安藤士郎の場合 38
第二十一節
二階に行ってみると、囚われの姫状態になっている武林のそばに、チャイナドレス姿で腰を抜かしている女がいる
「あ…あ…」
どうもⅤだったらしく、自らの変わり果てた姿と全身を襲う違和感にへたりこんでいる。
チャイナドレスが真っ黒に金と紫の刺繍なのは何とも趣味が悪い。
「この人が今回の敵ですよ」
「何故チャイナなんだよ」
腕組みで見下ろしている“お嬢さま”橋場。
「特殊系能力同士のぶつかり合いですよ」
と、ウーが口を開いた。
「あー…年甲斐もなく可愛い制服着られて満足なんだけど…良かったら理屈を説明してくれる?」
「簡単ですよ。ウーさんの能力は相手と何が何でも相打ちになっちゃうでしょ?」
「?」
「離れた場所から一方的に攻撃出来るってことは、離れた場所から能力を行使出来るってこと。普通のメタモルファイターだったらお手上げだけど、ウーさんを狙ったもんだから…」
「そっか、遠隔から相打ちになっちまったのか」
「そういうことです。加えてこの能力の特性上Vだった相手は初めての変身に動揺してどうにもならなくなってる…と」
「ふ~ん…」
勝ち誇ってつかつかとあられもない恰好でへたり込んでスリットから脚の殆どがモロ出しになっているチャイナ女に近づく橋場。
「ま、そういうことだ。こっちの勝ちでいいか?」
「な、何なんだよお前ら!」
真っ赤な唇を歪めて悪態をつくチャイナドレス女。
「性転換も女装も初めてですか?良くお似合いです」
精神的に余裕が出て来たのか斎賀も声を掛ける。
「…とりあえずこっちの勝ちでいいですか?それとも三対一で続けます?」
(続く)