第九話 レシピ開発は忙しい
「レタスの苦味か……調理法でなんとかなるかな?」
俺はリリィからもらった情報を思い出しながら、いくつかの方法を思いついた。苦味を抑えるためには、まずその苦味を和らげる調味料や素材を使う必要がありそうだ。
「まず、レタスを軽く茹でるか、蒸してみるのもアリかもしれんな。シャキシャキ感が少し落ちるかもしれんが、その分苦味が和らぐかもしれんし。」
次に、他の食材との組み合わせを考えた。
「甘いドレッシングもいいが、果物の酸味や甘みを加えるのも一つの手かもな。例えば、リンゴやオレンジを使ってみるとか。あとは、レタスを炒めて、少し甘みのあるソースで味付けするのもいいかもしれん。」
また、俺はリュンレタスの葉の部分を使う際に、もっと大胆にアレンジしてみるのも面白いと思った。
「うーん、もし苦味を完全に消すのは難しそうなら、そのまま活かして、アクセントとして使うのもありだな。料理に深みを持たせるために、あえて少し苦味を残して、他の食材でバランスを取るか。」
さらに考えを巡らせ、リリィに向かって言った。
「リリィ、リュンレタスの苦味を和らげる方法を試す前に、少し色々な食材と組み合わせてみるのも面白いかもしれん。果物や調味料を使って、甘みと酸味で調整してみるのもアリだな。」
リリィはうなずきながら言った。
「それなら、試してみて、どんな味になるか楽しみです!アレンさんなら、きっと素敵な料理に仕上げられると思いますよ。」
。
アレンはリリィの母親から差し入れとしてロールケーキを受け取った。見た目が美しく、ふわふわのスポンジとクリームがたっぷりと巻かれており、思わず目を奪われる。
「ありがとうございます、リリィのお母さん。こんなに美味しそうなものを!」
「どういたしまして。ちょっとしたお礼よ。がんばってね、アレンさん。」
ロールケーキを手に取ったアレンは、少し顔を赤くしながら礼を言ってから、ケーキを一口食べた。甘さと柔らかさが口いっぱいに広がり、疲れた体にじわじわと元気が戻る。
「うーん、美味しい! やっぱり甘いものはいいな。」
その瞬間、アレンの頭にふとひらめきが浮かんだ。
「……そうだ! リュンレタスの苦味も、もしかしたら肉で包んでみたらうまくいくんじゃないか?」
アレンは急に思いついたアイデアに興奮し、手元にあったロールケーキを見ながらさらに考えた。
「レタスの苦味が強いから、そのまま食べるにはちょっと難しいけど、肉で包んで焼いたら、肉の旨味がレタスにしっかりと染み込んで、苦味も少し抑えられるんじゃないか?」
アレンは興奮してロールケーキの余韻を楽しむ暇もなく、早速そのアイデアを実行に移す決意を固めた。
「よし、次はそれを試してみよう!肉で包むことで、レタスのシャキシャキ感も活かしつつ、苦味も調整できるはずだ。」
リリィがアレンの様子を見て、少し驚いた表情を浮かべた。
「どうしたんですか、アレンさん? そんなに真剣に考えて。」
「いや、実はレタスの苦味をうまく消す方法を思いついてな。リュンレタスを肉で包んで焼いたら、きっとうまくいくと思うんだ。」
リリィは驚きながらも、楽しげに答えた。
「それ、面白そうですね! どうやって作るんですか?」
「うん、ちょっと試してみないとわからんけど、まずは肉で包んで焼いて、その後に何かで味を整える感じだな。」
アレンはそのアイデアに胸を躍らせながら、次の料理に向けて着々と準備を進めていった。
俺はその言葉を励みに、リュンレタスを使った新しいレシピの開発に向けて、一歩踏み出す。
アレンは図鑑を手に取り、どんな肉を使うべきか考え込んでいた。リリィに頼んで図鑑を持ってきてもらったが、どれも一長一短で、どれが一番合うのか決めかねていた。
ページをめくると、突然目に留まったのが「ガリハン」という鳥型モンスターの項目だ。その肉質がどんな食材にも合うと書かれており、アレンはその言葉に興味を持った。
「どんな食材にも合う極上の肉かもしれない……」
その言葉に引き寄せられ、アレンは即座に決心した。
「これだ、ガリハンの肉を使ってみよう!」
リリィがそばでその様子を見ていたが、アレンの決断を見てうなずいた。
「ガリハンって、確かあの森の方にいるモンスターですね。捕まえるのは少し大変かもしれませんが……」
「そうだな。でも、試してみる価値はありそうだ。美味しさが期待できる肉なら、きっとリュンレタスの苦味とも相性がいいはずだ。」
アレンはガリハンの肉を使うことで、リュンレタスの料理がより一層魅力的になると確信した。そして、すぐに準備を整えるため、リリィに告げた。
「行くか。リリィ、ちょっと出かけてくる。」
「わかりました、気をつけて行ってきてくださいね!」
アレンは準備を整え、ガリハンを探しに出発する決意を固めた。
アレンは爆山の森に足を踏み入れた。森の中には、いつもとは違う奇妙な空気が漂っていた。周囲の木々から放たれる花粉が、わずかな風で舞い上がり、そのすべてが爆発的な性質を持っていることを彼は知っていた。
「ここは危険だな……」
アレンは慎重に足を進めながらも、目指すガリハンの足取りを追った。爆山の森では何度も遭遇したことがあるモンスターだが、今回はその肉を手に入れるために、少しリスクを冒さなければならない。
突然、森の奥から大きな音が響いた。その音と同時に、何かが素早くアレンに向かって飛びかかってきた。反射的に抜いた剣を振りかぶると、ガリハンの体が空中で弾け、アレンの前に倒れ込んだ。
「……早かったな。」
アレンは目の前に倒れたガリハンを見つめ、しばしその場に立ち尽くした。予想以上に素早く、そして静かに倒れたガリハン。どうやら最初の一撃で致命傷を与えてしまったようだ。