18.旅の装い
「まあ、君がこれがいいと言いの構わないが、本当に良いのか?」
「ええ、いいですね」
俺はフードを目深に被ると羽織ったローブの前側を締めて見せた。
ローブの中身は普通の街娘の様な格好だが、ブーツにタイツとかなり動きやすい装いにはなった。
それに、これならフードさえ忘れなければ髪の色は隠せる。
何よりサイズが合ってる。
「貴方はバッチリ似合ってますよ」
旅人のような服装の俺とは違い、どちらかと言うと商人の様な格好をしている初老の男性がそこ立っていた。
何処と無く気品を漂わせながら……
「御二人ともよくお似合いで。ですが…… お嬢様の方は本当にコチラでよろしいのですか?」
俺を眺めると店主が不満げな様子で口を開いた。
「うむ、彼女がそう言うのなら仕方ない……」
グレイスさんも何やら不満げな表情をしている。
どうや、二人とも俺のチョイスに納得言ってない様子だ。
だが、私は一向に構わないッ!!
「せっかくお綺麗な顔立ちをしているのに…… それにあの烏の濡れ羽色の様な艶のある黒い髪……」
店主がうっとりとした表情でコチラ見る。
その視線のは俺を見ると、チラチラと置いてある服の数々に視線を結んでいった。
頭の中で俺を着せ替え人形にでもしているのだろう。
「まあ、彼女はあまり人目に見られたくない質なのでな……」
「はあ、そうですか。それは残念です……」
店主とグレイスさんの二人は少しばかりの会話を済ますと残念そうに金銭のやり取りを済ませた。
「時に店主よ。宿に帝国の軍人様が居たが何かあったのかな?」
「ああ、なあに先の戦の残党がまだ居るんでね。その後始末ですわ。お二人さんもお気を付けて。まあ、こんな田舎にはそんなものも来ないと思いますがね……」
グレイスさんはその言葉を聞いて頷くと、店主に礼を言って店を後にした。
俺はその後をくっついて行く。
店主の目が少し気になるが問題無いだろう。
服屋の血が騒いでいるだろう。
果たして、俺はそんな良い見てくれをしているのだろうか。
「グレイスさん。私はそんなに可愛いんですか?」
「うむ。絶世と言う奴だろうな。我輩あと二十若ければ心を奪われていただろう」
そう言うとグレイスさんが笑った。
「はあ、そんな感じなんですか……」
ううむ、鏡を見てないから自分がどんなツラなのか全くわからん。
なんだか、気になるな……
私が難しい顔をしているとグレイスさんは再び笑った。
「ははは。まあ、それは呪いとは言え天から授かった物だ。精々利用するがいいさ。女の武器と言う所だろう」
そう言うと彼は宿へと歩きだした。
その後ろ姿を見て思わず口を開く。
「宿には兵隊さんが居ましたけど大丈夫ですか?」
「うん、なあに大丈夫だろう。相手もこの我輩が商人の格好をしているなんで思っても見ないさ!」
そう言うとグレイスさんはそそくさと宿へと歩いていった。
果たして、本当にそうだろうか……
結構、あの人目立つよ……
俺は一抹の不安を抱きながらも彼の後をついて行った。




