表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

まちがいメール

夏ホラー2007に書いたホラーです。

『あなたはやく、海に来てね。娘も待っているから』

こんなメールが、オレの携帯に来た。


「あれぇ、係長は、結婚してたのですか」


「イヤイヤ、オレは独身だよ。誰かが間違って、オレのところにメールをしたんだろう。それはそうと、聖子せいこちゃん。今日飲みにいかない」


「いやだぁ、係長たら」


「ハハハ、冗談だよ。それはそうと、聖子ちゃん、この書類をお願いね」


「わかりました」聖子はオレのところから離れた。

オレは、今の会社では独身といっているが、実は五年前、オレは結婚していて、メールのあるとおり、娘もいた。


五年前、妻と娘は、事故で亡くなった。イヤ、オレが二人を殺したのだ。


オレは、ギャンブルで借金をしてクビがまわらなくなり、保険金目当てで、妻と娘を殺すことにした。


娘が、夏休みだから海に連れてって、といってきたので、オレは、二人を殺すチャンスだと思った。


オレは車を持っているが、メーカー側から、ブレーキの異常が見つかったため、修理するので持って来て下さい、といってきた。

オレは、絶対に警察に捕まらない、あるアイデアがうかんだ。


海にいく前に、オレは妻と娘にジュースを飲ませた。睡眠薬のはいったジュースを……。


オレは計画通り、車を海に落とした。妻と娘は、溺れ死んだ。だが、二人はどこをさがしても見つからなかった。

保険会社は、メーカー側の不都合が原因だと信じ、オレに保険金を支払った。

その金で借金を支払いおわると、オレは前にいた会社をやめて町を出て、今の会社に再就職した。

五年前のことを、このまちがいメールで思い出してしまった。



『夏休みになったから、娘といっしょに海に遊びにいこう』


またメールがきた。これで一週間連続だった。


「係長、またまちがいメールですか。アドレスを変えたらどうです」


「実は、昨日変えたんだ。でも、また来たんだ。聖子ちゃん、これ、どうおもうかなあ……」


「さあ……、どうなんでしょう……。誰かのイタズラじゃないですか」


「このアドレス、まだ、誰にも教えてないんだけど……。聖子ちゃん、今日はどう」オレは困ったそうに、聖子にいった。


「私、部長に用があるの思い出しました。係長、また今度……」


聖子は、オレに誘われるのがイヤなのか、それともこのまちがいメールが気持ち悪いのか、オレを避けるように離れていった。


オレは、携帯の機種を変えたが、またメールがきた。さすがに、オレは気持ち悪くなった。

このメールを出した何者かが、オレのことを知っているのか。それとも、死んだ妻が出したのか……。イヤイヤ、いくらなんでもそれはないだろう。

でも、これが何日も続いたら、オレの頭が変になってしまう。オレは、お盆休みに妻と娘が死んだ海にいこうかと思った。もし海にいけば、このメールが来ないかもしれないと思ったからだ。



盆休みになって、オレは海にいくことにした。

盆休みだから、渋滞に巻き込まれ、海にいくまですごく時間がかかった。海に着いたのが夜だった。

オレは旅館を探していて、やっと見つけた旅館は、幸運にもキャンセルが出たので、部屋が空いていた。



『もうすぐ会えるね。娘も楽しみにしてるわ』


朝になって、またメールが来た。

これは本当に、妻が、オレにメールを打っているのではないのだろうか。

そんな思いが、オレの頭によぎった。


オレは、すぐに旅館をでると、海にむかった。

もうすぐ海に着くので、スピードを落とすため、ブレーキを踏んだ。


オレは焦った。ブレーキがまったくきかないのだ。このままでは、海に落ちてしまう。

携帯が鳴った。こんなときにメールがくるんだ。

スピードが落ちないまま、車が海に落ちた。

オレは携帯を見た。メールには、こう打ってあった。


『今から、娘といっしょにいくから、ちゃんと車の中で待ってて』


なにか、こっちにむかっているものがあった。

最初はなにかわからなかったが、それはよく見ると、それは、女の死体だった。

その死体が、こちらへ近付いてきた。オレは、死体の正体がわかった。



妻と娘だった……。



妻と娘の死体が、スピードをあげて、オレの車のフロントガラスに突っ込んできた。

オレは逃げなかった。

逃げられなかった。

妻と娘が、オレの体に引っ付いていたからだった。


「やっと、会えたね。娘も喜んでいるから……」


割れたフロントガラスから海水がはいってきた。



警察が、海に落ちた車を引き揚げた。

そこには、三人がなかよくならんで座っていた。


締め切り二日前に、“まちがいメール”が来て、これはと思い、勢いで書きました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 小説を拝見さしていただきました。 自業自得ですよ、お父さん。 締め切り二日前に間違いメールが来て良く書けたものだ、凄いよ。
[一言] 夏ホラー2009のサイトから来ました どこかで読んだぞ?って思ったら、2007の時の作品だったんですね どうりで読んだわけだ、と(笑 前回は感想を書いていなかったので今回こそは。   もっと…
[一言] こんにちは。夏ホラーのサイトから伺いました。 確かにホラーな感じでしたね……映像で現れたら怖そうです。 もう少し話を長くして、家族とのやり取りシーンを入れられたり、オチをなるべく隠されるよう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ