飛田俊雄の場合 17
第二十節
自動ドアが開いた。
颯爽と出て来たのは…CA…女性の客室乗務員さんだった。
思わずビシッ!と姿勢を正してしまう三人。
「…?」
怪訝な表情を浮かべながらも笑顔で会釈をして間を通り過ぎていく。
「…本物…だよな」
「そりゃそうでしょ」
不謹慎な想像をする橋場と斎賀。
「しかし、ついさっきまでお前もあんな感じだったんだぜ」
「言わなくていいですよ。橋場さんだって同じじゃないですか」
そのタイミングで光が言った。
「…綺麗な人だなあ…」
呆れている橋場と斎賀。
「じゃあ、早速僕らの新生メタモルファイトをしましょうや」
「ここでか?」
「ええ。思い立ったら吉日です。ペナルティが無いと燃えないでしょ?敗者はそのまま自宅に帰って玄関に触ったら解除ってのはどうです?」
「…お前、本気で変身にはまってないよな?」
「ボクは水木さんとは違いますからね。どうします?受けますか?」
「アキラ、お前武闘派ならこのインテリメガネをぶっ倒しちまえよ」
「いや…いい」
「オレも遠慮してえな」
「どうしてです?」
「無駄に勝敗増やしたくねえんだよ。変身めぐる攻防そのものは面白そうだとは思うがな」
「じゃあ、解除条件の設定しあいはするけど、勝敗数には入れないってことでいいんじゃないですか?」
「…やるか」
「じゃあ、巴戦で」
第二十一節
「いやあ、両手に華ってのはいいもんですねえ」
「…女立たせて何言ってやがる」
「へ?じゃあ座ります?そのミニスカートで。慣れてないでしょ電車女子高生」
「そんな言葉があってたまるか」
「…」
光は恥ずかしさのあまりもじもじしている。
橋場も斎賀の能力を食らって赤いネクタイのブレザー姿だ。勿論、肉体も女子高生のそれに性転換させられている。
どうやら、相手の心理を揺さぶったり不意を衝いてフェイントを掛けたりといった戦いではこの二人よりも圧倒的に斎賀に軍配が上がるようだ。
「どうします?モノレール揺れるんで解除してあげてもいいですけど?」
「…勝負の結果だ」
「…」
強がっている表情の橋場女子高生。今日二度目の性転換&女装だ。さっきは妙齢の大人の女性にさせられたが、やっぱり女子高生ってのはガキだな…とロクに経験も無いクセに思うのだった。
いずれにせよ、彼らの戦いは新しいステージに突入したことだけは間違いなさそうだ。
また、この日はこれまで結果的に負け知らずだった橋場の初の敗戦が刻まれた日でもある。
*橋場英男 メタモル・ファイト戦績 五勝一敗一引き分け一無効試合 性転換回数五回
*斎賀健二 メタモル・ファイト戦績 七勝二敗二引き分け 性転換回数五回
*武林 光 メタモル・ファイト戦績 一勝三敗一引き分け一無効試合 性転換回数五回
*飛田俊夫 メタモル・ファイト戦績 三五七勝二〇八敗五〇引き分け
一無効試合 性転換回数二〇八回
(続く)