小林みのりの場合 12
第十四節
「どんな問題があんのよ?」
「一つには人口比だね。あんまり男を女にしすぎると男がいなくなる」
「何の心配してんのよ。ならねーって」
「でも、逆ならともかく女性…メスが増える分には問題は少ないけどね」
「どゆこと?」
「男九十九人と女一人の村があったとするよね?」
「地獄みたいな村だね」
「一方で男一人と女九十九人の村があったとするよね?」
「天国みたいな村だね。…男にとっては」
「案外そうでもないと思うけど、それはともかくどちらの村がコミュニティとして存続できると思う?」
「そりゃ女が多い方でしょ」
「つまりそういう理屈」
「あーなるほど。女が減るのは問題でも、女が増える分にはそれほど問題じゃないってことだ」
「そういうこと」
「で?もう一つの問題は?」
「これは一応自分の中で答えは出てるんだけど、『刑罰』として女にするってことになると、まるで女であることが苦痛である!という前提があるみたいじゃん。ちょっと差別的かなと」
「はー、たーくんって男なのにそういう風に考えるんだ」
「フェミニストじゃないけど博愛主義者なんでね」
「何よそれ」
「小粋なジョークだよ。でもまあ、一応自分の中で答えは出てる。ここで大事なのは、長年慣れ親しんできた生まれつきの性別じゃない方に変えられるってことなんだってね」
「まーね」
「瑛子さんだったら、懲役刑と男にされるのとどっち選ぶ?」
「そりゃ牢屋に行く方だよ」
「二十年とかでも?」
「…牢屋に行くかな」
(続く)