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にせ∞かみ  作者: 和久井 透夏
中二病覚醒編
24/71

#21 神隠し

俺達の前の班が帰ってきていよいよ俺達の班の番がまわって来た。

班に2つの懐中電灯が渡され、前と後ろで分ける事になった。

一つ目の懐中電灯は班長の修司が持ち、もう一つの懐中電灯は名前だけではあるが副班長の俺が持つことになった。

「じゃあ僕は後ろの方を歩くから龍太は前をよろしくね」

俺が先頭かよ・・・。

修司から懐中電灯を受け取ると、早速出発しようとテンションがMAXになった早瀬と中島に後ろから押された。

後ろを見ると修司が咲耶と乃亜と話しながら付いて来ているのが見えた。

今この状況で乃亜と咲耶から離れるのは心配だったが、早瀬と中島に気おされてしぶしぶ前を向いた。


早瀬と中島の二人があんまり楽しそうだったので、歩きながら何でそんなにテンションが高いのか聞いてみた。

「今から行く古河原(こがわら)神社って元々この施設ができる前からあった神社らしいんだけど、すぐ裏に川があるから最初は神社を取り壊してそこに体育ホールとか宿泊施設とか作る予定だったらしいの。だけどなぜか工事中事故が相次いで場所が変更になったらしいのよ」

早瀬がどこから仕入れたのかこれから行く神社について解説すると、中島もそれに付け加える。

「で、神社を壊せないからあえて神社をきれいにして見所の一つみたいな扱いにしたら結構有名になって、今じゃよく肝試しの目玉にされるようになったんだよな」

「そんな話どこから聞いてくるんだよ」

「「菅原先生から」」

俺が尋ねると、早瀬と中島が口をそろえて答えた。

「それたぶん菅原先生の創作だろ」

実際創作かどうかはわからないが、菅原先生は普段からおちゃらけた性格なので二人を喜ばせるために適当にその場で考えたとも言えなくも無かった。

「なによ、高尾君は夢が無いわね」

「それが本当かどうかよりも大切なのは信じる心なんだよ!ロマンなんだよ!」

早瀬と中島は今回の林間学校ですっかり意気投合したらしい。

そして二人にとって怪談はそれが本当がどうかはあまり重要じゃないらしい。


「きゃっ!」

そんな事話していると急に早瀬が悲鳴をあげた。

何かと思って振り向けば早瀬が木に吊るされたこんにゃくを持っていた。

暗くて顔に直撃したらしい。

めがねが汚れたと早瀬がメガネを拭くのを待っていると今度は中島が声を上げた。

「うわっ!」

何かと思って中島の見ているほうを見ると青白い生首が浮かんでいた。

「うおっ!」

ただのマネキンだったのだが俺も一瞬本物に見えて思わず声を上げてしまった。

「なんだよマネキンかよ・・・」

そう呟いた瞬間肩を叩かれ振り向くとガイコツとゾンビの覆面をつけた二人組みが立っていた。


少し驚いたがすぐに脅かし役の先生とわかったので声は出なかった。

先生達は無言だったので俺たちも何を言っていいのかわからず6人ともその場で立ち尽くした。

しばらくの気まずい沈黙の後、

「コワガッテクレテモイインダヨ」

とガイコツの方の人が片言でしゃべったが、この声は新任で2組の担任の小田先生だ。

ゾンビの人は大柄な体格からして3組の担任の佐々木先生だろう。

しかし佐々木先生は何も言わず俺達の来た道の方へスタスタと歩いて行った。

そして俺達から5メートルほど離れた地点で止まると振り向いて、

「じ~ん~じゃ~は~すぐそこだあぁぁぁぁ!!!!!!」

と叫んでこちらに走ってきたので俺達は佐々木先生の勢いに恐れをなしてそのまままで絶叫しながら走った。

想像してみて欲しい。身長190センチはあろうかという筋骨隆々の体育教師が暗闇の中クラウチングスタートで絶叫しながら走ってくる姿を。

誰でも逃げると思う。


そうして何とか俺達は神社にたどり着いた。

お札は境内のお賽銭を入れる場所のすぐ後ろにLEDランタンが置いてあったのですぐ見つけることができた。

俺はお札の方へ駆け寄って「あったぞ」と早瀬達の方を振り向くと、そこには誰もいなかった。

慌ててお札のほうを見ると、お札もLEDランタンも無くなっていた。

何が起こったのか訳がわからなかった。

とりあえず神社の周りを一通り探してみたが誰もいなかった。

同じ班のみんなのイタズラかとも思ったが、それでは神社に一番乗りだった俺の前方にあったお札とLEDランタンがなぜ一瞬で消えたのだろう。

まさか、これは俺が神隠しに遭ってしまったということなのだろうか。

そんな考えが頭をよぎったが、頭を振って気持ちを切り替えて神社を観察してみた。

が、神社の中はさっきと何も変っていない。


携帯を取り出して咲耶や修司、早瀬の携帯にかけてみたが呼び出し音が鳴るばかりで誰も出なかった。

3人とも携帯はテントの中に置いたままにしているのだろうか。

幸い懐中電灯は持っているのでとりあえずさっきの先生に脅かされた地点まで戻ることにした。

ここが異世界なんかでなければ、先生のところまで行けば何とかなるだろう。

俺は神社を出てさっき先生達に脅かされたと思うあたりまで戻った。

しかし、道にはさっき吊るされていたこんにゃくもマネキンも見当たらなかった。

もう片付けてしまったのか、もっと先の方だったか。

俺は急に不安になり、一人でスタート地点を目指して歩きながら、

「誰かいませんかー」

とできるだけ声を張り上げながら林を歩いた。


しかし、行きは10分もかからず神社に着いたはずなのに、30分歩いてもずっと同じような道ばかりでスタート地点にたどり着かない。

そればかりか来るときはいろんな虫の鳴き声がうるさかったのに、今は風も無く俺の声や足音以外には何も聞こえなかった。

立ち止まってみればあたりは完全に無音だった。

俺はいよいよパニックになりただひたすらに道を走った。

途中特に分かれ道も無い一本道だったのに何で帰りだけこんなに時間がかかるんだ!

しばらく走って息切れしてきた頃、林の奥から話し声が聞こえた。

助かった!そう思ってその声のする方に林を掻き分けて

走って行くと、少し開けた場所に出た。

俺はそこに人影を見つけて感極まって声をかけてしまった。

しかし、そこにいたのは全身真っ白な一つ目の人型の妖怪の集団だった。

コイツ等がさっき聞こえた話し声の主だったんだと直感的に理解した。

一つ目の妖怪達は俺の方を一斉に振り向き、みんなゆっくりと俺の方へ歩き出した。

俺の体は金縛りにあったように動かなくなり、逃げ出したいのに全く体が動かせず声も全く出なくなってしまった。


体中に汗が噴き出した。

嫌だ、来るな、来るなよ!心の中でそう叫び続けるが一つ目達は俺の顔を覗き込むように目玉しかない顔を俺に突き出すように寄って来る。

真っ赤な一つ目の目玉がじりじりと近づき、俺の鼻先に触れそうになった時、俺は首根っこをひっぱられ後ろに尻餅をついた。

咲耶かと思い振り返るとそこには20代半ば位に見えるが白髪で色白の和服のイケメンが立っていた。

和服のイケメンは一つ目の妖怪にコイツは間違って迷い込んだだけだから手を出すな、みたいなことを言って一つ目の妖怪たちを追い払ってくれた。

「あの、ありがとうございます」

「いいから急げ、間に合わなくなる」

俺がお礼を言うとイケメンはそう言って俺の手を引いて歩き出した。

するとなぜか1分もしないうちに元の神社に着いた。

「今、元の体に戻すからそこに立て」

イケメンにそういわれ、俺は最初お札とLEDランタンが消えたあたりに立たされた。

そしてイケメンがポン、と柏手を打つと同時に視界がぼやけた。


気がつくと俺は佐々木先生に抱きかかえられていた。

俺が目を覚ますと咲耶と乃亜がそれに気づいたのか俺の方を覗き込んでくる。

早瀬の話によると神社でお札を見つけた時、俺はいきなり倒れたらしい。

すぐに近くにいた早瀬と中島が俺に声をかけたのだが全く反応が無く、コレはヤバイと思った修司が小田先生と佐々木先生を呼びに行ってくれたらしい。

先生達も俺に呼びかけてみたが全く反応が無かったので、佐々木先生が俺を抱えて戻ろうとしてくれていたところだったらしい。

夢を見ていたのかとも思ったが、それにしてはその時の感覚が異様にリアルでとてもただの夢とは思えなかった。

その時ふとさっきあのイケメンが言ってた急がないと間に合わなくなるって、この神社から俺の体が持ち出されたらもう戻れないって事だったんじゃ・・・と思い、背筋が凍った。

もしかしたら俺はあのイケメンに命を救われたのかもしれない。

後から聞いたのだが、俺はあの時みんなと神社ではぐれてから神社で目を覚ますまで体感では一時間近く経っているかと思ったが、実際には俺が倒れてから目を覚ますまで10分程度しか経っていなかったらしい。


その後、俺はみんなに心配されながらスタート地点に戻り、保険の先生に色々と問診を受けたり学年全体から注目を浴びたりとかなり恥ずかしいことになった。

結局先生からは貧血ではないかと言われ、心配なら病院で検査してもらうようにとも言われた。

ついさっき自分の身に起こったことがなんだったのか良くわからなかったが、とにかく誰かに話したくて、ついでに言うと興奮して眠れなくて、俺は夜中こっそり事の顛末をぎっちりと長文メールにしたためて咲耶に送ってみた。

咲耶からは即行で『長い。』という返事が返ってきた。

そう言われて自分が送ったメールを見てみると字が文字制限ギリギリまで書かれていて読みにくい事この上ない。

俺自身コレは読む気が起きなかったので咲耶には謝って、この話は後日直接話すと返信して寝た。

翌日の予定は朝食を作って食べた後はテントなどの片付け位だったので、それが終わると短いオリエンテーションの後はすぐにバスに乗り、学校には12時前に着いた。

学校で解散した帰り道、咲耶が昼食を食べて着替えたら2時に咲耶の家に来るように言ってきた。

昨日のことで直接話したいことがあると言うので、家に帰ったら風呂に入って眠りたかったが、たぶん俺が昨日の夜メールした話のことだろうと思い承諾した。


家に帰ると母さんが学校からの連絡を聞いたようでとても心配していた。

今まで特に大きな病気一つしたことが無かったのでより心配になったのだろう。

今日これから病院にいくかとも聞かれたが特に体に異常は無いし、咲耶との約束もあるので大丈夫だと断っておいた。

それから風呂に入り母さんとそうめんを食べながら親父がいないことに気づいた。

どうやら出かけているらしい。林間学校で色々とあったので話したかったのだが残念だ。

そうめんを食べ終わっても2時まで1時間以上時間があったので、俺は携帯の目覚ましを1時45分にセットして少し寝ることにした。

俺の家から咲耶の家までなら5分もかからない。



白い霧の中、気がつくと俺は昨日肝試しに行った古河原こがわら神社の境内に立っていた。

何気なく振り返ると目の前に昨日の和服のイケメンが立っていた。

「一つ聞きたいことがある」

イケメンがなにやら真剣な面持ちで話す。

「な、なんでしょうか」

「昨日、お前と一緒にいた娘は君とどういう関係なんだ」

昨日あの場に俺と一緒にいた女は3人いたが、直感で乃亜のことだと思った。

雛月が憑依しているとはいえ、やはり霊的な存在にとって鞠亜はそれだけ魅力的なのだろう。

「あの娘といっても、一緒にいた娘は3人いるんですが」

「一番可憐な娘だ」

イケメンは憮然と答える。

やっぱり乃亜のことかと思ったが、ここで乃亜のことを正直に教えてしまうと危険な気がしたので、俺の目が覚めるまで何とか話をはぐらかして有耶無耶にすることにした。

いくら命の恩人といえど鞠亜をおいそれと差し出すわけには行かない。


「・・・・・一番可憐と言われても、俺にとっては3人とも同じように可憐に思えるのですが」

たっぷりと考えるように間を空けてわからないという様子で答えた。

可憐とは可愛らしく守ってあげたくなるようなものを指す言葉だ。

正直あの中で乃亜、というか鞠亜以外はあまり可憐とは思えないがとりあえずそう答えておく。

「あの小柄で髪を二つに結った娘だ」

イケメンが痺れを切らしたように言うが、そこで俺は固まった。

は?乃亜のことじゃなくて?

俺は思わずポカンとしていたが、

「あの娘ははお前の物なのかと聞いている」

とイケメンが言ったところでアラームの音で目が覚めた。


鞠亜じゃなくて咲耶かよ・・・。


俺はしばらくボーっとしながら寝起きの頭でそんなツッコミをした。

とりあえず適当に身支度をして咲耶の家に向かう。

咲耶の家に着きリビングに通されるとそこには鞠亜もいた。

咲耶はさっきまで風呂に入っていたのか、タオル地のワンピースを着て髪が少し湿っていた。

咲耶は俺に麦茶を出しながら昨日肝試しから帰った後何か変わったことはないかと聞いてきた。


早速俺はついさっき見た夢について二人に話した。

「つまり、そいつは龍太に私との仲をとりもってほしいのか?」

「多分、そんな気がする」

俺がそう答えると咲耶はうんざりしたよう俺に聞いた。

「それ、本当に昨日メールに書いてあった和服の男だったのだな?」

「そうだけど、あのメールを全部読んだのか」

「当たり前だろう。そのこともさっき鞠亜と話してたのだ。普段はそういう物は全部鞠亜に来るんだが、なぜ今回は私に来たのか・・・」

咲耶が不思議そうに言う。


「普段そういうのは鞠亜にって、あれは祟りとか呪いと言うより、どっちかって言うとナンパとかそういう類のものに近いような・・・まさか鞠亜に寄って来る悪霊って」

「大部分は鞠亜に求婚したり、契約を結んで鞠亜の魂を自分の物にしようとしている者だが?」

咲耶はしれっと答える。

「は?じゃあ連れて行かれそうになるっていうのは・・・」

「嫁にするために神隠ししたり、魂だけ持っていくとかだな。その場合肉体は死ぬが魂はソイツの元へ拉致される訳だ。たまに単純にエネルギーとしておいしそうだから食いたいみたいな感じで鞠亜の魂に寄って来る奴もいるけどな」

・・・・・昔から鞠亜は可愛かったのでよく変質者の被害に遭っていたが、もしかして鞠亜に寄って来る悪霊ってそれと同じレベルなのか!?


「まさに鞠亜ちゃんマジ天使ハアハアペロペロって感じだよね~」

気がつくと俺のすぐ隣の席に雛月が座っていた。

「実際本物の天使だしな」

咲耶が当然のように相槌を打つ。

咲耶のその言葉に俺は『もう、咲耶ちゃんったら』といつものように鞠亜が照れるのを期待したが、なぜか当の鞠亜は苦笑いを浮かべて目を逸らしていた。

「どうしたんだよ鞠亜?」

「あはは、うん、ええっとね」

なにやら鞠亜は答えに困ったようにまごつく。

「だから前にも言っただろう。鞠亜がよく変な輩に狙われるのは鞠亜の正体、というか魂が天使だからだって」

咲耶は呆れたように言ったが、ますますファンタジーな展開に俺は一瞬思考を停止した。




次回更新予定は10/11です。

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