飛田俊雄の場合 16
第十八節
「すいません…あなた方どの便に搭乗予定ですか?もう時間なんですけど」
斎賀の表情がぐえっ!となった。
グランドホステスさんだ。パンツルックの。
「えっとその…次の次の便です」
適当なことを言う斎賀。
「次ってどこ行きのです?」
明らかに不信そうな表情を浮かべる。
思い切りネームプレートを視認されていた。
「…見覚え無い名前ですけど…派遣さんでしたっけ?」
思わず顔を見合わせる新米CA三人組。
「ちょっと待っててください」
どこかに内線で連絡を入れているグランドホステス。
次の瞬間には一斉にカートを引いて走り出す!
「ちょ、ちょっと!」
その声を背中に聞きながら一目散に走った。
第十九節
はあはあと息を切らしている。
そこにいたのは普段着で疲れ果てているどこにでもいる男子高校生三人組だった。
「…ヒデエ目に遭った…二度と空港になんかこねえよ」
橋場が悪態をついた。
「でも、貴重な体験が出来ました」
「そりゃどっちの意味でだ?ファイトか?コスプレか?」
「…両方です」
「正直な奴」
遅れて飛び出してくるグランドホステスさん。
「あの!こっちにCAの制服着た女がいませんでしたか?」
一瞬顔を見合わせるが、すぐに返答する。
「いえ…知りませんけど」
「そう…すいません」
「あの!」
斎賀が追い打ちを掛ける。
「そういう人って結構いるんですか?」
思わぬ質問に怪訝な顔をするグランドホステスさん。
「…えーと?」
「いや、偽のCAさんとか」
「…」
話しにくそうなグランドホステス。
「たまにいるんですよ。良く分かりませんけど。じゃあこれで!」
たちまち引き返していく。
「こりゃあ…飛田さん、割としょっちゅうファイトしてますね」
「そういうことかよ」
「でもって負け知らずって訳か…やりやがる」
すっかり元に戻っている光。
「お前は人格まで女になってたかと思ったぞ」
「う、うるせえ!」
赤くなる光。
「しっかし、とんでもねえオヤジだったぜ」
「同感ですね。あのレベルと本気で闘わざるを得ない状況になったらと思うと相当厄介ですよこれは」
「どうすんだよ?」
「…これは練習するしかありません」
「お互いにか?」
「ええ」
「何だやるのか?やるのか?」
光が身を乗り出す。
「お前は普通のケンカはいいかもしれんが、メタモル・ファイトはもっと研究した方がいいぞ」
「そうですよ。あんなに負け続けて、元に戻れなくなっても知りませんよ」
その時だった。
(続く)