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小柴弘樹の場合 09
「…それは科警研の見解ってことでいいんだな?」
「全く構わない。というか数字を元にした『事実』であって、「偏見」どころか「意見」ですらない」
「そんな意見を流布させて老人が風評被害にあったらどうする?『老人には犯罪傾向が強い』なんぞと言ってみろ!老人バッシングが起こるぞ!」
「正確には『今の老人は、今の若者よりも犯罪傾向が強い』だ」
「同じことだろうが!」
「その論で言うなら、『若い奴は犯罪傾向が強い』というのは言っても構わんということにはならん気がするが?」
「それは…」
「何の根拠もなく、数字の統計データにも基づかない偏見で『今の若い奴は犯罪傾向が強い』と言い切るのは別に構わないが、数字の統計データに基づいた事実として『今の老人は犯罪傾向が強い』と言うのは許されない?」
「…」
「こういうのをダブルスタンダードという」
「そりゃ…老人は弱い立場なんだからいたわらんといかんだろうが」
「国民資産の六割は六十五歳以上の老人が握ってるんだが?若者は現状の資産すら全部上の世代に握られ、年金も全部持っていかれてる。どこが弱い立場なんだ?」
(続く)