24.野営
水面に写るは黒髪の美少女。
「今日の夜食はジャガイモよ♡ 塩をまぶしにまぶして召し上がれ、御主人様♡」
それがホカホカのジャガイモにフォークをブッ刺している。
艶のある濡れたような鴉の濡れ羽色の髪。こんなに黒かったのかと思える自らの漆黒の瞳。
「ヨゾラ殿、何をやってるんですか?」
「いえ、つい現実逃避を……」
まさか、こんなタイミングで自分の姿を見ることになるとは完全に油断していた。
あまりのショックに初めて鏡を見たゴリラみたいな反応をしてしまった。
まあ、その後は現実逃避のついでに遊んでいた訳だけど……
「この姿は元に戻らないんですか?」
「まず元には戻りませんな」
え?
あまりの衝撃に声も出さずにグレイスさんに視線を向ける。
見ると、彼はジャガイモを丸噛りしている所だった。
オレサマ、オマエ、マルカジリ……
じゃなくて……
「まず戻らないって? え? え?」
「うむ、まず……」
そう言うと、グレイスは俺の状態をおもむろに説明してくれた。
先ず、俺の現在の状態は残念ながら呪われてるらしい……
呪い。その性質状相手を生きたまま苦しめる用途が強く、解くとかそう言う概念が薄かったりするらしい。
薄いと言うより、解くのが非常に難しいと言った感じらしい。
あるいは術師が意図して戻さない限り解呪は難しいとも言われている……
らしい……
つまり……
「え? あ、あの…… あれ、キスとかで呪いが解けたりしませんか?」
あの王子様とのチッス的な……
俺の言葉にグレイスさんは「これは感心した!」と言った様子で頷くと続けて見せた。
「うむ、よくご存じで。しかし、それはカエルとかアヒルに姿を変えられた時の解呪の方法になりますな。カエルにキスなど普通しないですからな。故に解呪の条件としてそこそこの難解で丁度良かったので一時期流行ったんですよ術師の間で……」
んなモン流行んじゃねぇよッ!!
いや、ならッ!!
ならばだッ!!
「じゃ、じゃあ、取り敢えずキスしましょう。試してみましょう!!」
取り敢えず勢いに任せてグレイスさんに飛び付く……
この際、男性への拒絶反応もクソもねぇ!! やれることはやってやるぜぇ!!
グレイスさんならイケるッ!!
「うげっ!!」
がグレイスさんの瞬時のアイアンクローにより、俺は無様にも無力化されてしまった。
「ヨゾラ殿、冷静になりなされ。貴女はその…… 言いにくいですが、夜伽の商品となる為にあの霊薬を飲まされたのですぞ。そう言う類いの行動は解呪の条件とは成ってない筈です。わかりましたか?」
た、確かに……
その理論はスッゴい腑に落ちまする……
え!? じゃあなに?
俺は解呪の方法がわからない限り元には戻れないってこと?
ど、どうしようぅ……
は、半年くらいで元に戻ると勝手に思ってたのにぃ……




