表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
にせ∞かみ  作者: 和久井 透夏
終の姫巫女編
65/71

#62 ゴスロリ×結界×ぬいぐるみ

「コレは多分、町に足を踏み入れた姫巫女やその関係者を別次元に作った結界に引きずり込んで外部から遮断しているのではないでしょうか」

佐倉が難しい顔をして唸った。


輝美さんの気配が途切れた後、俺と咲耶はすぐに佐倉と合流し清實さんのいる籠目教本部へと向かった。

その後、邦治さんも交えて現在の状況の解明と今後の方針を話し合うことになった。


咲耶から輝美さん達がテレビに映っていた姫巫女を尋ねに行って消息不明になったことを説明されて、佐倉が考えた仮説が先程の物だ。


「それと、もし清實さん達の言う通りテレビに出演していた姫巫女が自分の力の扱い方もわからない自覚のない人間だった場合、この結界は番組が放送されてから極めて短時間の内に作り上げられたことになります」

佐倉が苦い顔をして告げれば、邦治さんも顔をしかめたが、咲耶は不思議そうな顔をした。

「それって、つまり相手が物凄く強そうとかそういうこと?」

咲耶がそう尋ねれば、まあ平たく言えばそうなのですが。と佐倉は苦笑いをした。


「普通そういう別次元に大規模な結界を張るにはそれなりの準備が必要なんですよ。

直系の姫巫女である咲耶さんは一瞬で出来てしまうので実感はないでしょうが。

・・・・つまり、こんな短時間でそんな芸当が出来るということはコレは別系統の姫巫女の可能性が極めて高いということです」

それがどうして、と言いかけてようやく咲耶はハッとした顔になった。


そう、相手が別系統の姫巫女の場合、既に輝美さん達は殺されていて魂を取り込まれ、こちらの情報が相手に伝わっている可能性が高い。

その場合、咲耶の住所はもちろん今俺たちがいる籠目教本部の場所も特定されているだろう。

咲耶にそう説明すれば、やっと事の重大さに気付いたらしく一気に咲耶の顔から血の気が引いた。


「一応、ここには通常の結界に加え鬼灯の咲耶ちゃんに取り込まれていない者が施した結界も重ねてあるから、多分ここで話していることは向こうからはわからないだろう」

邦治さんが咲耶を落ち着かせるように言えば、咲耶は少し安心したようだったが顔色は悪いままだった。


「もし、相手の姫巫女がお母さん達の魂に何らかの改ざんを加えたとして、その後その姫巫女の魂ごと私が取り込んでも変質したお母さん達の魂ってもう戻らないのかしら・・・・・」

消え入りそうな声で咲耶が呟いた。


「・・・それは咲耶ちゃんが一番よく知っているんじゃないかな」

対して邦治さんは静かに答えた。


咲耶が取り込んだ魂の情報を改ざんする場合、完全にその魂が別の物に変質してしまう。

つまりもう元には戻せないのだ。咲耶が憶えている範囲で元の状態に近づけることは出来るがそれで完全に元と同じ物に戻るわけではない。

どんな形であれ改ざんが加えられた時点でその魂は元の魂とは全くの別物になってしまうからだ。

そしてそれは他の姫巫女の手で行われた場合も恐らくは同じなのだ。


「お母さん達が行った町に今すぐ向かいましょう、このままじゃ一体何されるのか解ったものじゃないわ!」

咲耶は勢いよく立ち上がって宣言したが、それに続く者はいなかった。


「落ち着け咲耶、今このまま考えなしにつっこんで行っても輝美さん達の二の舞になるどころか、お前が取り込まれたらその時点で終わる」

立ち上がった咲耶の腕を引いて再び座るように促しながら言えば、咲耶は何か言いたそうではあったがそのまま大人しくその場に腰を下ろした。


「でも急がないと!それこそ修復できないレベルでお母さん達の魂が変質させられたりしたら・・・・」


それでもまだ納得がいかない様子の咲耶に佐倉が横からピシャリと言い放った。


「このままつっこんで咲耶さんが取り込まれたら全員その姫巫女の支配下に置かれるうえ、その姫巫女に魂が変質させられた所で修復される可能性もなくなるんですが」


「それとも咲耶さんはそれを望むんですか」


佐倉が咲耶を見つめれば、咲耶は一瞬たじろいだもののすぐに首を横に振った後、真っ直ぐ佐倉を見つめ返した。


「私に策があります」


にやりと佐倉が笑った。




「うーん、やっぱり結界は町全体を覆ってたのね。普通の人にはわからないでしょうけど、半球型の結界に覆われた空間に入ると外部からの干渉を一切寄せ付けないみたいね」

龍の姿になった俺の背に、咲耶の姿をした清實さんが腰掛けながら半球型の結界の周りを確認する。


現在俺達は輝美さん達が消えた町の上空を飛行している。

今回の清實さんの役割は囮だ。

咲耶が新しく作った自分の身体に清實さんの魂を入れ、現在の清實さんの見た目は完全に咲耶その物になっている。


「こうしていると思い出すわね。小さい頃、黒の背に乗って街中を飛び回った事。

結局見鬼の人には丸見えだった訳で、大吉さんにそれを指摘されて怒られてからはこうやって背に乗ることもほとんどなくなってしまったけれど」


懐かしそうに清實さんが言った。

「街中は田舎と違って人が集まっている分、見鬼の人間も多いからな」

敬語を使えば怪しまれるからと今だけは清實さんに敬語を禁止されているのだが、そのせいもあってまるで本当に当事の清實さんが小さかった頃に戻った様だ。


結局俺は、清實さんが十五になってからは結婚して子供を生むようにしょっちゅう催促していたが、最後まで聞き入れてもらえず、清實さんが三十五の時に輝美さんが生まれてからは基本的にそっちに付いている様になり、それ以降は必要な時に清實さんに呼び出された時にしか会う事は無かった。


「今思えばなんだが、二十代の時入信する訳でもないのにしょっちゅう尋ねて来てた日向ひゅうがって男がいたよな」

俺がそう話せば清實さんは一瞬肩を揺らした。

「内容はわからんがしょっちゅう手紙のやり取りしてたり、結界張って俺も含めて人払いして部屋に籠ってたこともあったよな。

・・・・・あの術、柿芝の術にそっくりだなぁとも思うんだが」


「・・・・・・・」

清實さんはばつが悪そうに明後日の方角を向いている。

「その日向の下の名前もそういえば俺は聞いたこと無かったなと思ったんだ。そういえば婿養子になったのなら苗字も変わるな」


俺はからかうようにつぶやく。

「・・・・・日向邦治か」


「・・・・・・いつから気付いていたのかしら」

「いや、実は竹の代の時にも明火家とちょっと関わりを持ったことがあったんだ。

柿芝の術は元々は鬼灯の元締めだった明火家の血統の人間にしか使えないという話を佐倉に聞いてな。

実際竹が殺された時のことも鬼灯が絡んでるんじゃないかと思って、佐倉と柿芝に後日それとなく聞いてみたんだよ」


わかったことは柿芝さんの生家である日向家は明火家の分家にあたること、本家である明火家が没落した原因は代々一代置きに受け継いでいた秘術を放棄し、更にその力を封印しようとしたからということだ。

放棄した理由は秘術を扱えるようになるための修行があまりに過酷で、秘術を身につけ生き残る者も一握りだったから。


血塗られた秘術を捨て、ごく普通の人間として生きられる道を模索していたのだろう。

だからこそ昔俺が明火家に赴いた際、誰も俺達に気付かなかったのだ。

しかしどういう訳かその後、分家の日向家にその秘術を使える者が現れた。

同時に当事十人兄弟だった日向家で無事に成人したのは邦治さん一人だけだった。

加えてちょうどその頃、日向家の親戚の人間もかなりの人数が行方不明になっている。


失われそうになった明火家の秘術を復活させようとしたらしい。

そしてその話をしてくれた柿芝も元は明火家の分家の人間であり、没落した明火家当主の起こした、似たような事件に幼少期に巻き込まれている。

更に鬼灯では明火家の親戚かどうかに関わらず、分家で比較的精神干渉に抵抗力の低い一般家庭の若い娘や幼い子供が相次いで失踪した。


やっとその事に鬼灯の幹部が気付いたのは、当事の明火家当主が鬼灯内で力のある家の本家の跡取りを誘拐しようとした時らしい。

現在鬼灯で若い世代の人間が少ないというのもそれが起因しているのだろう。

そして佐倉はその手の事件は代々秘術を扱う家系においては別段珍しいことではないとも言っていた。


「一つだけ聞いておきたいんだ。

柿芝邦治という人間は、本当に信頼にたる人物なのか」

話だけ聞けば邦治さん自身も被害者でありることは明白だが、だからといって今度は邦治さんが加害者にならないとも限らない。


「ええ、あの人はね、解りにくいし誤解もされやすいけれど、皆が安心して幸せに暮らせる様にってそればっかり考えている人なのよ。

実際理想どおりに行かないことも多いけど、腐らずにそれでも前を向いて少しでもその理想に近づこうとする足を止めない強さを持っているわ」

屈託のない笑顔で清實さんが言った。


「だったらあの時結婚しても良かったんじゃないか。

邦治さんもあと五十年早くこの話を受けてくれたらって言ってたしそういう話もあったんだろう」

俺が話せば清實さんはこれ見よがしに盛大にため息をついた。


「当事、あの人の親達はあの人を利用して鬼灯内でのし上がることばかり考えていたし、そのくせあの人は散々な目に合わされてきた両親に対して義理立てしようとするし、やっとまとまってきたばかりの籠目教で私に子供が出来て更にその子供が姫巫女だった場合、それこそロクなことにはならないと思うのだけど。

というかその場合かなりの確率で私邪魔になるから殺されるわよね。そしたら誰がその子を守るのよ」


・・・・・確かに色々とままならない現実があった様だ。

俺もいると反論したい所だったが、それらの問題が全く見えてなかった俺が言っても説得力は無いだろう。

「でも今はそれももういいのよ。面倒な世代の人間は全員土の中だしね」

伸びをしながら晴れやかな顔で清實さんが言った。


人間になってからは最近まで清實さんと面識はなかったが、それでもきっと清實さんは今までもずっと輝美さんや咲耶、俺のことも影ながら見守ってきてくれたのだと思う。

「それはさておき、私と咲ちゃんの精神衛生のためにも絶対に輝ちゃん達は奪還するわよ」

そんな俺の考えを知ってから知らずか、清實さんが真剣な声で俺に語りかけた。





「さて、それじゃあそろそろ十分に結界の周りをうろついたことだし、下であの人達と合流してお茶でもしましょうか」

しばらく結界の周りを飛んだ後、まるでピクニックにでも来たかのような調子で清實さんが言った。


清實さんの指示に従いながら地上に降りれば、すぐ目の前に今しがたこちらに着いたらしい邦治さんと柿芝がいた。

「それじゃあ無事合流できた所で向こうに向かってプレッシャーを飛ばしつつ家族水入らずでお茶でもしましょ。

もうすぐ四時だけどおやつにケーキとか食べられる所がいいわね」


ルンルン気分ではしゃぐ清實さんをよそに柿芝は静かに邦治さんと清實さんを見比べた。

「絵面的にはおじいちゃんと孫二人みたいに見えるんですが」

柿芝がそう言うと今度は邦治さんが楽しそうに笑い出した。


「よしよし、じゃあ今日はおじいちゃんが何でも好きな物買ってやるぞ」

邦治さんは柿芝と清實さんの頭を撫でながら言った。

「子ども扱いしないで下さい」

柿芝は顔を赤らめて邦治さんの手を払って抗議した。


しかしすぐ横で清實さんは

「わーい、じゃあ私あのパフェ食べたい」

と言って邦治さんの手を引いて可愛らしいパフェのサンプルが飾られた喫茶店の前まで邦治さんを引っ張って行った。


結果的にその場には柿芝と俺がポツリと残された。

「柿芝、子ども扱いするなというセリフは返って相手からすれば子供っぽく写るぞ」

とアドバイスしてやると柿芝は、知りません!との捨て台詞を残して二人の後を追った。




「はい、あーん」

たっぷりと生クリームの乗ったパフェをスプーンで掬い上げ清實さんはそれを隣に座った邦治さんの口元まで持って行く。

対して邦治さんもおいしそうにそれを食べる。


・・・・・なんだろう、なんで俺達はこんな物を見せ付けられなければならないのか。

現在四人掛けの席に清實さんと邦治さんが隣同士で座り、その正面に柿芝が座り、空いた席に俺も実体は無いものの身を置いている。

机の上には邦治さんの前にコーヒー、その隣の清實さんの前には抹茶アイスにあんこ、黒蜜に生クリームと餡蜜を豪華にした様なパフェがある。


柿芝はさっきからクリームメロンソーダの上のバニラアイスを崩しながらげんなりした顔をしている。

顔がそのまま咲耶だけに、より清實さんとどう接して良いかわからないのだろう。

対して清實さんは何を勘違いしたのか

「悠君も食べる?」

と柿芝にパフェを掬ったスプーンを差し出した。


しかし意外にも柿芝は割と落ち着いた様子で

「横からの視線が恐いのでいいです」

と急に真剣な顔になって言った。


「じゃあ私に下さいな」

直後、俺の背後から声が聞こえ、振り返るとそこには咲耶より二、三才年上かと思われるゴスロリファッションに身を包んだ咲耶そっくりの顔があった。

「ああ、確かにコレはパフェどころじゃないわね」

言いながら清實さんはスプーンをパフェの器に戻した。


「あら、私には食べさせてはくれないの?」

ゴスロリファッションの姫巫女が俺を退けて空いている席に座った瞬間、店の中の空気が変わった。

店内の内装はそのままに、人の姿だけが消えた。


「本当に今日は大漁だわ。結界張って待ってるだけで次々に姫巫女が引っかかるんですもの。

こんなの初めてだわ。やっぱり秀樹ひできの考えることは間違いないわね」

嬉しそうに姫巫女は笑った。


身体が動かない。まるで金縛りにあったかのように俺の身体は姫巫女の方を振り返ったまま硬直していた。

目だけ動かして様子を探れば、清實さん達も動けないらしく苦い顔をしていた。


「じゃあパフェは食べさせてくれないみたいだし、代わりに貴方を食べちゃおうかな」

顔の前で手を合わせてニッコリと姫巫女が笑った直後、清實さんのいる方向から血飛沫が舞った。

清實さんの顔半分がまるで何かに食いちぎられたかのように無くなっている。

続けて目に見えないそれは肩、腕、腹と次々に清實さんの身体を食い荒らす。


「ふふふ、マリー、ちゃんと残さずきれいに食べるのよ~」

楽しそうに姫巫女が見えない何かに語りかけた瞬間、姫巫女の胸を見覚えのある刀が貫いた。

同時に清實さんを食べていたらしい生物がいると思われる空間にも複数の刀が刺さっており、そこからは血が滴っていた。

そうしてその場に姿を現したのは30センチ程の大きさの熊のぬいぐるみだった。


姫巫女の姿は霧の様に霧散し、金縛りも解けたのか急に身体の自由が利くようになった。

先程まで謎の生物にかじられていた清實さんの身体も徐々に回復を始めた。

邦治さんが清實さんに自分の着ていた着物の羽織を着せていると今度は二人の目の前で血飛沫が舞った。


血飛沫の出所を見れば、机の上に長い刀が刺さっており、どうやらもう一体いたらしい見えない何かはそこにつっこんで真っ二つになってしまったらしく、机の上と床には真っ二つに切断されたウサギのぬいぐるみのあり、切断面からは血が滴っていた。

断面図といっても内臓や骨などは見当たらず、まるで綿に赤い絵の具を浸した様だった。


「姿は見えませんが、気配はするので対処できないこともありませんね」

柿芝が席の上に落ちた刀の先で机の上に落ちているぬいぐるみを突いた。

「エリザに、何てことするのよ!」


すぐに無人の店全体から先程の姫巫女の怒声が聞こえてきたが、柿芝は自分の真後ろの何も無い空間を刀で切りつけた。

先程と同じ様に血飛沫が上がり、今度現れたのは長いまつげに縦ロールの茶色い髪をしたフランス人形だった。

しかしその人形が床に叩きつけられると同時に今度は方々から小さな悲鳴が複数上がった。


「キャー!!カレンが殺されちゃったわ!」

「なんて奴だ!」

「お前みたいな極悪人は僕が退治してやる!」

「僕も手伝うよ!」

「私も力を貸すわ!」

「皆で悪者をやっつけろ!」

「そうだそうだ!!」


店中から小さな声が上がる。直後、再び俺たちの身体が金縛りにあった様に動かなくなった。

店のあちこちで小さな目が光り、こちらを見据えていた。


「・・・・・・いな」

それらを前にした瞬間、ぼそりと柿芝が呟いた。


「え?なぁにー?聞こえなーい」

「なんだなんだ、命ごいかぁ?」

「それとも恐くて声も出なかったのぉ?」


相変わらず店の中ではクスクスと笑い声が絶えなかったが、俺には確かに柿芝が身に纏っていた怒気が感じ取れた。


「めんどくさいなって言ったんですよ」


柿芝が静かに、しかしはっきりとそう言い放った瞬間、店内は炎に包まれた。

同時にあちこちで悲鳴が上がったが、それもすぐに収まった。

きっと燃え尽きたのだろう。


しかし次の瞬間には俺達は全員まとめて店の壁に叩きつけられていた。

「なんてことするのよ。皆がかわいそうじゃない」

再び俺達の前に姿を現した姫巫女は目を見開いて無表情だったが、それがより彼女の怒りを表現していた。


「かわいそうなのはアンタの頭でしょう。

いい年して人形遊びなんて、人間の友達はいないんですか」


対する柿芝も目が据わっており、先程から引き続きはっきりと、しかし普段より低い声で話す様は相当にキレている様子だった。

しかし多分柿芝が怒っているのは単にこの姫巫女が気に入らないというよりも、休みの日にいきなり呼び出されて散々振り回されてこんな目に遭っていることや、去年の暮れ辺りからこんなことばかり続いている理不尽さに対して相当にフラストレーションが溜まっているのをこの姫巫女にぶつけている様な気がする。


「失礼ね、いるわよそれ位!」

姫巫女は答えながら柿芝に向かって手をかざした。

柿芝の身体がにより圧がかけられたらしく、柿芝の押さえつけられている壁の周辺だけが急にもう一段へこんで低くなった。


「あらあら~?でもあなたの実家が取り仕切ってる『安寧の家』では信者は家族って扱いなんだから友達ではないでしょう?

それに貴方の実体は生まれてこの方一度も家の敷地から出たこと無いんだから友達どころか『安寧の家』の関係者以外の人間の知り合いはゼロでしょ」


清實さんが柿芝が苦しそうにしている横で嘲笑う様に姫巫女に言った。

佐倉の提案で既に持っている千里眼に加え、中村さんが持っていた魂の情報を読み取る力も咲耶から与えられた清實さんは次々に姫巫女の個人情報を暴露していった。


「そうそう、貴方を産んですぐに死んでしまったお母さんは処女懐胎で貴方を生んだとか言われてるけど、父親いるわよ。

いつも貴方の世話してくれてる秀樹が貴方の父親だから。

でも秀樹もアレは実の娘に対する態度じゃないわよね。

一応、貴方が実の娘だってことは秀樹本人も知っているのに。

母親と貴方を重ねているのかしら、気持ち悪い。

大体、願いを叶える『御子様』とかいって祭り上げられてるけどあんなのただ力を利用したい人間が寄って来るだけで、貴方に力がなければ誰も貴方に見向きなんてしないわよ」


物凄く他人事ではないようなことを言いながら清實さんは姫巫女に話しかける。

というか、その大部分はずっと清實さんが周りに対して思っていたことなのではないかと感じられてならない。

対して姫巫女の方は、そんなことがあるはず無い!違う!嘘だ!と今度は清實さんに対して攻撃しようとしたが、


「反論の言葉が見つからないから私の口をふさぐの?そんなことしても事実は変わらなわよ?

そんなに違うというのなら違う証拠を示して自分が愛されていると証明したら良いじゃない。

そんな物無いだろうけど。でも私を殺そうとするということはそれを認めるということでいいのよね?」


と清實さんに一気に捲くし立てられ、当たり前じゃない!脊髄反射で反論した物の、清實さんを言い負かせる材料がないらしく、まごついていた。

相手は自分と似たような人間だからこそ、どうすれば効果的に煽れるか心得ているという事なのだろう。


清實さんはしばらく姫巫女の様子をたまに野次を飛ばしながら観察していたが、やがてニヤリと勝ち誇ったように笑った。


「ああ、そろそろ時間切れみたい。貴方の体、もう無いわよ?」


「え?」

どういうことなのかという顔を姫巫女がしたが、次の瞬間には後ろに現れた咲耶によって抱きすくめられたかと思うとそのまま魂ごと咲耶に取り込まれてしまった。


すると俺たちを押さえつけていた圧力が消え、咲耶は元の姿の清實さんの身体を作るとすぐにそちらに魂を移動させてさっきまで清實さんが入っていた咲耶の身体は邦治さんの上着を残して消えてしまった。


「お疲れ様、何とかこっちは片付いたわ」

疲れた様子の咲耶がそう言えば、すぐ後ろに現れた佐倉が

「姫巫女の本体を探すのも苦労しましたが、それ以上に姫巫女によって様々な異能の力を与えられた人間達を相手にするのは骨が折れますね。まあ私達の敵ではなかったですけど」

と隣の修司の腕にくっつきながら笑った。


「成美君ってあんな面白いこと出来るんだね~あれなら私と恵瑠ちゃんが一緒に側にいる状態なら、無敵なんじゃないかなぁ」

加えて修司の反対側の隣にいた鞠亜が楽しそうに笑いかける。

「確かに今回修司君はMVPあげてもいい位の活躍ぶりだったわね」

と咲耶も修司を振り返る。


「いや、みんなの援護のお陰だよ」

満更でも無い様子で修司も笑い返すが、一体向こうで何があったというのか。


佐倉の作戦では、町の結界を張っている姫巫女を咲耶の姿をした清實さんが引き付けて、その清實さんが直接姫巫女を視て得られた姫巫女の情報を元に姫巫女の支持基盤を襲撃、姫巫女の支持者や身近な人間の魂を取り込んで姫巫女の情報を得る。

その後清實さんが姫巫女を引き付けている隙に姫巫女の魂の情報を元に奇襲をかけて姫巫女の魂を取り込む予定だったのだが、姫巫女の実家にそのまま姫巫女の体が置かれており中身の姫巫女は幽体離脱した状態でこちらに来ているらしいと途中で解った。


コレ幸いと早速咲耶はその肉体を消滅させた、という訳だ。


結果、姫巫女の力を現世に顕現させる媒介がなくなり、姫巫女はただの強い力を持った霊に成り下がった。

後はそのまま咲耶が不意打ち的に姫巫女の魂をいきなり取り込み、既に肉体もなく清實さんの精神攻撃で相当不安的になっていた姫巫女は、自分を取り込んだ咲耶に対する反撃も思うように出来ないまま咲耶の一部となったのだ。


「さて、それで外にある結界も私の物になった訳なのだけど・・・・」

しかし咲耶の顔は引きつっていた。


「どうしたんだよ、後は輝美さん達を探し出して魂を回収するだけだろ?」

不思議に思って尋ねれば、咲耶は静かに首を横に振って、今から自分が視ている物を皆にも見せると言った。

その直後に咲耶から送られてきたビジョンに俺達は絶句した。


結界の中で姫巫女達が自分達の力を暴走させ、更に影響し合い、結界の中は完全なる異界と化していた。




次回更新予定は7/25です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ