第5話 光の神と影の神
今日は、初めての宗教の授業の日だった。
宗教の授業だけは、学校長のリーファ先生が担当する。
学校長が授業をする、と聞いてロアは緊張していたが、
教室に入ってきたリーファ先生は、柔らかい笑みを浮かべた優しそうな人だった。
「みなさん、今日は光の神と影の神についてお話ししますね」
リーファ先生の声は、森の葉が触れ合うように静かだった。
「光の神は、厳しき父のような存在です。
その光は厳しく、時に痛みをもたらします。
しかしその光は、作物を育てる恵みにもなるのです」
夜の民にとって、強い光は『痛いもの』だ。
子どもたちは少し身を縮め、「怖い神様だ」とひそひそ声を交わした。
リーファ先生は続けた。
「影の神は、優しき母のような存在です。
その影は優しく、目を守り、体を休める。
夜は影の神の祝福の時間ですね」
子どもたちはほっとしたように笑顔になった。
リーファ先生は、子どもたちを見渡して問いかけた。
「みなさんは、一日の中でどの時間が好きですか?」
「夜!」「影の神の時間だもん!」
子どもたちは口々に答える。
フローラは胸を張って、「当然よね」と得意げに言った。
ロアは、みんなの声を聞きながら、胸の奥がざわついた。
(僕は……朝が好きだ。
暖かい光の波が差し込む時間が、いちばん綺麗に見える)
でも、それを言ってはいけない気がした。
自分の感覚は『間違っている』のだと思っていた。
ロアが黙ったまま俯いていると、
リーファ先生がそっと近づいてきた。
「ロアくん。正解はありませんよ。
好きな時間を、そのまま教えてくれていいんです」
優しい声に背中を押され、ロアは小さく息を吸った。
「……ぼくは、朝が好きです」
か細い声だったが、教室にちゃんと届いた。
リーファ先生は、ふわりと微笑んだ。
「そうですね。朝は恵みの合図でもありますから。
実はね、先生の名前の『リーファ』は、
朝の光に照らされた木の葉を見て付けられたそうですよ」
ロアは驚いて顔を上げた。
ロアは、学校の先生という存在はみんな怖いものだと思っていた。
けれど、リーファ先生の言葉は、
朝の光のように優しく胸に染み込んだ。
まだ他の先生は怖いままだったけれど、
リーファ先生のことだけは、少し信用してもいい気がした。
ロアは、学校がほんの少しだけ近く感じられた。




