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にせ∞かみ  作者: 和久井 透夏
中二病覚醒編
15/71

#12 告白

中村さんとの電話を切った後、小腹がすいて一階で檀家さんからの差し入れの品を物色していると呼び鈴が鳴った。


玄関へ出てみるとそこには修司と咲耶がいた。

「突然だけど、今日成美君を泊めてあげてよ」


・・・・・ニコニコしたその笑い方とその口調はまさか雛月か??

いやでも仮にそうだとすると、修司には視えてるのか?


一方、修司のほうを見ると申し訳なさそうにしている。

服は制服のままで手ぶらだったので、何か理由があるのかもしれないと思った。

とりあえず俺は目の前の二人を観察してみる。

当たり前のように修司が隣のコイツと接しているところを見ると、修司には雛月、もしくは咲耶が普通に視えていて咲耶と思っているようだ。

とりあえず二人に上がるように促して客間に連れて行くと、貰いものの煎餅と缶ジュースを箱ごと出してちょっと待っててくれと言って親父を探した。


親父は境内の掃除をしているところをすぐに見つけた。

俺は親父に駆け寄ると小声で親父に話しかけた。

「さっき雛月が修司を連れてきて今日、修司を泊めてくれるように頼んできた。修司の方も雛月が普通に視えてるみたいで、咲耶だと思ってる。咲耶かもしれないけど、あれは雛月のような気がする」

親父は眉をひそめたが、そうか、と頷くとすぐに二人のところに案内するように言ったので、そのまま二人で客間に向かった。


客間に着くとさっきと変わらず二人は座っていたが、雛月の前に置かれている缶ジュースが全く手付かずなのを見て、やはりこいつは雛月だと確信した。

二人に出したのは咲耶が昔から大好きだったメーカーのトマトジュースだったからだ。

咲耶ならこのトマトジュースが今回みたいに箱ごと出された場合、平気で2~3本空ける。

修司は咲耶がトマトジュースを好きなことは知らないし、雛月が飲食はおろか、物や人に触れることができないことも知らない。

修司としては「ああ、トマトジュースが嫌いなんだな」位にしか思わないだろう。


俺には修司に気づかれること無く、そこに座っているのが雛月なのか咲耶なのか判るというわけだ。

俺は親父に「雛月で間違いない」と囁き、雛月の前の座布団に座った。


初め、いきなり親父が出てきたことに修司は少し緊張したようだったが、親父は当たり前のように二人を歓迎してどうでもいいような世間話をし始めたので、しばらく話しているうちに緊張もほぐれたようだった。

話をふって修司や雛月の反応を見ると、やっぱり修司は雛月を咲耶だと思っているようだ。

しばらく話した後、親父が修司に尋ねた。

「それで、龍太から聞いたんだが、今日成美君を泊めるのは全然かまわないんだけど、よければ理由を教えてくれないかな?」


「・・・・・実は」


少し黙った後、修司は自分の家族について話し出した。

小さい時から修司が興味を持った事はなんでもやらせてくれたこと、転校は多かったけど両親とも修司の希望を尊重してくれたこと。

今回転勤の話が出たとき、両親は修司の高校受験のことを考えて、修司の父さんが単身赴任するという話も出たらしい。

しかし修司としては、今までどこに引っ越してもずっと一緒に居た家族がバラバラになるのが嫌で、今回も父親の転勤に合わせて転校するつもりだったらしい。

ところが今日たまたま両親の若い頃の写真を見てしまった。

そこには両親と仲良さげな自分と似ている金髪の男が写っていて、リビングに飾ってある家族写真の裏側から例の金髪の男と若い頃の母親の写真が出てきた。

血液型が両親とも違うし、自分が実は父親の本当の子供ではないのではないかと思ったら、自分の家族は偽物だと言われたような気がして、急に仲のいい両親も過保護な母親もやたら寮生活や留学を進めてきていた父親も、すべて偽物のような気がして、気持ち悪くなって家を飛び出したらしい。

修司はもちろん母が過保護なのも、父がいろんな進路を勧めるのも自分のためを思ってやってくれていることなのはわかっていると言っていた。



・・・気持ちを整理したいので今は時間が欲しい。



そう搾り出すように告白する修司に俺は何も言えなかった。


修司の悩みは想像以上に重い物で、中村さんの言っていた友達からの衝撃の告白というのはもしかしたらこっちのことを言っていたのかもしれない。

そんな事を俺はぼんやりと思った。

親父はそれは大変だっただろうと言いつつ

「ところで成美君のお母さんは今は専業主婦かな?」

と修司に尋ねた。

「はい、もう家にいると思います」

「携帯は今持っているかな、持っていたら電源は入っているかい?」

親父にそう言われ修司は携帯の電源を入れた。

「うわ、母さんから着信が20件近くきてる、あ、父さんからも何件かきてる」

「修司君の両親の若い頃のことはわからないけど、少なくとも修司君の両親は修司君のことを偽物の家族だなんて思ってないと思うよ。でないとこんなに電話をかけてきたりしないよ。心配しているだろうから連絡くらいは入れてあげよう。今は話したくないならこっちで電話をかけるけど・・・」

「いえ、自分で電話かけます」

親父の言葉を遮り、修司は縁側の方まで出て行き電話をかけに言った。


そうして、部屋には俺と親父と雛月が残った。

「・・・で、おまえは雛月でいいんだな?」

俺がそうきけば雛月は嬉しそうに

「あ、わかる?」

と肯定した。

「何がしたいんだ、お前」

「何って、成美君が橋の上とか土手で落ち込んでるみたいだったから、話きいてあげただけだけど」

「・・・まさかお前、昨日も修司と話したのか」

そう言うと今度はニヤニヤと笑いながら

「そうだけど、あ、もしかしてそれ嫉妬?」

と言ってくる。

「ちげーよ!」

と言い返しながら親父の方を見ると、考え込むように腕を組んでいた。


「雛月ちゃんは龍太のこと好きかい?」

いきなり何を言い出すんだ親父

「うん好きー」

そしてニコニコと答える雛月。

「・・・嬉しくない」

思わずぼそっと呟くと雛月は気を悪くしたらしく、

「なによ、別に龍太じゃなくても私には咲耶がいるんだからね!それに最近じゃ同じクラスだったり、咲耶と元々交友があった人くらいなら、さっきみたいに普通に話せるようになったんだからね!」

雛月は拗ねた様子でむくれながらそう言い出した。


その言葉に俺達は凍りついた。

え、今なんて言った?


『咲耶と元々交友があった人くらいなら、さっきみたいに普通に話せるようになった』


どういうことかきこうとした時には、雛月は居なくなってしまっていた。

「マズイ、思ったよりも早いな・・・」

親父がそう呟いたのが聞こえた。


結局その日、修司は俺の家に泊まることになった。

電話をして帰ってきた修司の顔は複雑そうな顔だったが、

「明日は父さんもいるから家族3人で話し合うことになったよ」

と言っていた修司の顔は、家に来たばかりのときよりもいくらかやわらかい物だった。


その後は夕食を食べて風呂に順番に入って、寝るまでの時間は一緒にゲームをやったりして過ごした。

着替えの服は俺のを貸した。

親父はまた誰かに電話をかけているようだったが、今日は随分と長電話をしているようだった。

どこにかけているかは大体予想は付いたが、一度飲み物を取りに下に降りた時、

「お前にも話しておこうと思ってな、ああ輝美には俺からもう話しておいた」

とか言っていたので、咲耶の母さんや他の人にもかけているようだった。

・・・そういえば親父からも修司の家に電話をかけるとも言っていた。


大人は大人で大変だな・・・。


部屋に戻ると修司はアクションゲームに夢中になっていた。

「あ、そこの敵全部倒すとトラップ発動してギロチン落ちてくるぞ」

「え、ギロチンってどこ・・・うわっ!死んだ!」

今のは初見殺しすぎるよ!と言いながらも修司はリプレイを選択した。


あれから特に修司と家の話はしていない。

修司からしてこないのなら、無理に聞くのも良くないだろうと思ったからだ。

「龍太、そういえばさっき携帯鳴ってたよ」

修司の言葉を聞いて携帯を見ると早瀬からメールが来ていた。


この前行った廃墟、ネットで調べてみたら既に行ってみた人達の話が結構出てきたよ。

肝試しに行った人の中には、私みたいに変な黒い影が付いて来たって人もいるみたい。

黒い影が付いてきたって人の中には、肝試し行ってから体調を崩したり事故にあったりする人も結構いるみたい。

その後、お祓いに行って何とかなったとか、塩とかファーブリーゼで追い払えたとかいう話もあったけど・・・。


・・・俺にどうしろって言うんだ。


「鈴木さんから?」

ゲームを続けながら修司が尋ねてきた。

「いや、ただのメルマガだった」

なんとなく、早瀬からのメールについてはごまかしたかった。。

「そっか、それにしても龍太ってホント鈴木さんや天野さんと仲いいよね」

「まあ幼なじみだしな」

「いいなあ、幼なじみ。僕兄弟とか居ないし、転校多かったから小さい頃から知ってる同世代の子って居ないんだよね」

修司の顔は見えなかったので表情はわからなかったが、その声は少しさびしそうに聞こえた。

「どうしたんだよ急に」

「今回の時みたいにさ、困った時すぐに頼れる相手がいたり、小さい頃から家族ぐるみでの付き合いがあってそれがずっと続いてるって結構すごいことだな~と思って」

鞠亜はともかく、俺と咲耶の場合は親同士も長い付き合いで縁を切りたくても切れないだけなのだが。

「今まで何度も転校して、友達と仲良くなっても引っ越して、人間関係が全部リセットされて、でもまたすぐに新しい友達はできたしそれで良いと思ってたけど、龍太達みたいにお互い遠慮しないで取り繕ったりもしないで、当たり前のようにお互い支えあってるのってなんだか羨ましいなって、思ったんだ」

隣の芝は青いというか、それはいろいろと美化しすぎだろう。

「俺は修司みたいに、誰とでも仲良くできる方が羨ましいよ」


実際俺が中学に入って新しくできた友達は修司を入れて2人だしな。


「そんなものかな、でもそこまで親密な付き合いのできる友達がいるっのて羨ましいよ」

あまりにも修司の物言いが他人事みたいなので、少し腹が立って

「何言ってんだよ、その親密な付き合いの基準が困った時すぐに頼れる相手っていうんなら、修司だって今日家出してうちに泊まってるんだからもうそうだろ?」

と言ってみた。


「・・・それもそうだね」


なんだ今の間。

相変わらず修司はゲームしてて表情は分からなかったが、もしかしなくても滑ったと思われるその後の沈黙に、俺は恥ずかしさで内心のた打ち回っていた。


その後、寝る部屋は客間を用意すると言った時

「鈴木さんや天野さんは泊まりに来た時はその部屋で寝てたの?」

と聞くのでそうだと答えると、

「二人がつい先週寝た部屋で、同じ布団で寝るなんてそこであった事を考えると興奮して寝られないよ!」

とか言い出すので

「何もねえよ!」

としばいておいた。

が、客用の布団は余ってるので俺の部屋に別の布団を敷いて寝てもらうことにした。

布団を俺のベッドの横に敷いていると

「なんだか修学旅行みたいだね」

と修司は笑った。

そんな修司を見て、鞠亜と咲耶が小学校低学年の時は一緒に布団敷いて雑魚寝していた事を思い出した。


次の日の朝、朝食に起きたらなぜか中村さんが一緒に食事を取っていた。

今朝の始発で東京から来たらしい

修司には親父の古い知り合いと中村さんを紹介していた。

朝食を食べ終わると修司は身支度を始め、10時前には家を出て行った。

俺と親父は寺の前の門まで修司を見送りに行った。

「今回はお世話になりました。また今度、改めてお礼に伺いたいと思います」

修司は深々と頭を下げた。

「ああ、また何か有っても無くても、いつでもおいで」

親父はいつも咲耶や鞠亜を送り出す時みたいにニコニコと笑っていた。

「あんまり自分一人で抱え込むなよ」

俺がそういうと

「うんありがとう」

と言って修司は家に帰って行った。



俺達は修司を送り出した後、お互い無言のまま客間に向かった。

客間に行くと、中村さんが当然のようにお茶を飲みながら待っていた。

「やあ、お帰り」

にこやかに中村さんが迎える

「それでどうだった?」

親父は中村さんと向かいの席に着きながら尋ねた。俺も親父の隣に腰を下ろす。

「ばっちり咲耶ちゃんの干渉受けていたね。しかも咲耶ちゃんと交友があった人間なら大体同じように干渉できるなんて、こっちの想像以上に成長が早いよ」

「やっぱりか・・・」


・・・干渉?


「干渉って何だよ?」

俺が尋ねると中村さんはこんなに成長が早いなら、もう龍太君にもある程度説明しておいた方がいいよね。

と親父と話して『咲耶の干渉』とやらについて話し始めた。

「雛月ちゃんがそこにいるように視えるってのはね、起きながら現実に重ねて夢を見ているようなものなんだよ。雛月ちゃんが普通の人と変わらないように視えるってことは、それだけ脳が咲耶ちゃんからの干渉を受けているって事なんだ」

は?俺達の脳が咲耶からの干渉を受けている?

「それって、結構ヤバいんじゃ・・・」

「実際結構危ない状態だよ。つまり咲耶ちゃんの親しい人ならみんな、咲耶ちゃんの思い通りの幻覚が見せられるってことなんだから」


なんだよ、そのマンガみたいな能力。


「でも中村さん、咲耶と初対面の時から雛月のこと視えてましたよね?」

「直接には視えてないよ。視えてる人達の意識を通して視ていただけだから」


この人もなかなかにマンガみたいな能力の持ち主だな・・・


「恐ろしいのはこの能力がこのまま成長していくと簡単に人を操る事も殺す事もできるようになるってことだよ」

「・・・どういうことですか?」

「簡単だよ、咲耶ちゃんがこの力に磨きをかけて、雛月ちゃん以外の幻覚も見せられるようになったら?たとえば、周りの人が自分の悪口を言っている、隣の人間が毎晩壁を叩いて脅してくる。そう思い込ませて相手を精神的に追い詰める事だってできる。ビルの上を地上だと錯覚させて、柵を飛び越えて向こう側に行こうとするような状況を作る事だってできる。それに、そんなことしなくても人は思い込みだけで死ねるんだよ。ノーシーボ効果って知っているかい?」

「ノーシーボ効果?」

プラシーボ効果なら知っているが、それと関係あるのだろうか?

「簡単に言えば悪い思い込みだけで体調を崩したり、酷い時は死んでしまったりするものだよ。つまり、思い込みで体調が良くなったりするプラシーボ効果の逆だよ」

「夢で殴られるとホントに痛い、みたいなもんですか?」

俺がそう尋ねると中村さんはお茶をすすりながら答えた。


「そうだね。それの強烈なものが現実で起こる。と考えてくれればいいよ」


そこまで聞いて、とりあえず俺はさっきから気になっていたことをきいてみた。

「あの、咲耶が今とんでもない物になりそうなことは解りましたけど、それと鞠亜が咲耶を殺すって言うのとどういう関係が有るんですか?それより先に咲耶の方をなんとかした方が良いんじゃないですか?」

中村さんは湯のみを置くと真剣な顔をした。

「関係大有りだよ。僕達が心配しているのは咲耶ちゃんが殺されたその後のことなんだ。もし鞠亜ちゃんが咲耶ちゃんを殺してしまった場合、雛月ちゃんはどうなると思う?」

「そんなの、元は咲耶の妄想なんだから消えるんじゃないんですか?」

何でそんな事を聞くのだろう、そんな疑問が浮かんだ。


「それが彼女の中だけの妄想ならね。でも健さんからの話から推測するともう既に多くの人が咲耶ちゃんと勘違いしているとはいえ、雛月ちゃんという妄想を共有しているんじゃないかな?」

「・・・つまり咲耶が死んでも、雛月は消えない?」

「それどころか、今まで彼女を支配して制御してきた咲耶ちゃんが居なくなったとき、雛月ちゃんは自由に自分の力を行使する事ができるようになる。認識できる人間の数も、既に認識している人間の交友関係を辿っていけば爆発的に増える事になるだろう。そうして認識できる人間が増えていけばそれだけ彼女の存在がより強固なものになるだろう」

なんだよそれ、話が飛躍しすぎだろう、もし中村さんの話がそのまま現実になったとしたら・・・。


「・・・・まさかそうなった時、雛月は神になるとでも言うんですか?」


「少なくとも、彼女を認識している人達の知覚している世界は雛月ちゃんが支配する事になるから、その人達に対してはそうなるだろうね」


中村さんの言葉に俺は息を飲んだ。




次回更新予定は8/9です。

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