第八話 完成! 一号店!
アレンは集めた素材を確認しながら、建築魔法の準備に取り掛かった。
「さて……まずは基礎を固めるところからだな」
彼は広げた石材を前にして、魔力を込め始める。建築魔法はただ魔法を放つだけではなく、構造をしっかりと考えながら組み上げる必要があった。
「《基礎強化》!」
アレンの手から淡い青い光が放たれ、地面の石材がゆっくりと沈み込む。凹凸の激しかった土地が均され、しっかりとした基礎ができあがった。
「よし、次は木材を組み立てるか」
次にアレンは、森で集めた木材を並べ、魔法で加工していく。
「《木材加工》!」
魔力の光が木材を包み込み、適切なサイズへとカットされていく。さらに、建物の強度を増すために乾燥と防虫処理も同時に施した。
「これで壁材の準備もバッチリだな!」
彼は壁の枠組みを組み立て、木材と金属素材を融合させて固定していった。次々と壁が立ち上がり、少しずつ建物の形が見えてくる。
「……だいぶ形になってきたな」
リリィと宿の人たちも様子を見に来ており、その早さに驚いた表情を浮かべていた。
「すごいです、アレンさん! 一日でこんなに進むなんて……!」
「はは、建築魔法ってのは便利だからな」
アレンは汗を拭いながら、次の作業へと移る。
「さて、次は屋根と内装か」
彼は集めた木材と石材を使い、屋根を組み立てる作業に入った。
「《屋根設置》!」
魔力を使って、木材を組み合わせながら屋根の枠組みを作り、そこへ石材を加工して瓦を乗せていく。少しずつ建物が完成に近づいていった。
「あともう少し……!」
扉や窓を設置し、内装の仕上げに入ると、ようやく店の形がはっきりと見えてきた。リリィが目を輝かせながら近づいてくる。
「アレンさん、本当にお店を作っちゃいましたね……!」
「ああ、でもまだ終わりじゃない。次は……開店準備だ!」
アレンは満足そうに新しい店を見つめながら、新たな挑戦に向けて意気込んでいた――!
アレンが新しい店の仕上げに取り掛かっていると、リリィが大きな木箱を抱えてやってきた。
「アレンさん! これ、使えそうなものを持ってきました!」
「おお、何だ?」
アレンが覗き込むと、木箱の中には皿やカップ、鍋、フライパンなどの料理道具がぎっしり詰まっていた。
「宿で使わなくなった食器や調理器具です。古いものばかりですけど、まだまだ使えますよ!」
「マジか! 助かる!」
アレンは一つひとつ手に取って状態を確認した。確かに少し傷や汚れはあるが、ちゃんと手入れをすれば十分使える。
「いやぁ、開店前からこんなに揃うとは思ってなかったぜ!」
「ふふっ、アレンさんなら絶対にお店を成功させるって思ったから、私も何か手伝いたかったんです!」
リリィは嬉しそうに微笑んだ。アレンもその気持ちが嬉しくて、思わず笑みをこぼす。
「よし! じゃあ、これを全部キレイにして、店の準備を本格的に進めるか!」
アレンは食器を丁寧に洗い、棚に並べながら、店の完成がいよいよ近づいていることを実感した。
アレンは新しい店の完成が近づく中、次にメニューを決めることを考えていた。店の形が整い、料理道具も整った。あとは提供する料理が決まれば、ようやく開店だ。
「さて、メニューをどうしようかな……」
アレンは少し悩んだ後、リリィに向かって尋ねた。
「リリィ、ここら辺で美味しい食材って何かあるか?」
リリィは少し考え込み、やがて顔を輝かせて答えた。
「それなら、やっぱりリュンレタスです! この辺りでは珍しくて、美味しいんですよ。」
「リュンレタス? 聞いたことないな。それってどんなの?」
「見た目は普通のレタスに似てるんですけど、シャキシャキしていて、少し独特な風味があります。お料理に使うと、驚くほど美味しいんですよ!」
アレンはリリィに尋ねた後、リュンレタスの話を聞いて興味津々だったが、リリィが少し困った顔をして続けた。
「でも、リュンレタスは少し…特殊な食材なんです。」
「特殊? どういうことだ?」
アレンが首をかしげると、リリィはしばらく考えてから説明を始めた。
「リュンレタスは、確かにシャキシャキ感があって美味しいんですけど、ちょっと苦味が強いんです。そのため、一般的にはあまり取引されない食材なんです。」
「苦味が強いのか……?」
「はい、それが原因で、食べ慣れていないと苦手な人も多いんです。でも、実はその苦味が隠し味になることもあるんですよ。上手に使えば、他の料理との相性も良くて、個性が出るんです。」
アレンは少し考えてから、納得した様子で言った。
「なるほど。じゃあ、リュンレタスを使うのは少し工夫が必要か。でも、試してみる価値はありそうだな。」
リリィはにっこりと笑いながら、アレンの反応を見て嬉しそうに答えた。
「そうですね。もし苦味が気になるなら、少し甘いドレッシングをかけるとか、調理法で工夫すれば、食べやすくなりますよ。」
「うん、それならなんとかなるかもな。ありがとう、リリィ。」
アレンはリュンレタスの苦味をうまく活かす方法を考えつつ、次のステップへと進むことに決めた。