8.青空の下
見上げればそこには突き抜ける様な青い空があった。
落ちてきそうな空と言う言葉があるけど、俺に取ってはこの空は全くの逆の言葉を彷彿とさせる。
この空こそ自由の証だ、希望の証だ……
どこまでも突き抜けるように青く、どこまでも広がり、どこまでも伸びていく。
この空をたどれば、俺はどこまでも、どこにでも行ける。
もう二度と見ることが出来なかったかもしれなかった青い青い空。
もう、諦めかけていた青い空。
知らず知らずの内に涙が頬を伝う。
傍らに立っていた老人が呟く。
「そうか、気丈に振る舞ってはいても、君はまだ少年だったな」
「すいません、つい……」
「構わないさ。アレだけの仕打ちを受けたんだ。そして、それを自らの手で打ち破ったのだ、君は幾らでも涙する権利がある、資格がある」
「はい、すいません。ありがとうございます……」
老人に諭されると、それが切っ掛けになってか、せきを切ったかのように涙が次から次へと流れて行く。
つらかった、本当につらかった。
嫌だった。何度、あの男を殺してやろうと思ったか、何度死にたいと思ったか。
何度、何度……
それでも……
それでも、この瞬間を味わえたことは、生きてこの空の下に出ることが出来たことは……
「嬉しい…… 生きてて、生きててよかった……」
「ああ、よくぞ生き抜いた。よくぞ生きることを諦めず戦った。きっと、君の人生これから沢山の幸福が待っている、きっと君の歩む道は希望に満ちている……」
老人の言葉に耳を傾け、私はただただ頷く。
彼の言葉がただの慰めの言葉だとしても。
根拠の無い言葉だったとしても。
それでも、彼と言う人の真っ当な優しさが痛い程の心に染みる。
それが止まらない涙に拍車をかける。
「ありがとうございます。ありがとうございます……」
「いい、今はいい。今は思う存分泣くんがいい。全てはその後にしよう……」
「はい…… はい……」
突き抜けるような青空の下。私はただただ涙した。
その涙が枯れるまで……
そして、彼はそんな私を、ただただ無言で見守っていてくれた。




