#52 まさかの恋バナ
「・・・・・・・どうして僕がこんな格好しなきゃいけないんですか?」
柿芝が不満そうに呟いた。
現在柿芝は咲耶の持っている白いフリルとリボンのついたワンピースに小豆色のカーディガンと黒いタイツ、黒髪ストレートのカツラと
カチューシャをつけている。
「恵瑠ちゃんに正体ばれたくないんでしょう?だったら変装すればいいのよ」
咲耶はどうだ名案だろうとばかりに胸を張った。
「咲耶さんの幻術とか精神干渉とかでどうにかならないんですか?」
対する柿芝は心底嫌そうだった。
「恵瑠ちゃんはその辺の目が凄く鋭いのよ。多分幻術や精神干渉で他人に見せかけてもそれが呪術的要素を帯びている以上、見抜かれた
り無効化される可能性が高いわ」
もっともらしい理由を咲耶は並べるが、その顔は随分と楽しそうだった。
「それにしても、何で女装なんですか」
尚も不服そうに柿芝が尋ねる。
「普段悠人君が絶対にしないような格好だからこそバレ無いのよ」
そりゃそんな趣味が無ければ、普段からそんな格好する男なんてそうそういないだろう。
「でも、こんなのすぐ男だってばれるんじゃ・・・・」
不安そうな顔で柿芝が更に食い下がった。
「大丈夫よ。悠人君は元々女顔だし線も細いし。まつげも長いからビューラーでカールさせてカツラ付けてグロス塗るだけで女の子その
ものよ!」
しかしそんなものは咲耶の前では無意味だった。
「柿芝、鏡を見てみろ。残念だがどうみても清楚系の美少女だ」
柿芝は再度鏡を見て、屈辱だったらしく頬を赤らめて俯いてしまったが、そんな恥らう姿がより女の子らしさに拍車をかけていた。
「だけど何でこんなカツラ持ってたんだよ?カツラなんて付けなくても咲耶は元々髪は長いだろ?」
少し気になって俺は咲耶に尋ねてみた。
「これは元々鞠亜の誕生日プレゼントにしようとしてた物だったのよ。
前に黒髪のさらさらストレートに憧れるとか言ってたし、うけるかと思って。
だけど考えてみたら、おしゃれ用のウィッグって結構面倒だし、日常的には使わないだろうなって思ってお蔵入りになったのよ。
でも、何かに使えるかもと思ってとっといて正解だったわね」
なんだその無駄遣いとも思ったが、そういえば輝美さんの籠目教への貢献のおかげで咲耶の家には結構な額が謝礼として入っているはず
だ。
そして、咲耶の父である達也さんは咲耶に対してかなり甘い。
多分それは咲耶の小遣いにも反映されているのだろう。
前に咲耶も月々の小遣いとは別に、欲しいものがあったらその都度金をもらうとか言ってたしな。
「それで、鞠亜さんを迎えに行くにあたって、何か方針や作戦はあるんですか?」
柿芝は諦めた様に鏡から伏し目がちに目を逸らしながら咲耶に尋ねた。
地元に戻って解ったのは、咲耶の言った通り鞠亜は現在、成美家に泊まりに行っているという事だった。
現在鞠亜は雛月の守りが無いので、佐倉の庇護下に入るために佐倉が下宿している成美家に泊まりに行っているらしい。
佐倉曰く、鞠亜を自分の保護下に置くためには常に鞠亜に佐倉から一定以内の距離にいてもらう必要があり、同じ学校の敷地内ならまだ
大丈夫だが、現在佐倉が居候している成美家と天野家程の距離が開いてしまうと難しいそうだ。
その事は親父達にも伝えられたそうだが、佐倉が鞠亜の家に泊まりに行くよりも、鞠亜に既に様々な結界を施している成美家に来てもら
う方が、鞠亜を守る為にも都合がいいと言われ、また鞠亜自身の希望もあり、咲耶が町を離れている間、鞠亜は成美家の世話になること
になったらしい。
鞠亜の両親は完全に佐倉からの精神干渉を受けて、今まで佐倉家から必死に逃げて隠れてきたのに、それを忘れた様に昔からの付き合い
だし、小さい頃は修司や佐倉とよく一緒に遊んでいたからと笑顔で鞠亜が修司の家に泊まりに行くのを送り出した様だ。
それに対しては親父も思う所もあったようだが、実家から逃げてきた経緯が経緯だけに、変に不安にさせるよりはいいだろうと考えた様
だ。
「とりあえず、龍太はまた文月と交代で私の中に入って、悠人君は私のサポートってことで」
ニヤリと咲耶が不敵に笑った。
「方針としては・・・心を折りに行くって感じかしらね。無理そうなら距離を縮めるだけでいいけれど」
悪い顔だ。
これはとても悪い顔だ。
咲耶がこの表情をした後はろくでもないことしか今まで無かった。
「・・・・佐倉をこちら側に引き込むために説得するんじゃなかったのか?」
俺がそう尋ねれば、咲耶は不思議そうな顔をして小首を傾げた。
「だからその説得をしやすくするために先に恵瑠ちゃんの心を折っておくのよ?」
あたりまえだろう?とでも言いたげな様子の咲耶に俺と柿芝はしばし黙り込んだ。
「・・・前から思ってましたが、咲耶さんって結構悪魔的な性格してますよね」
苦笑いを浮かべながら柿芝が呟けば、咲耶はまた小首を傾げた。
「小悪魔?」
周りを振り回すという意味では近いのかもしれないが、恐らく柿芝が言いたかったのはそんなことじゃないだろう。
「いえ、そんな可愛いものじゃなく、悪魔そのものです」
憮然とした態度で柿芝が首を横に振った。
「そんなに褒めても何も出ないわよ?」
柿芝の言おうとした事が伝わったのか伝わってないのかはわからないが、咲耶はイタズラっぽい笑みを浮かべてわざとらしくたじろいだ
。
「褒めてないので何もいらないです」
対する柿芝は何か諦めた様子で乾いた笑いを浮かべた。
「さて、鞠亜の気配はこのマンションの中にあるし、鞠亜のお母さんから聞いた鞠亜が今泊まりに行ってるっていう修司君の家の住所も
ここだし、恐らくここの9階の部屋に鞠亜はいると思うのだけど・・・・」
「エレベーターでも階段でも9階に行けませんね」
俺達は今、成美家のあるマンションのエントランスに立っている。
9階に行こうと進めば、その度知らないうちに別の階に立っている。
最初、俺達はエレベーターで9階のボタンを押し、なぜか降りた先は8階のフロアだった。
エレベーターに乗ってた時は確かに9階に着いたのを確認したはずだ。
しかしエレベーターから降りて目に入った階の表示は8階だった。
俺達は今度はエレベーターのすぐ横にあった階段で9階に上がろうとした。
ところが気付くと全員揃ってマンションのエントランスに戻っていた。
「明らかに結界を張られてるな」
俺の身体に入った文月がそう呟けば、そうみたいね。と咲耶が相槌を打った。
「とりあえず、もう一度同じ所に行ってみましょう」
咲耶はそう言うともう一度エレベーターに乗り込み、9階のボタンを押した。
やがてエレベーターは9階を表示し、ドアが開いた。
しかし、目の前に現れたのは8階のフロアだった。
エレベーターの表示を見れば、確かに9階を示している。
「どうやら、出口の先に8階への転移術式が組まれてるみたいね」
開くボタンを押しながら咲耶がため息混じりに呟やいた。
すると、柿芝がドアの前に立った。
監視カメラから影になって見えない左手には脇差が握られていた。
どうやらいつもの刀を短くしただけの物の様だ。
柿芝が目の前の空間に脇差を突き立てた瞬間、目の前の空間が揺らぎ、俺達の前に9階のフロア表示が現れた。
「随分あっさりと破れましたね」
エレベータから降りながら柿芝が怪訝そうな顔をした。
「今建物全体を透視したけれど、このマンションに仕掛けられてた転移術式はあのエレベーターにあったものと階段にあったものだけ見
みたいね」
先日清實さんと中村さんから手に入れた力を早速使いながら咲耶が言った。
「ええ、よく解りましたね。もう必要ないので解除しました」
突然聞こえた声に目を向ければ、そこにはニコニコと上機嫌な様子の佐倉が立っていた。
「お迎えに来ました。鈴木先輩、高尾先輩、柿芝君」
瞬間、その場の空気が止まった。
「ええっと、どちら様でしょうか?」
柿芝が高めの声でとぼけた。
「あら、クラスメイトの顔も忘れたの?酷いわ。確かにちゃんと話すのはこれが初めてだけど」
しかし、佐倉が満面の笑みで柿芝にそう尋ねれば、柿芝の顔が引きつった。
「咲耶さん、一瞬でばれたんですけど」
俯いてしまって柿芝の表情はわからなかったが、その声はかなり低かった。
「その変装は完璧だと思うわよ?見た目だけなら私も誰かわからなかったもの。
解ったのはその刀のおかげよ」
柿芝の左手に握られた脇差を指差しながら、尚も上機嫌で佐倉が言葉を続ける。
「その刀、鬼灯の元締めだった明火家の血統の人間にしか出せないのよ。
そして、現在の鬼灯のトップで、同じ術を使える邦治さんと同じ苗字。
それだけでも繋がりを警戒するのには十分でしょ?
更に鬼灯には魂の情報を偽装できる術まであるんだから、一見普通の人間でも警戒を解く理由にはならないわ」
得意気に佐倉が言ったが、俺は佐倉の推理よりも、柿芝家と明火家の関係の方が気になった。
佐倉が言っていた明火家とは、まさか昔、竹が治癒の力を授けた明火家のことだろうか。
確か明火家からも竹への熱心な縁談の話が来ていたので俺と耕四郎も竹が失踪してから比較的早い段階で明火家を訪ねた。
明火家人々の反応も記憶も他の見鬼の才がない人達と同じだったが、もし明火家が元々呪術を扱う家系であったのなら、少なくとも家に
侵入してきた俺と耕四郎の姿は視えていたはずだし、仮にそうだったとして、なぜ見えないフリをしてやり過ごす必要があったんだ?
そもそも、竹自身もかなり超人的な回復力を持っていたはずで、それが突然普通の刀で切りつけられたからといって簡単に命を落とすだ
ろうか。
例えば、その刀には柿芝の刀の様に回復を阻害する何らかの呪いがかけられていたとか・・・・。
昨日、鬼灯に対して抱いてしまった疑念のせいもあり、俺の中での鬼灯という組織への警戒感がかなり高まった。
そんな組織と手を組んで、咲耶は、清實さんは本当に大丈夫なのだろうか。
そういえば、千を封印していたのも鬼灯の家系のはずだ。どの家とは聞かなかったが、嫌な予感がしてならなかった。
もし、竹を殺したのが明火家であったのなら・・・
「それじゃあ、まーちゃんも修司お兄ちゃんも待っているので行きましょうか」
そんな俺の考えをよそに、佐倉は俺達を案内すると言って歩き出した。
確かに部屋の場所は奥まっていてそれなりに解りにくかったが、佐倉がわざわざエレベーター前まで迎えに来たのは、柿芝の正体を暴く
ためと、相手がわかった場合、先にそれを告げてこちらの出鼻をくじくつもりだったのかもしれない。
この妙な意地の悪さは咲耶と通じるものがあるのではないだろうか。
成美家に到着し、佐倉が呼び鈴を鳴らせば、待ってましたといわんばかりに修司が出迎えてくれた。
「いらっしゃい。あがってよ、鈴木さん、龍太・・・・ええっと」
「私の親戚のユウちゃんよ。今回の儀式もユウちゃんに色々手伝ってもらったの」
当たり前の様に咲耶は柿芝を女として紹介した。
柿芝の方を見れば、若干羞恥で頬を赤らめていたが、はじめましてと修司に軽く会釈した。
まあ確かに、こんな格好して今更男ですと言い出す方が恥ずかしい。
佐倉に正体がばれてしまった以上、もうこの格好をすることもないだろうから、今回は完全に別人として振る舞うつもりなのだろう。
修司はそうなんだ、よろしく。と軽くあいさつをした後、俺達に中に上がるように促した。
しかし、その顔は妙に覇気が無いように感じられた。
「咲耶ちゃん、おかえり~!会いたかったよぉ~」
リビングに行くと、早速鞠亜が咲耶に抱きついてきた。
「ただいま鞠亜。何か変わったことは無かった?」
咲耶も慣れた様子で受け止めながら鞠亜を見上げた。
咲耶に比べて鞠亜は10センチ近く背が高いので大体咲耶が鞠亜に並ぶと見上げる形になる。
「うん。そのことなんだけどね・・・・」
鞠亜は少しいいづらそうに口ごもった後、意を決したように口を開いた。
「私、長崎の恵瑠ちゃんの家にお世話になろうと思うの」
それはなんとなく予想していた言葉でもあった。
俺が佐倉の立場なら、邪魔者がいない内に鞠亜を説得してなんとか自分達の側に引っ張り込めないかと考えるからだ。
「私の体質のことも、元々は無理に長崎の土地から離れたせいで起った不具合が原因らしいし、向こうに行けば今の祟られ体質ももっと
改善するみたいだし、恵瑠ちゃんも力になってくれるって言ってくれてるから、大丈夫だよ」
鞠亜はふにゃりと困ったように笑った。
この顔は、無理して我慢している時の顔だ。
「どういうことなのか、もちろん説明してくれるのよね?」
咲耶がそう言って佐倉の方を振り向けば、
「はい。そのつもりです」
と佐倉が頷いた。
その後の佐倉の説明をまとめるとこうだ。
どうやら佐倉と鞠亜の魂には発信機、身体には力のリミッターとそれを操作するリモコンの様な物が取り付けられているらしい。
それらは今の所取り外しは不可能で、最悪少しの間ならそれをブロックすることは出来るが、そんなことをすれば即謀反を疑われ、より
面倒なリミッターを付けられたりするらしい。
反対に与えられた仕事に意欲的に取り組み結果を残し信頼を得れば、リミッターの制限も軽くなる。
鞠亜が自分で自分の力を使うことも出来ず、エネルギーをを常に垂れ流し状態にして様々な霊的存在を引き寄せてしまうのもこれが原因
だと佐倉は言った。
そしてそのリモコンを操作しているのが紅鏡で全ての物事の決定権を持つ金という組織に所属する佐倉家親族の四人だそうだ
。
金に所属できるのは人数は限られていて十二人、つまり佐倉家は紅鏡のトップに位置する組織の三分の一を自分達の親族で固めているこ
とになる。
金所属の佐倉家親族の四人を無力化しない限り、佐倉と鞠亜はその呪いに捕らわれ続ける。
もし逃げ出してもすぐに魂に付けられた発信機で場所を特定される。
鞠亜の場合、居場所を特定した佐倉家の使いをことごとく返り討ちにしていたせいで発見が遅れた様だが、そのせいで身体のリミッター
が最も強固に力の使用を封じた状態に変更され、魂と肉体の釣り合いが取れなくなり、酷い祟られ体質の様な状態になってしまったらし
い。
そこまで酷い状態になれば、鞠亜の両親はすぐに佐倉家に泣きついてくるだろうと考えていたのだろうが、佐倉家側の誤算は、天野夫婦
に他の霊的コミュニティへの伝手があったことだろう。
佐倉の考える解決策は、紅鏡内で一定の功績を残して将来有望そうな人間を少しずつ自分の仲間に引き入れ、勢力を拡大しつつ、期を見
てその四人を始末するという物だ。
しかし、血統系の力を持つ者達が自分の力に潰されず安心して暮らすためにも紅鏡の組織自体は必要なので、自分が空いた金の席の一つ
に座り、他の席には自分の信頼できる人間を着け、現在の規模だけが巨大になり、古参の家系が他から全てを搾取する様な状態になって
いる紅鏡を作り変えたいらしい。
そのためにも資質において古参の血統系家系の跡取りにも引けを取らない修司と、佐倉の魂その物を分けた鞠亜の協力が必要だと言う。
修司もこのままでは佐倉家の計画により鞠亜に肉体を提供するために殺されてしまうことになる。
つまりこの三人にとっては、佐倉家の人間達を倒さない限り自分達に未来は無く、その事については協力する、しないという選択肢は最
初から無いのだ。
「それに、このまま私と一緒にいたら、咲耶ちゃんまで紅鏡の揉め事に巻き込んじゃうかもしれない」
鞠亜が思いつめた顔で咲耶を見つめる。
今まで何が起っても咲耶ちゃんはいつも私を守ってくれたけど、今回恵瑠ちゃんと戦って咲耶ちゃんが倒れちゃった時、やっぱり私のせ
いで咲耶ちゃんが大変な目に遭うのは嫌だって思った。
小学校の時はただ咲耶ちゃんにそのせいで嫌われたくないとしか思わなかったけど、今は咲耶ちゃんに苦しい思いをさせたくないって、
純粋に思うの」
鞠亜が咲耶の手を両手で包みながら俯いて言った。
佐倉が鞠亜を連れ戻しに来て咲耶が倒れたのが鞠亜的には相当堪えていたようだ。
部屋の中がしんと静まり返った時、盛大な咲耶のため息が聞こえた。
「鞠亜、実は今の私って結構死亡フラグが立ちまくってるのよ。別系統の姫巫女だったり枢魔派だったり、明らかに私のこと面白く思っ
て無さそうな鬼灯だったり・・・」
鞠亜の顔が不安に包まれていく。
「もう正直いつ殺されても納得な勢いよ!」
半ばヤケになったかのように咲耶は一気に捲くし立てた。
「だから、別に今更死亡フラグがもう1、2本増えた所で変わらないわ。
つまり、その、私も一緒に戦うというか・・・それに、恵瑠ちゃんだけに鞠亜を任せられないわ」
最後の方は呟くような声だったが、いきなり佐倉たちに協力=死亡フラグと決め付けるのはいかがなものか。
鞠亜の方を見れば、咲耶の言葉になにやら心を打たれたらしく涙を目に貯めて少し震えていたが、次の瞬間にはガバッと効果音が付きそ
うな勢いで力強く咲耶を抱きしめた。
「ありがとう咲耶ちゃん、私も咲耶ちゃんと離れたくない。だけど、それで咲耶ちゃんが大怪我したりするのは嫌なの」
すっかり二人の世界に入って泣きながら鞠亜は咲耶を抱きしめる。
「私としては、鈴木先輩や高尾先輩、それからユウちゃんも力を貸してくれると非常に助かります」
一方、佐倉は咲耶の後ろにいた文月と柿芝のもとに赴き、そう呟いているのが微かに聞こえた。
うん、知ってた。
俺は心の中でこっそり相槌を打った。
それを大きな声で言わないのは、恐らくこのままでは咲耶も危険とでも言って鞠亜を説得したからだろう。
佐倉としてはそれを理由に鞠亜を窓口としてこちらに協力を取り付けたかったが、鞠亜がそれなら自分が佐倉家に行けば少なくとも紅鏡
からの脅威は無くなるだろうと解釈して先走り、今のような状態になっているのだろう。
しかし、この展開は咲耶にとっても好都合だ。
咲耶としても佐倉からとの協力が取り付けられればそれだけでも収穫だが、それ以上に、佐倉への協力という形にすれば今後紅鏡の人間
の魂を取り込む言い訳にもなるだろう。
「そう、ありがとう鞠亜。だけど本当に私は紅鏡と衝突は望む所なのよ?というか、それを条件に恵瑠ちゃんからの協力が取り付けられ
れば、結果的に私の身の安全も高まると思うの。
そういう訳だから、少し私と恵瑠ちゃん二人で話を詰めたいのだけど」
咲耶はそう言って文月の方を振り返って見た。
「ああ、わかったよ」
文月はそう言うなり柿芝を連れて鞠亜と修司の側へ歩いていったかと思うと、そのまま四人まとめて忽然と消えてしまった。
「ちょっと!何やってるんですか!」
すぐに佐倉が声を上げたが、対する咲耶はすぐ側にあったテーブルの方へ行き、さも当たり前の様に備え付けの椅子に腰掛けた。
「皆の前だと話しにくい事もあるでしょう?だから少し別の次元で待機してもらうことにしたわ。
私は平和的な交渉を望むのだけど、恵瑠ちゃんはどうなのかしら?」
要するに、鞠亜と修司は現在こちら側の手の内にあるので交渉中、変な真似したらわかっているんだろうな。
というようなことを咲耶は言いたいのだろう。
「・・・・・まあいいです」
佐倉がため息を付きながら咲耶の向かいの席に座った。
「まず、こちらとしても恵瑠ちゃんと協力関係を結ぶのは吝かでは無いのだけど、実際の所、鞠亜と修司君って実践的にはど
うなの?」
多分、咲耶はこれが聞きたくて鞠亜と修司に席を外させたのだろう。
先程の佐倉の口ぶりからして、修司にはそれなりの資質を認めているようだが・・・・
「修司お兄ちゃんの場合、神人になるための根本的な条件はクリアしてるから、これから修行していけばそれなりに期待は出来ます。
問題はまーちゃんね。肉体が脆弱過ぎる・・・」
佐倉は鞠亜の話に差し掛かったところで急に口ごもった。
「元々はそれなりの血統だったけど、長い間肉体に付けられたリミッターがMAXになった状態でずっと過ごしてきたせいで、リミッタ
ーの制限を外しても、肉体が魔術を扱いにくい状態になっている可能性が高いんです。
実際この前擬似的な神人になって戦いを挑んできた時、無理矢理肉体に魂からのエネルギーを出力させたせいですぐへばってて、あの時
すぐに肉体ごと封印して身動き取れないようにしてなかったら、それこそ身体に何らかの後遺症が残ってましたよ」
どうしたものかと腕を組みながら佐倉は答えた。
佐倉としても鞠亜が自分と同じ魂を持っている以上、最低限自分の身は自分で守らせたい様だったが、現在それは難しい様だ。
「つまり、鞠亜の身体が魔術を扱いやすい物になればいいのよね?
なら私から一つ提案があるのだけど」
咲耶が待ってましたと言わんばかりに笑った。
「もし魂を取り込んで肉体を再生する。という事なら、お断りします」
しかし、そんな咲耶の申し出は口に出す前にあっさり棄却されてしまった。
なぜ、佐倉は今こんなにも簡単に咲耶の手の内を見抜いたのだろうか。
「・・・理由を聞いてもいいかしら?」
咲耶は少し間を置いた後、佐倉に尋ねた。
「それは精神・肉体・魂全ての主導権を鈴木先輩にゆだねる事と同義じゃないですか。そんなの、ただ飼い主が変わるだけで、今までと
何も変りません。
まーちゃんの体の事は私が何かしらの策を考えるのでご心配なく」
佐倉が毅然とした態度で言い放つ。
咲耶もその返答は予想していたらしく、咲耶は小さく肩をすくめた。
「まあ、そうなるわよね」
「第一、私は佐倉家からかけられた暗示を解いたり、お互い影響しあって変な効果が生まれてきてる守りの結界だとか封印だとかも解け
るものは解いて、解けないものは影響しあわないように少し術式を変化させたりとかしなきゃいけないのに、何でわざわざ新たにそんな
特大の地雷をインストールしなきゃいけないんですか」
佐倉は心底嫌そうに言った。
その辺は親父も咲耶も全くのお手上げ状態だったらしいが、さらりと解決しているあたり、流石ではある。
「それもそうよね。所で、鞠亜と修司君に佐倉家から施された暗示は今もそのままなのかしら?」
顔の前で指を組みながら、あくまでそっちが本題という様子で咲耶は尋ねる。
「呪術的なものはともかく、暗示の方は二人とも幼少期に念入りに刷り込まれたせいで、解くのは結構難しいです。
とりあえず、少しずつ暗示に逆らう様なことをさせて、慣れさせていくしかないでしょうね」
深刻そうな面持ちで佐倉は答えた。
佐倉から聞いた鞠亜と修司にかけられた暗示をまとめるとこうだ。
共通
・佐倉恵瑠を含む佐倉家の人間の言う事には絶対服従
鞠亜
・佐倉恵瑠に対する強烈な好意 | (自分の思いを遂げるためならなんだってする)
修司
・天野鞠亜に対する献身的な好意 | (鞠亜の願いを叶えるためならなんだってする)
「ところで、恵瑠ちゃんにはどんな暗示がかけられているの?
今の話や清實さんの話を聞く限り、少なくとも恵瑠ちゃんは修司君を好きにならないと、鞠亜は普通に恵瑠ちゃんに迫って、女だからと
断られても精々性転換を考える位で修司君の体を乗っ取ろうなんて思わないわよね」
佐倉の話を聞き終わった後に、咲耶が確認するように佐倉に問いかけた。
「・・・・・確かに、私には修司お兄ちゃんに対して強い好意を持つように暗示をかけられていましたが、それには私自身幼少期から気
付いていました。
しかし、気づいた所で佐倉家の人間にその事が知れればまた面倒な暗示をかけられる可能性もあるので、佐倉家の監視がある所では常に
暗示がかかったままの様に振舞っています」
まるで決められた原稿を読み上げるように佐倉は事務的に言い放つ。
ということは、今まで散々佐倉が修司にべったりで好意的なオーラ全開だったのも全て演技だったということだろうか。
そうだとすると、軽く女性不信になりそうだ。
「でも、自分と魂を分けた片割れの鞠亜はともかく、言ってみれば部外者の、替えが効くポジションである修司君を守ろうとしている辺
り、嫌いじゃないんでしょう?」
遠まわしに本当は修司個人にはそんなに興味は無いと言っている佐倉に、咲耶がニヤニヤといかにも邪推していますと言わんばかりの顔
で聞く。
「あ、当たり前です。別に私は好き好んで犠牲者なんて出したくありませんから。
それに、修司お兄ちゃんの才能は本物ですし?味方の戦力は多いに越したことありませんし?」
妙に声が上ずっている。明後日の方向を見て目が泳いでいる辺り、かなり動揺している様に見える。
「こんな時でも、呼び方は”修司お兄ちゃん”なのね。恵瑠ちゃんは修司君の事、心底好きなんでしょ?」
更に煽るように咲耶が声をかける。
その言葉を受けて、勢いよく佐倉は立ち上がった。
顔は下を向いているが、机の上に付かれた両手は握り締められていた。
「そんなの!・・・そんなの、仮にそうだとしても、あらかじめ決められた偽物の気持ちです。
まーちゃんは、今鈴木先輩のことが好きなようですが、それもまーちゃんの中で私が鈴木先輩に、修司お兄ちゃんが高尾先輩に置き換わ
ってるだけです。
修司お兄ちゃんがそれを応援しているのだって、きっとまーちゃんに対する暗示もあるんです」
言いながら上げられた佐倉の目には涙が溜まっていた。
「だから、私が修司お兄ちゃんを本当に好きなんて、言っちゃいけないんです」
佐倉が搾り出すように言えば、咲耶は不思議そうに首を傾げた。
しかし、俺は佐倉のその言い分は本当に正しいものなのだろうかとも思った。
修司は鞠亜が好きなのが俺なんじゃないかと思ってた時は、応援する所か生霊飛ばしてきたし、鞠亜も咲耶が好きと言うが、それでも俺
の身体を乗っ取ってでもその思いを遂げようと考えている様な様子も無い。
むしろ自分が死んだ後は俺に咲耶を幸せにしてやってくれと言ってくる程、鞠亜は自分の気持ちを成就させるよりも咲耶の幸せを願って
いるのだろうと感じる。
俺が思うに、暗示は所詮暗示であり、多少の影響はあるのかもしれないが、佐倉家から長らく離れて暮らしていた鞠亜と修司にはそこま
で絶対的な影響は無いんじゃなだろうか。
「仮に、修司君への思いが暗示によるものだとして、なんで今ある気持ちまで否定しなきゃいけないのよ?」
咲耶のその言葉に佐倉は目を丸くしたようだが、すぐに反論しようと口を開きかけたが、それを遮る様に咲耶が言葉を続ける。
「別にいいじゃない。最初は暗示でも。一緒に過ごしていくうちにその気持ちも本当になるかもしれないわよ。
それに、もし修司君と恵瑠ちゃんがくっついたとして、何か不都合でもあるの?」
咲耶の言葉に、更に佐倉は目を丸くしたが、すぐに口を開いた。
「修司お兄ちゃんが、私を好きになってくれるなんて・・・」
「修司君にかかっている暗示を解いて猛アタックしたら良いんじゃないかしら」
「私と一緒になるということは、佐倉家の問題も一緒についてくるということで」
「だから恵瑠ちゃんは今その佐倉家の問題ある人間達を無力化しようと画策しているんでしょう?」
「まーちゃんの事や私とまーちゃんの魂を統合させることが・・・・・」
「鞠亜も暗示解いて幸せになってもらえばいいじゃない。
恵瑠ちゃんと鞠亜の中の魂を一つにするのだって、他に方法が無い訳じゃないでしょう?」
しばしの間、佐倉と咲耶の押し問答が続いたが、最後は
「・・・・私、好きって言ってもいいのかな」
という佐倉の言葉で問答の幕は閉じた。
「当たり前でしょう。ところで誰も死なずに一つの肉体に恵瑠ちゃんと鞠亜の魂を統合する方法なんだけど・・・」
咲耶が佐倉の背中をさすりながらそう言いかければ、佐倉がそれを遮った。
「それとこれとは話が別です。・・・その辺も、私なりに一番良い方法を考えてみます」
しかしそう答えた佐倉の顔は晴れやかだった。
「・・・咲耶さんは、好きな人とかいるんですか?」
佐倉がイタズラっぽく尋ねた。
「私は、龍太が好きよ」
咲耶は照れるでも恥ずかしがるでもなく、至極当然のように言い、そのせいで俺はしばらく自分が遠まわしに告白されたことに気付かな
かった。
「なんか、順当過ぎてつまらないです。二人は許婚か何かですか?」
佐倉は少しむくれながらも、質問を重ねる辺り、興味はあるらしい。
「別にそういう訳じゃないけど、母の話だと、お腹の中にいた時にもそんな話も出てたみたい」
咲耶は少し考えるような素振りで言った。
佐倉は訳がわから無いという様子で首を傾げた。
「さて、話も済んだことだし皆の所に戻りましょうか」
咲耶がそう言って先ほど文月が消えた辺りの方を見れば、佐倉もそうですねと頷いた。
なんとなく、さっきよりも二人の距離が近く近くなっている様な気がした。
「それにしても、ユウちゃんって”あの”ユウちゃんだったんだね~
全然気づかなかったよ~似た名前の別人かと思っちゃった~」
咲耶が手を叩いて文月に合図し、文月の結界が解けた時、真っ先に俺達の目に飛び込んできたのは柿芝の正体に気づいたらしい鞠亜が目
を輝かせている姿だった。
「僕だって好きでこんな格好している訳じゃ・・・」
顔を真っ赤にして柿芝はたじろぐが、そのもじもじと恥らう姿がより女らしさを強調している。
「普段もそんな格好してもいいと思う!」
鞠亜が力強く提案した。どうやらそうとうツボにはまったらしい。
「嫌ですよ僕はこんな趣味ありません!」
対して柿芝も全力で拒否する。
「大丈夫!ユウちゃんは可愛いよ!その格好も似合ってるし、もっと自分に自信を持ちなよ!」
そしてそこに修司も加わり柿芝を説得する。
というか、これは”ユウちゃん”の正体が男だとわかった上での発言なのだろうか・・・・?
「・・・・・・・・・・・・・・・何ば、いいよっと?」
しばらくの沈黙の後、佐倉から発された声は今まで聞いたことがない低音だった。
「あ、恵瑠ちゃん、話し終わったんだね。さっきまーちゃんに聞いたんだけど、実はユウちゃんって普段はボーイッシュな格好ばかりで
ワンピースを着たのも今日が初めてらしいんだ。
それで、この格好も落ち着かないみたいなんだよ。僕は普段のユウちゃんの格好は知らないけど、今の服は凄く似合ってるし、もっと自
分に自信を持って欲しくて・・・」
つい熱くなっちゃった。と照れ臭そうに修司は笑い、横で鞠亜が
「そこから始まるロマンスもあると思うの!」
と力説している。
どうやら鞠亜は修司を煽って、柿芝とのロマンスが始まることを期待いる様だった。
・・・・・・しかし残念ながら柿芝は男だ。
修司はそのことにはまったく気づいていない様だ。
「そがんことゆったって、ユウちゃんはお・・・」
男じゃないか。そう言いかけた所で佐倉の口は鞠亜に塞がれた。
「恋には家柄も性別も生い立ちも宿命も関係ないんだよ!
だからもし目の前に恵瑠ちゃんの好きな人がいるのなら、正々堂々真っ向から勝負すべきだと思うの!」
力強く言い放った鞠亜だったが、明らかにその目はこれから面白そうな事が起こりそうな予感にワクワクしている顔だった。
佐倉の方を見れば、なんとなく背後にめらめらと黒い炎が燃え上がるのが見える気がした。
「わかったたい。恋って障害が多かなら多かほど燃え上がる物やし、もしユウちゃんが毎回うったちの前にそん格好できたとして
も、うちがすっことなんて一つやけん。
うちは!絶対に貴方なんかに負けんけんね!」
(訳:わかったわよ。恋って障害が多ければ多いほど燃え上がる物だし、もしユウちゃんが毎回私たちの前にその格好できたとしても、
私がすることなんて一つだわ。私は!絶対に貴方なんかに負けないんだから!)
方言全開で佐倉が柿芝に宣戦布告をした。
柿芝はお前もかとでも言いたげな呆れた目で佐倉を見返し、修司は、
「つまり、ユウちゃんもまーちゃんのことが・・・・」
と、全くお門違いの衝撃を受けていた。
佐倉よ、柿芝に宣戦布告する前に、前回、文月が修司に誤解させた『佐倉は鞠亜のことが好き』というのを解く方が先じゃないだろうか
。
そして新たな誤解も生まれ、それを佐倉が修正しようとし、更にそれを鞠亜が引っ掻き回し、より修司の誤解が深まる。
・・・・鞠亜の顔が、すごく生き生きしてる。
「何があったの?」
事態を遠巻きに見ていた文月に咲耶が尋ねた。
「ああ、悠人があの格好では落ち着かないのか挙動不審だったり一人称が僕のままだったりするものだから、とりあえず普段は男のよう
な格好をして男の様に振舞ってる娘という設定を付けて助け舟を出したのと、鞠亜が妙に悠人の事を勘ぐるので正体を耳打ちしたらこう
なった」
・・・またお前のせいかよ!
まさかとは思うが、鞠亜は”ユウちゃん”の正体が柿芝だと知った上で修司とのロマンスを期待しているのだろうか?
いや、単純に面白がっているだけかもしれないが・・・・・・
鞠亜って、こんな性格だったっけ・・・・?
まさかこれも暗示や精神干渉の弊害なのだろうか。
文月は悪びれる様子も無く淡々と説明し、何かまずかったかと咲耶に聞けば、咲耶は小さく首を横に振った。
「当初の目的とは違うけど、雨降って地固まるっていうし、今は親睦を深めて今後に期待しようと思うわ。
それにしても、今回も良い働き振りね!」
そう言いながらも咲耶は鞠亜と同じ、なんか面白いことになったからこれでもいいか。という目をしていた。
その後、鞠亜はとりあえず雛月無しでも過ごせる様にするために佐倉が色々鞠亜の身体を調整するということになり、鞠亜はもうしばら
く成美家で過ごすことになった。
帰り道、柿芝が
「とりあえず恋敵には宣戦布告しておこう、みたいな性格は血なんですか?
そんなのスルーして普通に意中の相手にアプローチすれば良くないですか?」
と疲れきった目で愚痴っていた。
咲耶の部屋で柿芝が元の格好に着替えた後、
「よかったらこのウィッグあげるからまた可愛い服着てみない?」
と咲耶が目を輝かせて柿芝に提案したが、二度と着るものかと全力で拒否された。
俺も元の身体に戻り、帰ろうとした時、少し歩かないかと咲耶に誘われた。
咲耶が何を話そうとしているのかはすぐに察しが着いたので、俺はその言葉に頷き、それからしばらく二人共無言で土手の辺りをうろつ
くことになった。
十分ほど歩き、もう大分家から離れてしまったなと思っていた時、急に左腕の袖を掴まれた。
「・・・・・さっきの話の返事、『俺も好きだ』以外の答えは聞きたく無いから」
振り向けば、顔を赤くして下を向く咲耶がいた。
「だから、それ以外の答えなら、何も言わなくていいというか、別に、今まで通りでいいから・・・・」
次第に咲耶の声が小さくなっていき、言い終わる頃には俺の袖を掴んだ咲耶の手が離された。
その姿に、本当にコイツは咲耶なのかという衝撃と、なんとも言え無いむず痒さに襲われた。
「俺が」
そう言いかけた瞬間、咲耶が勢いよく踵を返して走り出した。
驚いたが、ここで逃がしてなるものかと俺は咲耶を追いかけ、数十メートル先でやっと捕まえた。
「俺がっ、そんなこと咲耶に言われてっ、嬉しく無い訳あるか!俺も、咲耶のことが好きだ!」
息が上がりながらも一気にそう伝えれば、真っ赤な顔をした咲耶が驚いた様に振り返ったかと思うと、再び踵を返して走り出そうとした
。
が、今度は俺がしっかり腕を握っていたのでそれは失敗に終わった。
それからまたお互い無言で、今度は手を繋いで帰りながら隣の咲耶を見れば、耳の先まで赤くして俯いていた。
その様子に、俺の方まで顔が熱くなった。
次回更新予定は5/16です。




