小柴弘樹の場合 02
少し真剣な表情になる大迫。
「いいから言ってみろ。もしかしたら大きな事件が背後に隠れてるかもしれんしな」
「仮にそうだったとしても俺ら下っ端には関係ないけどさ。ましてやオレなんかデカどころか研究員だ」
「そう拗ねるな。で?何だ」
「ふん…少し前に歌舞伎町で行方不明事件があった」
「それは今週何件目のだ?」
「…よくあることって言いたいんだな?まあそうだが、供述調書が妙でな」
「よくそんなもん読んだな?」
「こちとら第四課部だ。犯罪被害者の異常心理には鼻が利くんでな」
「それが何か?」
「セーラー服姿の美少女だったらしい。自暴自棄になっているところを発見された」
「…帰っていいか?」
「じゃあ帰るか」
「冗談だ。お前が毎日起こってる事件みたいなので延々俺を足止めする訳が無い。何かいつもと違ってるところがあるんだろ?」
「ちなみにデカさんのここまで聞いた予想は?」
「家出娘か近所の風俗から脱走したか…そんなところだろ」
「ちなみに発見されたのはゲイバーだ」
「そのセーラー服娘ってのは?」
「いや、正真正銘の女の子だ。年齢も十五歳から十七歳程度」
「未成年だが…しかし何で女の子がそんなところにいた?」
「そこが分からん。そして同日闇金の集金人がこのゲイバーに取り立てに行って行方不明になってる」
「何じゃそりゃ?サッパリつながらん」
「この夜は異常でね。同じよるにダンサー…こっちは生まれた時は男な…が行方不明になってる」
「アホくさ。二人で駆け落ちでもしたんだろ?以上終了だ」
「普通はそう考える。ところが…」
小柴は古新聞を取り出した。
「この記事を見て欲しい」
「んー?」
そこには「身元不明の女性が死亡」とある。
「これが何だよ」
「女性の死亡記事だ。記事に使われていた写真は所持品の写真を使ったらしい」
「それで?」
「店に残っていたプロフィール写真がこれだ」
カラー写真を出して来る小柴。
「よく次から次へ出して来るなお前」
「これでも警察官だからな。いいからその写真見てみろ」
すらりとした美人が映っている。その顔には見覚えがあった。
「…?これは」
「この日事故死したダンサーと瓜二つだ」
(続く)