第一回 入学
中学生の頃は良い思い出なんて一つもなかった。
別にイジメられていたわけでは無い。
分かり易く言えば、友達がいて、彼女がいない。それが僕の中学生活の全てだった。
あとは各人あまり嬉しくない出来事を加算して行ってくれ。
そして、今僕の目の前でよく分からない闘争が起きている。
この日は高校の始業式で、クラス内での自己紹介などが終わったところだった。
こちらでも自己紹介をしておこう。
僕は夜音白。高校一年の15歳身長は171cm ルックスは良い…はずだ。入学式と始業式でもう3人に告白されている。高校デビューのおかげだろう。一応言っておくが、みんな断った。キツイ言い方で断ったわけでは無い。それだけは言っておきたい。自分の株が下がるのも嫌だからね。
さて、話を戻そう。おそらくこの2人は高校2年の雨崎夕歌と祈祷時雨だろう。二人ともこの学校では有名人だ。
そう言えば、学校の紹介がまだだったようだ。これはすまない。では、この世にも珍し高校の説明をしよう。
この学校は〈私立日本文化広報高校メディア養成府〉という名前だ。名前からもわかるようにアニメや漫画、ゲームの文化を引き継ぐ未来の芽を蕾にまで育てる学校だ。この学校には、将来、声優や漫画家、アニメーターやプログラマー、イベント企画者などを目指す、世に言う『オタク』共が集まる場所だ。
また話が逸れてしまった。雨崎夕歌は成績優秀の才色兼備。生徒会を牛耳っている、らしい。だが、ゲーマーだ。祈祷時雨は両親が芸能事務所やゲーム会社、イベント会社も経営している。そのため、家には様々な衣装があり、本人も女装趣味の男の娘だ。
とまあ、紹介することによって問題のある学校と思うかもしれないが、これで普通だ。というか、こんなんばっかりだ。ちなみに僕は劇団に所属し、音楽も習っている。将来は声優志望だ。
「そ、それで何の話でしたっけ?」
少し躊躇いつつ言ってみた。
「ああ、ごめんね。こんなのと話してしまっていたよ。こんなの、と。」
先に反応を見せたのは雨崎先輩だった。
すげぇ棘のある言い方だった。祈祷先輩に対して。
「よく言ってくれるね。ただふらふらと目標も無く遊んでるだけのくせに。」
祈祷先輩もそれなりに言い返した。
「目標ならあるさ。」
「んだよ。そりゃ。」
「 私はね、こいつの嫁になって、マネージャーになる。」
なんとも荒唐無稽なことを言って、雨崎先輩は僕の腕に引っ付いてきた。がっつり胸を当てて。
「ちょっ、せ、先輩!そんなに引っ付かないで下さい。そ、その胸が、、、!」
「むふー♪なになに、照ーれちゃって。そんなに緊張しなくてもいいんだよ。」
、、、、、、、
それから一悶着あり、最終的には2人の先輩に連行された。
「で、ここは……どこ…です、か?」
僕は現在、縄で捕縛された状態で無駄にデカイ学校の敷地内の校舎から離れた新居並みに綺麗な建物に連れてこられていた。