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呪われし戦乙女の冒険譚  作者: ふたばみつき
異世界転生編
2/20

2.憎しみ、恨み、怨み、そして……

「オ゛エェエッ!! オ゛エェエッ!!」


 先程まで口の中にあった物を吐き出す。

 全て、全てを吐き出す……


 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

 死ね死ね死ねッッ!!


「ペッ!! ペッ!! エ゛ッ!!」


 口の中に残った物を次こそ完全に吐き出す。


「クソクソクソ!! アイツ、絶対に殺す、絶対に!!」


 なんで、俺がこんな目に合わなきゃならないんだ。

 どうして……

 どうして……


 不意に鎖で繋がれた腕が視界に入る。

 

 その瞬間、いわれもない無力感に襲われる。


 私はなにもできない。

 俺はなにもできない。


「くそぉ…… どおして、どおして、私が…… 俺が…… 俺は…… 私は……」


 もう、からこれ一ヶ月になる。


 突然、訳もわからないまま異世界に跳ばされ。

 目の前にいる訳のわからない気持ち悪い連中に捕まって。


 そして、訳もわからない薬を飲まされて。

 身体を女に変えられて……


 そして、そして…


「どうして!! 私がこんな目にッ!! どうして!! 俺が何かしたのかッ!! 私が…… うぅ…… 私、私…… うぅ……」


 その時、私/俺の腕に何かが触れた。


「ひっ!! ごめんなさい!! ぶたないでッ!!」


 見ると、隣の鉄格子に入っている老人がこちらに手を伸ばしていた。


 な、なんだ、コイツッ!!


「なによ!! 貴方も私をッ!! いや、お、俺をッ!!」


 すると、老人は人差し指を立てると唇に当てみせた。


 それは、静かにしろと言う慣れ親しんだ仕草だ。


 思わず目を丸くしてしまう。

 すかさず周りを見渡す。


 辺りにある鉄格子の中の奴隷達は、こちらを鬱陶しそうに見ているが興味はないらしく、直ぐに視線を落とした。


 再び老人に視線を戻すと、彼は先程と同じ様に人差し指を唇に当て、私/俺と同様に周りの様子を心配そうにキョロキョロと眺めてもいる。


 この老人は一体……


 暫くして、私/俺が落ち着いたのを確認すると、再びこちらに腕を伸ばして来た。


 思わず身体が硬直する。


 男の手。


 それは今の俺/私には、もはや恐怖の象徴でしかない。


 逃げたい、この老人から離れてしまいたい。

 全てを拒絶してしまいたい……


 でも……


 でも、本当にそれでいいのか……


 私は…… いや、俺は……


 老人の目を見ると、澄んだ様な青色をしている。まるで青空の様な綺麗で澄んだ瞳。


 それは、この世界に来て一ヶ月は見れていない見事な空色。


 もう、見ることも出来ないと思っていた青色空の色だ……


 忘れかけていた感情が呼び起こされる。


 もう一度…… 

 もう一度、青空の下に……

 外の世界に……

 この鉄格子の外に……


 俺/私は老人の伸ばした手を見据える。

 ただ彼の手を拒絶しない、ただそれだけ……


 情けないけど、今の俺/私にはこれが精一杯。

 

 老人の手が真っ直ぐと俺の腕に触れる。

 そして、何かを書くように、何かをなぞる様に動く。


 これは……

 これは文字だ……


 彼は文字を描いている。


 俺は老人の指を追う。彼が何を伝えようとしているのか、それを突き止めるために……

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