表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呪われし戦乙女の冒険譚  作者: ふたばみつき
異世界逃亡編
19/23

19.遭遇

 日が落ちると共に街に明かりが宿る。


 人工灯の無い異世界、ゆらぎゆらぐ自然に限り無く近い柔らかな明かりが街を灯らして行く。


 暖かい赤みがかった光が夜の闇を和やかに照らす。


 まるで異世界の様な光景だ。

 まあ、ここ異世界なんですけどねッ!!


 宿に戻るとグレイスさんは店主に頼み、夕飯は部屋に待って来て貰う様に手配した。


「さあ、今日は疲れたし。夕飯を食べたらゆっくり休息としよう」


「ええ、そうですね。久し振りによく寝れそうです」


 そんなやり取りをしていた矢先、ガチャリと音を立てながら行く先の扉が開いた。


 あの部屋は兵隊だか、軍人だかが止まっていた部屋だ……


「むむ……」


 グレイスさんの表情が少し歪む。

 

 そして、規則正しい足音と共に部屋から兵隊達がゾロゾロと現れる。


「おやおや、これはお勤めご苦労様です」


 グレイスさんはぬけぬけと言って見せる。かなり図太い。

 しかし、抜け目無いと言うか、なんと言うか、胸に手を当てながら軽く会釈をし、顔をなるべく見せない様にしている。


 兵隊達は軽く「うむ」と言うと俺の隣を過ぎて行った。


 俺も軽く会釈をするが緊張で口から心臓が飛び出しそうだ。


 気分はアレ、アレだ……


 絶対に倒せない敵から逃げたり隠れたりするゲーム。

 アレと似た感覚がする。


 おしっこ、出ちゃいそう……


「まて、そこの……」


 最後に通り過ぎた兵隊がコチラを振り向いた。

 グレイスさんの顔が一瞬強張る。

 私の顔は勿論、強張る。


 て言うか、上手く呼吸が出来ない。

 そんぐらい緊張してる。

 て言うか、緊張で死にそう。


 ハァ、ハァ……


 異世界転生しそう、ここ異世界だけど……


 兵隊はゆっくりとコチラに歩いてくる。

 そして、その視線がグレイスさんと私を交互に見る。


 おもむろに兵隊はその手が振り上げる、そして……


「失礼……」


 すると、その手はおもむろに私が目深に被っていたフードを掴むと剥いで見せた。


「むっ!!」


「ひっ!?」

 

 思わず小さな悲鳴を挙げてしまう。

 

「こ、これはっ!?」


 こ、これはどうなんだ!? 

 ば、万事休すか!?


「す、すまない。女の子だったか。それにその髪…… 驚かせてすまない……」


 私の怖がる姿を見て兵隊はおろおろとしている。

 その様子を見かねたのか他の兵隊が直ぐに俺の駆け寄ってきた。


「ああ、ごめんねお嬢ちゃん驚かせてちゃって。今、敵国の奴等がここら辺に居るらしいから、つい顔を隠しているのが気になっちゃって」


 そう言う、駆け寄ってきた兵隊は人相書きの束をコチラに見せて来た。


 その紙の中にはちゃっかりグレイスさんも混じっていた。

 それを見て思わず色々な意味で頬が引きつってしまう。


 ひ、ひぃぃいぃ……


「ああ、大丈夫! 俺達が見回りしてるから君達が危ない目に遭うことはないよ!」


 そう言うと、兵隊は胸に手を当てて見せた。

 その手に握られた人相書きのグレイスさんが目に写る。


「は、はいぃ……」


 でも、人相書きのグレイスさんはよく見ると今現在よりもかなり恰幅も良くガタイもよく若々しく見える。

 

 や、やっぱり彼もかなり疲弊しているのか。これなら人相書きのグレイスさんと私の後ろにいる老人が同一人物とは……


 いや、わかるよー!!


 私の後ろにいるのがグレイスさんだって、わかるよ、まるわかりだよ!! 


「ああ、これはご苦労様です。すいません孫が紛らわしい格好をしていて……」


 グレイスさんが私の後ろに駆け寄るとさりげなくフードを被せてくれた。

 

 その様子を兵隊がまじまじと眺めている。


 兵隊までこんな反応をするとは、この黒髪は相当珍しいらしいな……


 二人の兵隊がフードを被った私を覗こうとしてくる。


「ひっ……」

 

 その行動に思わず身を引いてしまう……


「ああ、いえ。こちらこそすいません。呼び止めてしまって、ではお気お付けてください!」


 兵隊は私の態度を見て我に返ったのか、声を挙げると、ビシィ!! 敬礼し回れ右をして去っていった。


 兵隊達が立ち去ると、慌ただしかった光景は瞬く間に静かになった。

 

「ふう。兵隊達が君に目を奪われていて助かったな……」


「……は、はひ……」


 私は思わず身体中の力が抜け、そのまま通路にへたり込んでしまった。


 おしっこち、びっちゃった、かも……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ