飛田俊雄の場合 13
第十四節
カラカラとカートを転がしてさっそうと歩いているCA三人娘。
その内実は、橋場英男、斎賀健二、武林光なのだった。
「今回は完敗でしたね」
「…にしても悪趣味すぎんだろ」
「いえ。サービスなんですって」
「どこがだよ」
「でも、記念ですし」
笑顔の光。どの辺までコントロールされてるのか。
少し前。
「解除条件とは何だ?」
「客室乗務員は接客業だよ?スマイルスマイル」
「いいから」
軽くため息をつく飛田。
「この空港の入り口に柱が立ってる。見ればすぐにわかる。それにタッチすることだ」
「…それだけ?」
「そうだが」
振り返るCA橋場。
「お前らもそうか?」
頷くCA二人娘。
「じゃあ私はこれで。楽しかったよ」
踵を返す飛田。
「行ってらっしゃいませ」
身体が勝手に反応してお辞儀をするスチュワーデス三人だった。
空港内の廊下を闊歩するCA三人娘。
「柱にタッチってどういうことだ?」
「だからサービスなんですって」
ニコニコ笑顔の斎賀。少しペースを上げて橋場の隣を歩く。
こうして客観的に見ると、「スチュワーデスさんにされてるんだ…」と自覚せざるをえない。
大股気味で颯爽と歩く都度、黒ストッキングに包まれた脚がスカートの裏地にこすれる感触を意識せざるを得ないのだが。
「何がサービスなんだってだから」
「橋場さん、硬い表情じゃ衣装が泣きますよ」
「俺はコスプレマニアじゃねーし制服フェチでもねーよ!こんな恰好早くオサラバしてえんだ」
「へー。中々殊勝ですね」
「何言ってんだお前は。大体化粧だって気持ち悪いし…何か顔が厚塗りに覆われてるみたいで気持ち悪いんだよ!」
「そうよねー」
一斉に遅れてついてくるCA光を振り返るCA二人。
「大丈夫なのかあいつ?」
「今回は強敵でしたから」
「ともかく!サービスって何だよ」
「あくまで推測ですけどね」
(続く)