小林みのりの場合 15
教育委員会に勤める父親も彼女のことを知らなかった。
本人が語る炉木の情報は全て正確ではあったが、年齢も性別もかけ離れているため本人認定などされるはずも無かった。
彼女…何度聞いても本名を名乗らないので通称「被疑者A子」とされた…はその後も被害者の部屋に居座り続け、強制的に排除された後も度々侵入事件を起こしたために遂に警察に逮捕された。
起訴して少年院送りにはならなかった。一説には正体が不明であるため、戸籍その他も全く分からず、事務処理が煩雑になるため管轄警察署が実質的に放り出したとされている。
その後、通っていた中学の通学路に、みすぼらしい身なりの被疑者A子がたびたび出没し、声を掛けるもすぐにお腹を押さえて立ち去るという例が急増した。
監察医の話では、年齢は十五歳から十七歳程度、肉体的には健康そのものの女性で、生殖能力にも問題無かったという。
ただ、同年代の女性にしては自らの下着のサイズも知らず、月経に対する処理の知識も皆無という奇妙な点が見られたらしい。これは医学的な知見ではないので報告書には書かれていない。
事件の舞台となった中学では、教師の一人が行方不明となり、奇妙な言動の女がたびたび通学路に出没するという事件によって修羅場を迎えた。
だが、一ヶ月が経過したことで死亡したものと見做し、代替要員の教師が採用されたことで一応は収まった。
しかし、これが新たなる事件の幕開けとなった。
(続く)




