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にせ∞かみ  作者: 和久井 透夏
中二病覚醒編
21/71

#18 交換日記

学校からの帰り道、俺は鞠亜に空き教室であったことをそのまま鞠亜に話した。

鞠亜は自分の今の状況について、少なくとも俺よりも理解しているようなので、話した方がわざわざ自ら寿命を縮めるような無茶な事はしないだろうと思ったからだ。

「つまり柿芝君も咲耶ちゃんみたいなことができて、その呪術とかの情報を咲耶ちゃんと交換したいから咲耶ちゃんを呼び出したってこと?」

「そうみたいだな」

「そっかぁ、それで咲耶ちゃんはその一年生の子と交換日記を始めること?」

「目的は呪術関係の情報交換らしいけどな」


じゃあしょうがないか~、と鞠亜は笑う。


「でも交換日記かぁ、私だって咲耶ちゃんとしてないのに・・・・」

鞠亜は少し拗ねた様子でそう言いかけて足を止めた。

「そうだよ交換日記、私達も咲耶ちゃんと交換日記すれば良いんだ!龍ちゃん、今からノート買いに行こう!可愛いやつ!」

何が良いのかはわからないが、鞠亜はそう言って踵を返し、文房具屋のある商店街の方へと向かう。

とりあえず俺はそんな鞠亜に着いて行く。


鞠亜は普段は常識的な良い子なのだが、咲耶が絡むと思いもよらない行動に出ることがある。

そもそも、何で鞠亜はそんなにも咲耶のことが好きなんだ?

始めは鞠亜の感情は友情の延長のようなものが恋心に変わったのだと思っていたが、どうも違う気がする。

幼なじみだからとか、いじめから守ってくれたとか、深刻な祟られ体質のことを知っても引かなかったとか、確かに十分理由になりそうだが、それだけだろうか?

それに、咲耶のことを独り占めにしたいと言うのなら、なぜ鞠亜は俺を咲耶との交換日記に誘ったりするんだ?

俺は立ち止まって先を急ごうとする鞠亜の腕をつかんだ。

すると俺に引っ張られる形になり鞠亜も立ち止まり不思議そうな顔で俺を振り返る。


「なあ、どうして鞠亜は咲耶のことが好きなんだ?」


恋の力と言えばそうなのかもしれないが、鞠亜の咲耶への執着は少し異様な気がする。

「え、どうしたの?急に」

鞠亜が俺の顔を見上げる。

「鞠亜は、なんでそんなに咲耶のことが好きなんだ?」


「・・・咲耶ちゃんだけだもの。私を本当の意味で救ってくれるのは」


鞠亜はうつむいてぽつりと呟いた。

「本当の意味で救うって、どういうことだよ?」

「龍ちゃんはさ、なんで咲耶ちゃんが神様になろうとしてるか知ってる?」

鞠亜は咲耶の中二病について何か知っているのだろうか。


「咲耶の中二病に、何か意味があるのかよ」

咲耶が神になろうとしているのは鞠亜のためだとでも言うのだろうか。

「咲耶ちゃんはね、約束してくれたの。何があっても私の味方でいてくれるって、私に寄って来る悪霊なんて皆蹴散らせる位強くなって私を守ってくれるって。だから私も約束したの。私もそのためだったら何でも協力するって」

「・・・鞠亜、それはいつ頃の話なんだ?」

「小学校の終わりごろかな」

それは確か鞠亜の祟られ体質がより深刻になってきた時期だ。

しかし、その頃の咲耶はただ元気なだけが取り得の普通の小学生だったはずだ。

「私の巻き添えで悪霊に当てられて一週間寝込んだすぐ後だったから、もう嫌われちゃったと思ってた。もう一緒に遊んでくれないと思った。でも咲耶ちゃんは私の本当の状態を知って、実際にその被害に遭ってもそう言ってくれて、とっても嬉しかった」

鞠亜の少し目が涙ぐむ。


そして今の咲耶に繋がるのだろうか?

それだけでは説明のつかないことが多々あるが、


「つまり、咲耶が親父の手にも負えなくなった程強くなった悪霊を倒そうとしてて、それができれば鞠亜は助かるってことか?」


「うん、その時はね。でも、その悪霊を倒したところで次がやってくるし、悪霊は雪だるま式に強くなっていくしで咲耶ちゃんががんばってくれても、ちょっと私の寿命が延びるだけじゃないかな」

そう、それでは一時は凌げても、結局鞠亜の祟られ体質の根本的解決にはならない。

「それでも、咲耶ちゃんが私のためにここまでしようとしてくれて、一緒にいてくれるってだけで、私は救われるんだよ」

鞠亜はそう言ってまた目を伏せた。

もし今の鞠亜の話をそのまま信じるとすると、咲耶が神になろうとしているのは鞠亜を守るため。と言う事になるのだろうが、先日の咲耶の話しぶりからすると、咲耶自身はそうは思っていないが気する。

あくまで自分のために鞠亜を利用しているような・・・二人の認識にズレがある気がする。


「まあ、鞠亜が咲耶をものすごく好きなのはわかったけど、それならなんで俺を咲耶との交換日記誘うんだよ?咲耶を独り占めにしたいんだろ?」

「だって、龍ちゃんも咲耶ちゃんが好きだし、龍ちゃんだって咲耶ちゃんと交換日記したいでしょ?でも流石に交換日記3冊は咲耶ちゃんも大変そうだし・・・」

なんだろう、色々気を使ってくれているのだろうが、気の使い方がおかしい。

「いや、俺そういう日記とか苦手だし交換日記は鞠亜と咲耶でやれよ。それに、俺は咲耶のことは嫌いじゃないけど、兄弟みたいな感じで、別に付き合いたいとかそう言う意味では好きじゃないからな」

「え、そうなの?」

鞠亜は随分と驚いたようだった。それならそうともっと早く言ってよと少し怒っていたが、安堵したようなその顔は今日一番の笑顔だった。

そうしてやっと俺はここ数ヶ月に渡る鞠亜の誤解を解く事ができた。

誤解を解いたところでもう鞠亜との進展は望めそうも無いが。

「良かった~これで最有力候補は消えたよ~」

胸をなでおろして言う鞠亜がなんだか大げさに感じた。


「なんで俺が最有力なんだよ、付き合いが長いだけで俺も咲耶もお互い兄弟位にしか思ってねえよ」

「・・・・咲耶ちゃんは、そうは思ってないみたいだけど。もう龍ちゃんは咲耶ちゃんのことそういう風に見てないってわかったから言うけど、咲耶ちゃんは、龍ちゃんのことが好きみたいだよ?」

鞠亜はしれっと答えた。

「いやいやいや、それは鞠亜の贔屓目だろ」

「そう思うならそれで良いけど私がいなくなったら、コレは私のわがままだけど、そしたらその後咲耶ちゃんには幸せになってもらいたいな」

そう言う鞠亜の顔は少し悲しそうだった。

中村さんは咲耶が殺される運命は変えられると言っていたが、鞠亜が死ぬ事に関しては何も言っていなかった。



俺は鞠亜を家に送り届けた後、自分の部屋で今までの経緯や情報をまとめてみることにした。

まず、時期についてだ。

中村さん曰く、遅くとも来年の冬頃には鞠亜が咲耶を殺すことになる。

咲耶曰く、今年の冬から来年の冬にかけて咲耶の死の危険が高まる。

時期も重なってるし、たぶん何か起こるとすればこの時期なのだろう。


また鞠亜曰く、鞠亜に引き寄せられて来た悪霊がどんどん強くなってきている。

もって一年、もしかするともっと早くお守りやお祓いでどうにかできるレベルではなくなって鞠亜に引き寄せられた悪霊に取り殺されるらしい。

もし仮にそれが本当だとして、そのどうしようもなく強い悪霊が出てくるのが今から来年の今頃まで、つまり来年の夏ごろまで。

今年の冬から来年の夏まで、咲耶の死の危険が高まる時期とも重なる。

まあどちらも本人達の自称で確証があるわけではないから、多少前後するかもしれないが。


咲耶は、ある時期までに力をつけないと消されると言っていた。

それはつまり、鞠亜に憑いた悪霊にとばっちりで殺されると言う事じゃないのか?

その場合、咲耶も鞠亜もその悪霊に殺されることになる。

鞠亜が咲耶を殺すと言うのは、鞠亜に引き寄せられてきた悪霊のせいで咲耶も殺されるということを指しているのではないか。


咲耶が雛月に餌を与えて強くしようとしているのも、その悪霊が襲ってきても倒せるようになるためなのだろう。

コレは仮定というより妄想だが、霊的な存在を取り込んで強くなる雛月なら、鞠亜に引き寄せられてきた悪霊も取り込めるようになれば、雪だるま式に強くなれる。つまり同じく雪だるま式に強くなっていく悪霊が相手でも来ても対処できるようになる。

そんな永久機関みたいな物を咲耶は作ろうとしているんじゃないだろうか。

そうすれば、鞠亜も守れて、雛月も強くなる。

雛月の力が強くなれば、それだけ咲耶のできることも広がってより神に近づけるのではないだろうか。

強くなった雛月と完全に意識を共有して操れるのなら、雛月の力はそのまま咲耶の力になるだろう。


ただ、気になるのは今日会った柿芝だ。


コイツは今日あっさりと咲耶からの干渉を跳ね返した。

咲耶の様子からして今日が初対面ではあったが、波長は完全に憶えたと言っていたし、どうやって探し出したのかは知らないが、手紙を貰ったあたりかそれ以前から柿芝悠人に目星をつけて雛月に監視でもさせていたのだろう。

それでも簡単に咲耶の干渉を防いでしまうのだから、コイツも何か特殊な人間なのかもしれない。

いや、それもあるかもしれないが、咲耶の他人への干渉と言うのも実は結構穴だらけの代物なのかもしれない。


柿芝は咲耶が波長を自分のものに合わせようとしてきたので、自分の波長をずらして咲耶の干渉を防いだと言っていた。

咲耶も廃屋で自分の元の波長だと黒い影は見えないのに、俺の波長に合わせると見えると言っていた。

もしかしたら波長のコントロールと言うのは案外誰でも訓練すればできるようになるものなのかもしれない。


それに、咲耶の波長その物を指定して咲耶からの干渉をはじくこともできるらしい。


しかしそれでは中村さんの言っていた他にもいる咲耶と同レベルの神人達を咲耶の干渉の支配下に置くと言うのは随分と難しいことのように思える。

だからこそ中村さんと千里眼の人を先に咲耶の干渉の支配下に置いて、神人も気づかないうちに支配してしまおう。ということなのだろうが、今のところ中村さん達が咲耶に接触したような様子は無い。

何か今咲耶と接触して都合の悪いことでもあるのだろうか?

それに、咲耶を道徳心溢れる人間に教育すると言っていたがそれはどういうことを指すのだろう?

咲耶は中村さんを信用できないと言っていたが、それは咲耶から見て中村さんの話に何かおかしなことを感じたのかもしれない。


「何うんうん唸ってるの?」

すぐ後ろで聞こえた声に振り向くとそこには雛月が立っていた。

「いつものことだけど勝手に入ってくるなよ。この前も、俺と親父が話してたのを姿消して聞いてたみたいだけど、俺にプライバシーは無いのかよ」

もう慣れつつある自分が恐いが、一応文句は言っておく。

何をするにも雛月に監視されているかもしれないと考えるのは正直疲れる。

というか色々とくつろげない。

「姿消して監視するのは咲耶に指示さてた時しかやらないし、龍太の部屋に来る時はいつも姿を現してるもん。それに勝手に入ってくるなって、ドアをノックすればいいの?突き抜けるんだけど、ていうか龍太の部屋襖じゃん」

不服そうに雛月が言う。


「とりあえず入る前に声かけろよ。突き抜けるって、この前咲耶がやったみたいに感覚を伴わせて触るとかできないのかよ?」


「アレはあくまで相手の脳に直接働きかけて、幻覚に感覚を伴わせてるだけだから実際に触れてた訳じゃないし、元の感覚は全部咲耶から出力してるから、私がアレをやろうと思った場合、咲耶と完全に意識を共有しないとできないの。あれって結構消耗するらしくて咲耶も滅多にやりたがらないよ」

雛月はそう言って肩をすくめる。

「でもこの前の廃屋の時はあんなリアルな幻覚見せた後に雛月派遣して電話してくるくらい元気だったじゃないか」

「アレは幻覚を見せてた主が幽体離脱した状態の咲耶だったからだよ。そっちの方が私と意識を共有するより大分楽みたい。この前の廃屋でのことはその実験ってこと。私には触った感覚とかわからないから、私が感覚を伴う幻覚を見せようとする時は咲耶と意識を共有しないといけないの」

「意識を共有するって、そんなに疲れるものなのか?」

「そうみたい。特に餌場ができて私がハッキリ姿を出せるようになったあたりからかなりしんどくなって来たらしいよ」

それってかなりマズくないか?もしこれから雛月がどんどん強くなっていったとして、咲耶が雛月と意識を共有できないのなら誰が雛月をコントロールできるんだ?


「咲耶はできることはいっぱいあるけど、実際にできることには限界があるんだ。ほら、誰でも聖徳太子みたいに一度に十人の話を聞ける訳じゃないでしょ?そんな感じで、一度にできることには限界があるの。だから咲耶の普段の負担を減らすために私もほとんど放任みたいな感じなんだ。で、私も今みたいに自由に歩き回れるのよ」

「じゃあ咲耶が一度に干渉できる人間にも限度があるのか?」

「うん。干渉の度合いによっても変わるけど、一度に干渉できる人数はそんなに多くないよ。だからあの中村とか言う人のことはあまり現実的じゃないと思う」

恐らく世界中の人間を咲耶の干渉の支配下に置こうとしていることを言っているのだろう。

「何か咲耶の代わりに色々な計算とか感覚の共有とかできる人がいれば変わるんだろうけど、人間じゃ大体咲耶と同じくらいの計算能力くらいしか割けないし、そのために他の人間と高いレベルでの意識の共有をしてたらその人一人分で咲耶はいっぱいいっぱいだし。何より意識を共有する分相手の思考にも少なからず引っ張られちゃうだろうし、コレも現実的じゃないよ」

つまり、今のところ咲耶はせいぜい身近な人間にリアルな幻覚を見せるぐらいしかできないってことか。


「なあ、もしその他人への干渉ってのを咲耶じゃなくて雛月が代行してやったらどうなんだ?感覚の情報だけ咲耶から借りるとして」


ポロッと俺の口からこぼれた言葉に雛月が反応した。

「・・・私が主導してかぁ、考えた事なかったけど、もしやるとしたら・・・・・」

そう言って雛月は考え込んでしまった。

その瞬間、先日親父の主導権が完全に咲耶から雛月に移ってしまった場合の話を思い出して、一気に血の気が引いた。

もしかしたら、俺は今とてもマズイことを雛月に吹き込んでしまったのかもしれない。


「今は無理だけど、もっと力を蓄えたら・・・」


雛月がボソッと呟くのを聞いて暑さではない汗が流れたような気がした。

次回更新予定は9/20です。

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