13.剣術・後編
「ひぃ、ひぃ、疲れた……」
「でしょうな。全くの素人には少しキツイでしょう」
ひぃ~ 腕が痛い、足が痛い、脇腹が痛い、手が痛いよ~
グレイスはと言うと、俺が素振りをしているのを他所にイソイソと焚き火の準備を始めていた。
暫くして火が起こると、馬車の荷台にあった積み荷から食べ物を拝借し料理を始める。
鍋に水を入れて火をかける。そして、ジャガイモにニンジン、ベーコンを切り鍋へと放り込むと塩を入れて煮込む。
いい香りがする。
正直、この世界の食べ物は粗末な物で俺の世界の食べ物と比べると話にならない。
味も塩味とかしかない……
でも、私はあの酷い鉄格子の中での経験があるから、まるで気にならない。
むしろ、最高。
普通の食べ物が食べられる。それだけの事がどれだけ幸せな事か……
「ヨゾラ殿、こんなパンしかなくて申し訳ありませんな」
そう言うと、グレイスが荷台から二人分のパンを取ってきてくれた。
「いいえ、普通の食べ物が食べられるだけで幸せです」
「ああ、そう…… ですな……」
グレイスがほんのり悲しげな表情を浮かべる。
きっと、檻の中にいた頃の私の様子を思い出したのだろう。
「忘れてください」
「ああ、はい……」
正直、アレは忘れて欲しい。
あんな惨めで情けない姿を見られていたと思うと死にたくなる。
希死念慮にも程がある……
気まずい沈黙が辺りを包み込む。
穏やかな食事のハズだったのに、私の態度のせいで暗い雰囲気になってしまった。
これは参った、しまったな……
何か話をして紛らわさなければ……
「グレイス…… さん」
「グレイスでいいですよ」
「グレイスさんはどうしてあんなところにいたんですか?」
「ははは、まあ、話せば長いですな。まあ、おいおい話させて貰います」
そう言うとグレイスは申し訳なさそうに会釈をした。
どうやら、この人も話したくないことはあるらしい。
まあ、それらなら……
「じゃあ、お互い様と言うことでいいですね」
「ははは、ええそうですな」
グレイスが明らかな作り笑いを浮かべる。
俺もそれに向けて作り笑い飛ばす。
ごめんなさい、グレイスさん。
今の私にはこれが精一杯みたいです。
やっぱり、駄目だな。まだ男性と話してるだけで手が震えてくる。
まったく、我ながら情けない……
速く、速く強くならなければ……




