私は本当に私なのか?
初の三人称視点物です
11月下旬のある晴れた日の事だった。眼鏡をかけた大人しそうな人と、茶髪にし、耳にはピアスをつけた人物2人の男性が喫茶店の喫煙席に向かい合いに座って、語り合っていた
眼鏡をかけた男の名前は、木村悠一、21歳、会社員
もう1人の名前は、松永亮二、同じく21歳、大学生
高校時代からの友人同士だった。
悠一は、人見知りがあり、親しい相手以外には話さないが、馴れると天然でいい加減な性格がでてくる
亮二とは1年生の時に同じクラスだった事や同じ作品のゲーム好きと言う事を知った事から友人となった。
亮二は、対照的に明るく誰とでも気さくに打ち解けれる。高校時代は、クラスの中心になってよく騒いでいた
勉強よりも、体を動かすのが好きだった
卒業を期に会う機会がなかったが、たまたま本屋で出会い、互いの近況をついさっきまで報告しあっていた
「しかし、あんなとこで悠一と出くわすなんてなー」
「そうだな、俺もまさか、亮二と出会うなんて思わなかったな」
「ってかさ、3年ぶりか? お前、成人式にも行かなかったんだってな?」
思い出したように云った亮二の言葉を聞き、飲みかけのコーヒーを一口啜ってから、口を開いた
「ああ、あの時は先輩が風邪をひいちまってな。仕事を抜けるわけには行かなくなったんだ」
「へえー、真面目だな」
「違う違う、正直なとこ、行くのがめんどくさかったんだ。んで、狙ったかのように先輩が電話してきて。行ってもなんか話聞くだけだろ? それくらいなら、仕事してた方がマシじゃね?」
その悠一の告白を聞き、飲もうとして口に含んだコーラを噴いた。そのまま、むせる亮二を唖然とした表情で見ている
「おま、相変わらずだな。笑っちまうとこだったじゃんか」
「や、噴き出してなかったか?」
「いいから、いいから。変なとこ気にすんなって」
その後も、5分くらい他愛ない話をしている最中だった
コーヒーのおかわりを注文を頼んでから、両手を組み、悠一は真剣な表情で「ひとつ、いいか?」と言った
「おう、いいぜ。悩みでも何でも言ってみ」
「そっか、あんがとな」
何か考えるように握り拳を開いたりしながら、黙りこむ悠一
亮二には、付き合いから急かさずに口を開くのを近くを通りかかった店員にコーヒーを頼んでから待った
そして、ようやく考えが纏まったのか、ゆっくりと口を開いた
「くだらない事なんだがな、笑い飛ばしてくれていい
最近になって、ここ1ヶ月もそればっかりが頭をよぎって仕方ないんだ
なあ、亮二。今こうして、俺といるときのお前は、素のお前か?」
「……は?」
「ああ、悪い。気を悪くしないでくれ。俺は人見知りがあるもんでな。他人にはやたらと無愛想だし無言で通しちまう
だけど、友人や家族の前じゃ、よく喋る
慣れ、もあるだろうけどさ、なんか、違うんだ」
まくし立てるように話す悠一の言葉を聞き、考える亮二。しかし、何も浮かばずに先を続けるように促した
「他人でも、仕事先の相手だと愛想笑いして口数は少ないなりに話すんだ。苦手な先輩だと終始、相づちを打つだけとかな
すれ違う名前も知らない人には無関心とか
で、家に帰ってな。そん時の事を思い出しちまったんだ。『俺ってこんなだったっけ?』って思った……考えすぎなんだろうけどな、部屋にひとりでいる時は、無言でマンガ読んだり、ゲームやってんだ」
「……なんか、おかしな事あるか? 俺にはいたって普通に聞こえんだけど」
その亮二の言葉に、また考え出した。内心では、面倒な話になったなと思ったが、最後に笑い飛ばしてやればいいや、と決める
「俺は、こう考えた。『俺の中には、いろんな自分がいて、ソイツが出番の時はソイツが出てくる』んじゃないかってな」
「んー、アレか? 二重人格みたいなやつ?」
その言葉に、首を左右に振った。その時に注文したコーヒーが2人の前に置かれる。それを亮二はゆっくりと手に取り飲んだ、苦味で顔をしかめる
「違う、そっちはよくわからんが、トラウマとかからなるんだろ?……俺が言いたいのは、うーん、そう、演じてるんじゃないかってな」
「演じる?」
「そうだ、俺たちはみんな。多くの自分がいる
『好きな人といるときの自分』、『嫌いな奴といるときの自分』、『ひとりでいるときの自分』
どれもがまるで違う『役』なんだ、『必要な時や、場面に合わせて必要な自分の役』を演じてる」
「そんで? でもさ、それだって自分の性格じゃん」
まあな、と答えて悠一もコーヒーを飲む。その様子を見て亮二は思い出してみる
家族には、素っ気ない対応をするが、サークル内のメンバーや友人には親身になったり、馬鹿な事する自分の態度を―――
頭を振り、よぎった考えを振り払う
「だいたいよ、それだって確認しようがなくね? だったら、気にしないのがイイじゃん。自分の思う自分でいよーぜ」
「……まあな、でも、その自分も、と考えると不安なんだ
いや、実は今もこうしている自分は、違う自分なんじゃないかって」
悠一は俯き、ポツリと呟いた
「じゃあ、今ここにいる俺は本当に素の俺なのかな?
いや、そもそも、素の自分ってどの自分だ?」
「………馬鹿なこと、言うなって。仕事し過ぎて疲れたんだろ? 有休でもとってゆっくり休みゃくだらねえ事で悩んじまったなって思えるさ」
席を立ち上がり、肩を思いきり叩くと悠一は驚いた表情をしてから、わりいと言ってから立ち上がる
会計を済まして、店から出た
「んじゃ、また。今日は面白い話を聞かせてくれてありがとさん」
「一応、悩みなんだがな……サンキュ、有休取らしてもらって休めば忘れれるかもな」
「おっ、そうそう。やなことはさっさと忘れちまおうぜ? んじゃ、またな」
悠一に手を振り別れて帰宅途中に立ち止まる亮二
先程までの悠一の話を思い出し、自分なりに考える
必要な時に必要な場面に表れる自分という役
それは、どこかで聞いた気がしたのだ
なら、いま、こうしている自分も、また?
またよぎった考えを振り払う、考えてもキリがない。だが、それらのを含めて『自分』でいいではないか、と1人、結論づける
いまの自分が本当に自分なのかは、誰にもわからないのだから……
いかがだったでしょうか?拙い点が多くあると思います
ご感想や、誤字、脱字などがありましたらお願いいたします
それよりも、三人称は難しいです
誤字、修成しました
彼時代→高校時代
なんですか、彼時代って(泣)