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にせ∞かみ  作者: 和久井 透夏
中二病覚醒編
10/71

#7 こっくりさん

咲耶がふざけた方法で能面さんを雛月の餌にした翌日、俺と鞠亜と咲耶は早瀬に校舎裏に呼び出されていた。

「それで、能面さんはどうなった?」

早瀬が不安そうな顔で俺の顔を覗き込んできた。

「ああ、たぶんもう大丈夫だと思う・・・」

俺が煮え切らない態度でそう答えると

「大丈夫って、能面さんはどうなったの?」

早瀬は不安そうな顔で聞いてきた。

「餌になったらしいわよ」

するとそこに咲耶が割って入ってきた。


「餌って何?高尾君の寺と何か関係があるの?」

早瀬が質問すると

「さあ、私は鞠亜にきいただけだから」

そう言って咲耶は鞠亜のほうを見た。

俺は何か嫌な予感を感じた。

「ごめんね、私にも何が起こったのかよくわからないの。ただ、夢の中で能面さんが何かに食べられているような夢をみて、目が覚めたらすごく体が軽くなってただけだから・・・」

鞠亜は鞠亜で咲耶に話をあわせているように思えた。

「龍太って昔からこういう怪談みたいな事が起こったとき、大体なんとかしてくれるのよね~」

お前は何を言っているんだと思わず咲耶の方を振り向けば、そこには満面の笑みを浮かべた咲耶が立っていた。

あ、この顔はこの後何かやらかす時の顔だ。幼なじみとしての俺のカンがそう告げた。


「その辺をきいてもいつもはぐらかされるんだけど、やっぱり寺生まれだしそれなりの対処方法を知ってるんじゃないかしら?」

なんだその寺生まれに対する偏見。

親父はともかく、俺はせいぜいお経を暗記してるくらいだぞ。

ゆくゆくは親父のようになりたいとは思っているが。

「やっぱりそうなの!?」

咲耶の言葉を聞いて、早瀬の目が輝きだした。

話の流れがヤバイと思い、話の流れを戻す意味で俺は早瀬の両肩をつかみ

「とにかく、一応大丈夫だと思うけど完全に能面さんが消えたかもうしばらく待ってみよう」

と力いっぱい様子見を促した。

早瀬は俺の勢いに押されたのか小さく返事をした。


早瀬と別れた後、何であんな事を言ったのかと咲耶を問いただせば

「今はまだ正体がばれる訳にはいかない。それに、夢の内容をそのまま話したところで、オルカが納得して安心できると思うのか?」

前半の言葉はもうスルーするとして、後半の内容に関しては同感だった。

昨日の早瀬の取り乱しようを思い出した。

夢の中で咲耶が格ゲーの必殺技で能面さんをフルボッコにして自分の分身に食べさせてたなんて言ってもただ愉快な夢を見たとしか思えないし、あんな状態でそんな事を言われても安心できるとは思えない。

しかし、夢から覚めた後、もう能面さんは誰の夢にも現れないだろうという妙な確信もあった。

なんというか、消えてしまったのだ。今まで能面さんの夢を見てからずっとあったずっしりと重い空気が・・・。


早瀬は能面さんの呪いはもう大丈夫だろう言った次の日からケロッとしていた。

一応、鞠亜にその後能面さんの夢は見てないかきいていたようだが、昨日までの怯え様が嘘のようだった。

そして前よりも鞠亜や咲耶と一緒に居るのをよく見かけるようになった。

特に咲耶は早瀬のオカルト話に目を輝かせていた。

一週間後には完全にもう大丈夫だろうと踏んだのか

「この前はありがとう、あの後特に何も起こらなかったし、今度何かお礼するね!そうだ、デートしようよ夜の2時に裏山の廃屋で」

裏山の廃屋と言うのは、なにやら出るらしいとこの前早瀬が言っていた場所だ。

つまり冗談でも肝試しに誘ってくるくらいには回復していた。


その日の帰り、いつものように俺と鞠亜と咲耶の3人で帰っていると

咲耶がなにやら深刻そうな顔で言い出した。

「龍太、大事な話がある」

いつになく真剣な顔なので何かと思って次の言葉を待っていると

「必殺技、どれがいいと思う?」

そう言ってメモを出してきた。メモにはなにやら技名のようなものが書いてある。

「意味が解らないんだが」

呆れてそう言うとすかさず咲耶が答える

「あれからずっと悩んでいたんだ。この私がいつまでもゲームのキャラの技を真似ていていいのかと・・・ここはやはりオリジナルの必殺技を持つべきだと思う!いくつか考えてみたんだが、どれがかっこいいとおもう?」

俺は久しぶりの咲耶の中二病イベントに若干げんなりしつつメモを見た。

まともに相手しても疲れるだけなので適当に決めることにしたのだ。

メモには中二病臭い技名がずらりと並んでいたがとりあえず一番上に書いてあった名前を指してみた。

「これでいいんじゃないか?」

「そうかこれか・・・」

咲耶はそれを見ながらぶつぶつと独り言を言っていた。

「咲耶ちゃんね、今日ずっとそれ考えてたんだよ」

鞠亜がニコニコしながら話す。

そういえば珍しく休み時間も机に向かって何かしていると思えば・・・チラッと咲耶のほうを見ればまだぶつぶつ言って自分の世界に入っていた。


次の日の放課後、俺と鞠亜は咲耶に教室で待っているように言われた。

絶対また何か変なことをするつもりなんだろうと思って鞠亜と待っていたが咲耶はなかなか帰ってこなかった。

その間鞠亜と二人きりになったのだが、俺は延々と鞠亜の咲耶ちゃん語りをきくハメになっていた。

主な内容は早瀬と仲良くなってから町の心霊スポットだとか霊道だとかの話をよくしているとか、最近は放課後用事があるとかでなかなかかまってもらえないとかだ。

結局咲耶大きい紙袋を持って帰ってきたのは部活の無い生徒はほとんど下校したのではないかと思える頃だった。

当の咲耶は悪びれもせず

「どっちにしろ人がいなくなるまでは何もできないのだからちょうどいいだろう」

などと言いながら紙袋の中から酒やら習字セットやらを出していた。

「また何か変な儀式でもするのかよ」

と俺が問えば咲耶は作業の手を止めず、にやりと笑って

「オルカから本格的なこっくりさんのやり方をきいたので実践してみようと思ってな」

などと言い出すので文句を言おうとしたが

「こっくりさん!?私小学校の頃からずっと憧れてたの!でも私の体質の事考えると危ないから絶対できないと思ってたけど、この前の能面さんのこともあるし、龍ちゃんと咲耶ちゃんが居るなら大丈夫だよね!」

鞠亜はとても目を輝かせていた。そういえば小学校の高学年の時一部の女子達の間で流行っていた。

その話をきいた親父は絶対にやらないようにと俺たちにきつく言い聞かせていたのだが、内心鞠亜はやってみたかったのだろう。


「さて、鞠亜はやりたいようだがどうする?龍太がどうしてもやりたくないのなら変わりに今からオルカを誘ってもいいわけだが、参加するか?」

こいつ、特に理由も告げず俺たちを教室に残していたのはこのためか・・・

ニヤニヤと笑う咲耶に軽く殺意を覚えつつ俺はポケットの中の塩を確認した。

よし、ちゃんとある。

「ああもう解ったよ、やるよ」

「ホント?ありがとう龍ちゃん」

しかたなしに返事をすれば鞠亜がものすごい笑顔でお礼を言ってきた。

かわいい。

「では二人とも準備終がわるまでに質問を考えておくのだぞ」


このこっくりさんには墨汁に参加者のつばを混ぜたもので半紙に表を書くらしい。

部屋を閉め切ったり清めたお酒を使うなど確かに本格的な感じがした。

そして何に使うのか咲耶の横には蝋燭とお墓参りに使うような線香の束があった。

表を下敷きで扇いで乾かしながら咲耶が言った。

「蝋燭に火をつけたらこっくりさんを呼び出す。もしこっくりさんを呼んでいる時に何かあっても絶対に十円玉から指を離さないように。あと、こっくりさんの言う事は、話半分くらいにきいてくこと」

俺はその時何か違和感を感じたが、黙っていた。


半紙が乾くと早速俺たちは蝋燭に火をつけ、表の上の鳥居のマークの上に十円玉を乗せ、右手のひとさし指を乗せた。

「「「こっくりさんこっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」」」

十円玉がすーっと『はい』の方に動いた。

それから俺たちはしばらくこっくりさんへの順番に質問をしていった。

質問が三巡くらいしたとき、案の定急に教室の空気が急に重くなり、十円玉が狂ったようにものすごい速さで動き出した。


 からだがほしいからだがほしい


とさしながら十円玉が動き回る。

こうなることはうすうす予感していたが、いざなってみるとやっぱり恐怖心のほうが勝った。


「おい、どうするんだよこれ・・・」


そう言いかけて咲耶の方を見ると、机の上に立てた蝋燭で左手の線香の束に火をつけて消そうとしていたが思いの外、火が強かったのか振るだけでは消えず最終的には息を吹きかけて消していた。


バカだこいつ・・・。


咲耶はそんな俺の呆れた視線も意に介せず、左手で持った線香の煙を表の上に持ってきた。

そんな作法もまったくなっていないもので祓えるわけ無いだろうと怒鳴りそうになった時、鞠亜が小さく悲鳴を上げた。

「何あれ・・・」

鞠亜の視線の先を追ってみるとたなびく線香の煙の中にぼんやりと人の顔のようなものが浮かんだ。

それは頭だけの姿で蛙みたいな顔にたるんだ皮膚が気持ち悪かった。

そしてそいつは明らかに鞠亜を見て薄気味悪い笑みを浮かべていた。

その間も十円玉はせわしなく動いていた。


「龍太、塩!」


俺が呆然としていると咲耶が俺に怒鳴りつけた。

俺は急いでポケットに左手を突っ込み、紙の小袋に入っている塩を出し、そいつに振りかけた。

塩が降りかかるとそいつはジュウジュウと音を立てて蒸気を上げながら顔が塩のかかった部分から溶けていった。

しかし溶けたのは半分くらいで顔の大部分が焼け爛れたようになったそいつは俺に飛び掛ってきた。

やられる!そう思って目をつぶった時、咲耶の方から怒鳴るような声が聞こえた。


「無制限混沌の歌( アンリミテッド カオス スクリーム)!!!」


それは昨日咲耶に言われて適当に薦めた必殺技の名前だった。

急に今までものすごい速さで動いていた十円玉の動きが止まった。

目を開けると床にさっきの生首が転がっていた。

そしてぼんやりとだがそこに佇む人影が見えた。

「雛月、たんとお食べ」

咲耶はニヤリと笑って、人影に向かって話しかけているようだった。

人影は生首に抱きつくとそのまま生首を吸収していった。

生首が完全に吸収される頃には教室の空気も元に戻っていた。


・・・そして人影は咲耶とうり二つの少女へと変貌していく。


「二人とも、もう手を離してもいいわよ」

咲耶のその声を聞くと鞠亜は安心したのかそのままへたり込んでしまった。

俺は咲耶に色々と言いたいことはあったが一度小さく深呼吸して、今一番きくべき事をきくことにした。

「咲耶、雛月って何だ」

自分でもびっくりするくらい声が怒っている・・・。

「私の分身だ」

咲耶は今まで何度も言ってきた答えを返してくる。

「その分身でお前は何がしたいんだ」

「あるべき力を取り戻す」

「それを取り戻してどうするんだよ」

「神の座に返り咲く」

「神になってどうするつもりだよ。世界征服でもしようってのかよ」

「元々私のものだ。私が私として生まれた時点でこの世界は最初から私のものだった」

咲耶はいつもの調子で答えてくる。

「・・・・・・」

いつもはそのまま受け流していたが、実際に霊的な物を取り込んで存在感を増してきている雛月を目の前にするとこのまま放っておけないような気がした。

「今までもこれからもこの世界は私のものだ。それに何の問題がある」

咲耶は何を言っているんだ。。。

咲耶の言葉の意味が俺には理解できなかった。

「そういう中二病な妄想はどうだっていいんだよ!俺がききたいのはどうして雛月が夢だけでなく現実の世界にも出てくるのか、あの生首食った後、前よりはっきり見えるのかってことだ!」


俺は痺れを切らして今自分の目の前に居る雛月を指差して言った。

「龍太が見えていなかっただけで雛月はずいぶん前から私のそばにいたぞ。それに、相手を取り込むごとに強くなるのは漫画やゲームでもおなじみの設定じゃないか」


でもこれは現実だ。

俺や鞠亜を巻き込んで、変なもの呼んで、危険な目にあわせて

それにその雛月が本当にお前の分身で完全に言う事を聞くなんて保障あるのかよ!

本当はヤバイ怨霊に取り憑かれてていいように利用されてるだけじゃないのか!?


そんな言葉が喉元まででかかったが一旦飲み込んだ。

もし本当に雛月の正体が怨霊かなにかだったとしたら、今ここで喧嘩を売るのは分が悪すぎる。

親父に相談して対策を立てた方がいいだろう。

とりあえず今はは雛月の機嫌を損ねないように早くここから離れる事が先だ。


「咲耶ちゃん、龍ちゃん、そろそろ片付けようよ。もうすぐ完全下校時刻だし」

鞠亜が時計を指しながら言った。

さっきあった出来事に対してずいぶんと落ち着きすぎている気がする。

目の前に透けてはいるが咲耶がもう一人居るのに。

「そうだな誰かに見られても厄介だし早く片付けるとしよう」

片づけをしている時、鞠亜の顔を雛月がしつこいくらいに覗き込んでいたが鞠亜はまったく気づいていない様子だ。

どうやら鞠亜には雛月が見えていないらしい。

俺は霊感は多少はあるが今までは気配を感じたりぼんやり視えたりしたことがあるだけで、ここまではっきり視えたことは無かった。

だからすっかり鞠亜にも視えるものだと思っていたがどうやら違うらしい。

ずっと雛月の方を見ていると雛月と目が合った。

にっこりと笑ってひらひらと手を振ってきた。

咲耶だったらこんな反応はしないだろう。

そうこうしている間に片付けはすっかり終わってしまった。

雛月の姿は片付けが終わるといつの間にか居なくなっていた。


「ところで鞠亜はさっきこっくりさんであんな大変な目にあったのに、落ち着いてるよな」

帰り道、気になったのできいてみた。

この前の能面さんのときとはずいぶんと様子が違うからだ。

「だって、咲耶ちゃんと龍ちゃんが護ってくれるし、大丈夫かな、って思って」

無邪気に微笑む鞠亜にときめきつつ、俺は鞠亜に俺達を過信するなと注意した。

いつも今回みたいに俺たちの力でどうにかなるとは思えないし、鞠亜はそういうものを引き寄せやすいのだから今日みたいに自分から変なものを呼び出すような事はあまりやらないでほしい。


「しかし今回のことでひとつ解った事がある」


今まで黙っていた咲耶がぽつりとこぼした。

「解った事って?」

鞠亜が不思議そうに咲耶を見た。

解ったというのはあの生首の正体だろうか、それとも、雛月のことだろうか。

俺も気になり咲耶の方を見ると意を決したように昨夜は口を開いた。


「やっぱり必殺技とは別に毎回使えるような決め台詞は必要だと思う」


いつもと変わらない咲耶の言葉に全身の力が抜けていくような気がした。

次回更新予定は7/5です。

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