子高生が保護された。彼女は一応口は利けるみたいだが、あらゆる問いにまともに応えられないほど精神的に疲弊している。未だに正体不明」
「また正体不明か…」
「この制服のデザインが、自称「炉木根」のものと一致した」
「何だと?しかし、女子高生の制服なんぞどれも似たようなもんだろ?」
「確かに似ているが、そこを疎かにする警視庁じゃない。お前だって分かるだろ。そして一週間後にとあるサラリーマンの捜索願いが提出されている」
「一週間後?」
「最初は単なる遅刻と思われて提出が遅れたんだな。よくある話だ。家族は冷え切っていて会話もロクになく、会社でもその性格から蛇蝎の様に嫌われていた」
「ふん。大した人望だ」
「証言を総合すると、この日の朝に家を出たことは確認されており、通勤途中で行方不明になってる」
「…大方蒸発したか、行旅死亡人にでもなってんじゃねえの」
行旅死亡人とは、所謂「身元不明の死体」のことである。多くの行方不明者がこれに該当すると考えられている。
「そう思ってこの日から今までの行旅死亡人の記録を調べた」
(続く)