小柴弘樹の場合 08
第四節
「別にそんなことは言ってない。別の制服でも構わんだろ」
「それじゃ何か?今のこの世に『謎の性転換現象』とやらが存在して、それにあっちこっちで巻き込まれた哀れな被害者がポツポツ出現してるってのか?」
「…全部まとめてくれて助かる。そういう仮説も成り立たないことはないって話だ」
「馬鹿馬鹿しい!マンガだ!ありえない!非現実も極まる!ゲーム脳か!?」
「ゲーム脳ってのは単なる俗称だ。論文も提出されたことが無い稚拙な都市伝説の出来損ないだよ?」
「うるせえ!エロや暴力ゲームやってる奴が犯罪犯すんだよ!決まってるだろ」
「最近の若者の事を言ってるんなら誤りだ」
「何だと?」
「若者が車を買わなかったり積極的に何かをしない…恋愛から遠ざかる「草食系」とかな…と言われてる。これは同時に「若者の犯罪離れ」も意味してる」
「おいおい、犯罪犯すのは常に若い奴だろうが」
「最悪の偏見だ。寧ろ若年層は犯罪そのものが少ない。マスコミのセンセーショナルな報道で若者が常に悪役にされてるがね。むしろ壮年から老年に掛けての方がマナーが悪く、問題を起こす傾向が強い」
「何言ってんだ?サツがそんなこと言ってていいのかよ?」
「事実だ。老人の視聴者が多い今のテレビでは『高齢者批判』は常にタブーだから報道などされんだろうがね」
「老人が怒りっぽいのは普通じゃねえか」
「怒りっぽい程度ならいいんだが、年齢比率で考えても団塊の世代の犯罪傾向は明らかだ。もちろん全員がそうとは言わんが。銃犯罪や殺人の比率も多い。正直、今の「草食系」の若者とどっちが活動的か考えれば推測が付きそうなもんだ」
(続く)