飛田俊雄の場合 11
第十二節
「解答としては八十点ってところだな」
「そうか?」
「意識配分の意図的なコントロールによる部位集中及び分散対策を攻撃にも応用出来るってところまでは満点だ。しかし、実はそれだけじゃない」
「何だよ」
「あー君たちもこっちに来たまえ」
離れたところにいる新米CA二人を手招きする機長。
「何だよ?まだあんのか?」
「まあね。この能力は発動することが確定したならば発動の仕方もコントロール出来るのは知ってるな」
「多少はな」
「『遅発』はその代表だ。さっき君のおっぱいが接触から遅れて膨らんだのもそれだ」
「質問いいですか?」
斎賀CAだった。
「どうぞ」
「肉体が先に性転換終わってないと服は着せられないと思ってたんですけど違うんですか?」
「お前…分かったのかよ」
これは「離れたところから見てて、服の下にブラジャーまでさせられてることまで分かったのか?」という意味である。
「橋場さんの挙動見てれば分かりますよ」
「結論から言うと可能だ。ただ、性転換が完了した部分にのみだ。だから胸の部分が男の状態で、ブラジャーだけさせるのは不可能」
「なるほど!」
「しかしこれはかなりレベルが違う相手にしかモロには決まらん。余技みたいなものだ」
「機長は私たちをからかったんですね…」
切なそうに言う光CA。人格までコントロールされてそうだ。
「一応言っておくが、この手の操作はかなりの上級テクニックだ。部分部分にしても、実戦練習をするしかない。だから全身がターゲットになんかならん。大抵は一部位ずつ練習するもんだ」
「つまり、髪とか胸とかですか?」
「ああ。だから慣れてる相手同士だと、こいつの持ってる技能は髪と胸だから、どちらかにヤマを張って意識集中して防いだり、それをフェイントを掛けたりする」
「凄い!面白い!」
「言ったろ?メタモルファイトは知的スポーツだ。読み合い、騙し合いだよ」
「相手を女装させることは?」
「…肉体が男のままってことか?」
「そうだ」
「不可能だ。よほど訓練を積めば可能なのかも知れないが、まあ不可能と考えていいだろう」
「相手の下半身だけ女にしてスカート履かせたりは?」
「理屈の上では可能だが、そんな広い部位を偏らせるのはかなり難しい。実質的に不可能だろう」
(続き)