表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/20

第6話 綺麗な石と、香る花束

今日はフローラの誕生日だった。


教室ではたくさんの子どもたちが、フローラの机のまわりに集まっていた。

いつもはツンとしたフローラも、今日は少しだけうれしそうに見える。


「これ、あげる!」

「フローラ、誕生日おめでとう!」


大小さまざまなプレゼントが次々と積み上がっていくのを、

ロアは少し離れた席から眺めていた。


(……渡さなきゃ)


ロアは、家から持ってきた小さな布袋をそっと握りしめた。

中には、石コレクションの中で、一番フローラに渡したいと思った石が入っている。


その石は、淡い水の膜のような光を宿している。

柔らかく、でもひんやりとしたその光が、フローラの服のレースの気配に似ているのだ。

そして石の奥では、温かい光や爽やかな光が、

小さな感情のように形を変えながら瞬いている。


勇気を振りしぼって、ロアはフローラの机へと歩いた。


「……あの、これ。誕生日、おめでとう」


フローラは袋を受け取り、中身を取り出した。


「……なにこれ?ただの石?」


その声は、思ったよりずっと冷たかった。


「これが……プレゼント?」


ロアの胸がきゅっと縮んだ。

自分がフローラをがっかりさせてしまったことが、

痛いほど伝わってくる。


「……ごめん」


それだけ言って、ロアは席に戻った。




帰り道、ロアは道端でフローラの姿を見つけた。

フローラはしゃがみ込み、野に咲く花を摘んでいる。


(花……好きなのかな)


ロアは少し考えてから、

道の両側に咲く花を一種類ずつ集め始めた。


手に取った花のひとつは、小さく燃えるような熱を宿した光を放っていた。

別の花は、胸の奥がじんわり温まるような、やわらかな気配をまとっている。

さらにもう一つの花は、まるで小さな声で笑っているかのように、賑やかで弾むような光を揺らしていた。


ほかにも、しんとした静かな光を宿す花や、

不思議な神秘さを薄っすらとまとった花があった。


ロアはそれらをひとつずつ束ねていった。


(フローラ、喜んでくれるかな……)


そう願うと、心臓がどきどきしてきた。




小さな花束ができあがると、ロアはフローラの前に立った。


「……これ。綺麗でしょ?」


フローラは花束を受け取り、鼻を近づけた。


「……いい香り!ありがとう!」


さっき石を渡したときとは比べものにならないほど、

フローラの顔がぱっと明るくなった。


その笑顔を見た瞬間、ロアの心の奥で何かが強く弾け、

世界の光が一瞬止まった気がした。


(綺麗って……いろいろあるんだ)


石の光も、花の香りも、

どちらも『綺麗』だけれど、フローラに届くものは違う。


ロアはそのことを、初めて知った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ