7.異世界へ
馬の蹄が地面を鳴らし、荷台の車輪がカラカラと転がる音が聞こえる。
それと同じくして荷台が小刻みに揺れる。
乗り心地は良くはない。ちょっとしたアトラクション気分だ。
馬車の外からは街の喧騒が感じられるが、見ることは叶わない。
この荷台の中を見られようものなら大騒ぎになることは確実だ。
なんせ人が死んでる。
しかも、めっちゃっ沢山。
まさに地獄絵図。まだ死に立てホヤホヤだから臭いとかそう言うのはないけど、心根しか生臭いような魚臭い様な感じはする。
よし……
「さて、それじゃあ、持ち物を改めさせて貰いますか……」
俺は無造作に転がった遺体達の服を剥ぎ、持ち物を剥ぐ。
その中に何とか俺のサイズが合いそうな服があったので、それを着てみる。
「くさい……」
やはりと言うかなんと言うか、血の臭いがする。しかも、ブカブカだ……
でも、これで奴隷には見えないだろう。
俺は再び、遺体達の持ち物を改める。
恐らく、貨幣であろうもの。これは一つの袋にまとめておこう。絶対使う……
そして、彼等が待っていた武器。
短刀と剣が数本。
うーん、もしやこれはナイフとショートソードと言う物なのかしら……
見た感じ、ザ・初期装備、ザ・無課金。
そう言えば、服装も無課金みたいな服だしなコイツら……
ふん、あんなしょうもない男の部下をやってるぐらいだ、しょうもない奴等だったんだろう。死んで当然だな……
そう考えると、このお金もどれだけの価値があるのやら。
そんなおり、馬車が小刻みに激しく揺れ始めた。
どうやら、舗装された道から外れたみたいだ、もしかして街を出ることが出来たのか?
耳をすませると街の喧騒が遠退いて行くのがわかる。
どうやら、上手く街を出れたみたいだ……
少し外を覗いてみるか?
そう思い、こっそり馬車の中から外を覗いて見ると、幌の切れ間から外の景色を覗くことができた。
高い城壁がそびえ立っている。
大きな門にその奥から見える街並み。
あの城壁の素材はレンガだろうか。それとも石だろうか……
しかし、やはりと言うか、なんというか、ここは俺のいた世界ではないんだな……
わかってはいたけど……
いざ、形になってその証拠の様な物が目の前に現れると少し驚きはする。
いや、もしかしたら、イギリスとかヨーロッパの可能性も……
いや、やっぱり剣とか普通は持ってないだろうから異世界か……
まあ、奴隷とか、女になる薬とかが存在する辺りでわかってはいたけど、ここに来てやっと実感が沸いて来たな……
この世界に来てから、あの暗い部屋以外を見たことなかったから、ただ誘拐されただけって可能性も、とは考えてたりはしてたんだけど……
その可能性は完全に消えたな……
まあ、この身体が女になってしまった事こそ、ここが異世界であるなによりの証拠ではあるけどな……
もしあるとすれば、今までの事が全部夢だった、と言うオチか……
そんなことを考えていると、不意に馬車が止まった。
「そろそろ良いぞ。外に出てひと休みしよう」
老人の声が外から聞こえて来る。
よかった。何分揺られていたか知らないけど、そろそろ意味の無い自問自答にも手詰まりになっていた所だ。
もう、この世界が俺のいた世界ではなく、異世界である事は間違いないし。俺が私になってしまったことも間違いない事実だ。
もうそれを受け入れなければならない。
受け入れて生きていかねばら無い。
元の世界に、元の姿に戻れる方法があるのか、それもわからないが、それらの何もかもを受け入れて生きて行くしかないんだ……
俺は足を踏み出し、馬車の外に向かって歩き出した。
馬車の外の世界。
新たなる世界、異世界に向かって。




