小林みのりの場合 14
第十五節
群尾の目論見通り、炉木根はこの日の放課後から神隠しに遭った様に行方をくらましてしまった…という扱いとなった。
職員室に残されていた私物の類も全てそのまま残されていた。
一人暮らしのアパートにて、身元不明の女子高生が引きこもっているのが発見されたが本人とのかかわりは不明。
女子高生は炉木の名前を女性風にアレンジしたかのような生徒証明書を携帯していたが、当然ながらそうした生徒は在籍しておらず、偽造であるとされた。
また、相当部分が破られていたとはいえ、身に付けていた女子生徒の制服もどこのものなのか不明。
彼女の正体は不明である。
大規模な捜索が開始されたが、一ヶ月経っても見つからなかった。
部屋で発見された女性についての続報は無く、一般への情報開示は無かった。
だが、関係者だけが知りえる情報として、彼女は何度となく校内への侵入を試みて補導されることを繰り返した。奇妙なことに、長い髪をハサミで短く切り落としており、男物を身に付けてだった。
彼女は行方不明の炉木本人を自称していた。
だが、中年男性と思春期の少女では本人であるはずがなく、何度補導されても一笑に付されるのみだった。
行方不明の炉木との関連性から厳しく取り調べられたが、正体は全く不明。
本人のものと思われるパーソナルデータが何一つ出てこない謎の存在であった。
DNA鑑定も行われたが、何故か結果は非公表とされた。
(続く)