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第三話 新レシピと新たな出会い

「……ん?」


 木の実を食べ終え、次の食材を探しながら森を歩いていたアレンは、ふと地面に目を向けた。そこには、青々とした大きな葉が茂っていた。


「この葉、どこかで見たことがあるような……」


 アレンはしゃがみ込み、葉の根元を手で掘り返してみる。すると、土の中からゴツゴツした塊が姿を現した。


「これは……まさか、フツノイモか?」


 フツノイモ。主に非常食として扱われる作物で、長期保存が可能な上、栄養価が高い。味自体は淡白だが、調理次第ではかなり美味しくなる便利な食材だ。王宮の厨房でも、保存食として使われることがあったのを思い出す。


「これはラッキーだな。炭水化物が手に入った。」


 アレンは周囲を調べ、同じような葉がいくつか生えているのを確認する。手頃なサイズのフツノイモを数個掘り起こし、持っていた袋に詰めた。


「さて、これでまともな料理が作れるな。」


 焚き火の準備

 アレンは木の実を焼いた場所へ戻り、焚き火を強める。フツノイモはそのまま焼いてもいいが、せっかくならもう少し手を加えた料理を作りたい。


「スープにするか……ちょうどいい鍋がないけど、何とかなるだろ。」


 まず、小川の水を水筒に汲み、焚き火の上で温める。フツノイモはナイフで適当な大きさに切り分け、煮えやすいようにする。


 さらに、森を歩いて見つけた小さな赤い果実――ワイルドベリーを手に取り、試しに一粒食べてみる。


「ほどよい酸味だな。これをスープに入れたら甘酸っぱくていいアクセントになるかも。」


 アレンはワイルドベリーをいくつか採取し、さっき拾った木の実も加えてみることにした。


 即席・フツノイモと木の実のベリースープ

 温まった水の中に、刻んだフツノイモを入れ、じっくり煮込む。しばらくすると、イモのでんぷんが溶け出し、とろみのあるスープになってきた。


「よし、ここでベリーを入れる。」


 ワイルドベリーを潰しながら加え、甘酸っぱさをプラスする。スープ全体に優しいピンク色が広がっていく。


 さらに、砕いた木の実を加え、香ばしさとコクを出す。仕上げに刻んだハーブを軽く振りかけ、香りをつけた。


「……うん、見た目は悪くない…!」


 スプーン代わりに木の枝を削った即席の道具を使い、スープをすくって口に運ぶ。


「……これは、いける!! いけるぞ!!」


 ほくほくしたフツノイモの甘み、ワイルドベリーの爽やかな酸味、木の実のコク、そしてハーブの香りが合わさり、想像以上に美味しいスープになった。


「これなら腹も満たせるし……最高だ……!!」


 温かいスープが体をじんわりと温める。未知の大陸でのサバイバル生活は続くが、アレンは少しだけ、この環境での自給自足に自信が持てた気がした。


「そうだ……!メモらなきゃ!!」


「……そうだ、メモらなきゃ!」


 アレンはスープを飲み干すと、急に思い立ち、荷物から小さなノートを取り出した。木の枝で即席のペンを作り、手近な石にインクをつけてから、ノートに書き始める。


「フツノイモ……ワイルドベリー……木の実……ハーブ……」


 食材の名前やその特徴、調理法を書き留める。いずれこの地で生き抜くためのレシピ集になるだろうし、何より後で忘れないようにするためだ。


「こうして記録に残しておけば、後で思い出せるし、次回の料理にも役立つ。」


 アレンはノートに自信満々に書きながら、ふと外の音に気づいた。風の音が少し強くなり、葉が揺れる音が大きくなっている。


「……何か、近くに……?」


 周囲を見渡しながら、アレンは立ち上がった。焚き火の煙に目を細めつつ、耳を澄ますと、森の中から軽い足音が聞こえてきた。


「……人……?」


 目を凝らしていくつかの木を越えると、遠くにひとつの影が見えた。大きな背丈を持ち、しっかりとした足取りで歩いている人物がいる。


「誰だ?」


 アレンは警戒しながらも、相手が武器を持っている様子もないことに少し安心した。しばらく様子を見ていると、その人物がこちらに向かって歩いてきた。


「……あれ?」


 近づいてきたその人物は、長い髪を肩まで垂らした男だった。彼の背中には大きなバックパックが掛かっており、軽装の防具を着ている。腰には剣を携えているが、どこか余裕を感じさせる雰囲気があった。


「おい、そこの君!」


 アレンが声をかけると、その男は立ち止まり、こちらを見て一瞬目を見開いた後、ゆっくりと歩み寄ってきた。


「君もここでキャンプをしているのか?」


 男は穏やかな笑顔を浮かべて言った。聞いたことのない言葉を話しているが、アレンはそれが異世界の言葉だということを感じ取ることができた。


「俺はジン。君は?」


「アレンだ。初めまして。」


 アレンは少し驚きながらも、手を差し伸べた。ジンはその手を握り、握手を交わす。


「君もこの大陸に来たばかりのようだね?」


「ああ、まだ全然知らないことばかりだ。」


 ジンは大きなバックパックを肩から下ろし、座る場所を探している様子だ。


「ちょうどいいところに……! 焚き火の近くで少し休んでいかないか? ちょっと食べ物を作ったんだ。」


「お、食事か。何か作ったのか?」


「まあ、簡単なスープだけどな。」


「おおっ!!うまそうだな。」


「これは……!すごくいい! まるで魔法のようだ!!」


「いや、魔法ってほどでもないさ。ただの経験だ。」


 ジンは少し照れたように笑った。


「そういえば、君がここで何しているのか気になるな。」


 アレンが質問を返すと、ジンは少しだけ顔を曇らせた。


「実は、俺は王国の近衛騎士でね。最近、王国の防衛状況を確認するために、少しこの辺りを巡回していたんだ。」


「近衛騎士……?」


「うん、王国の中心を守るための騎士だよ。まあ、俺はあまり目立たないタイプでね。王国を出て、こうしてひとりで活動することもあるんだ。」


「……そうだったんだ。」


 アレンはその言葉を受けて、ジンがただの冒険者ではないことに気づく。彼が身に着けている防具や持っている道具にも、確かに王国の軍隊に通じるものがあった。


「王国の近衛騎士か……そんな人と会うとは思わなかった。」


「そうだろうな。」


 ジンは気軽に笑い、再びスープを一口すすった。


「けど、君もなかなかの食材調達の名人だな。こんな大陸でもうまくやっていけるんじゃないか?」


「いやまだまだだよ。でも、君に会えて助かったぜ。こういう地元の知識を持ってる人と出会うのは運が良かった。」


「それはどうだろうな……君もけっこう運が良さそうだし、これからのことを考えると心強い仲間になりそうだ。」


 ジンはアレンをじっと見つめてから、にっこりと笑った。


「王国のこと、そしてこの大陸のことを色々知りたくないか?」


「もちろん、知りたい。少しでも自分のため、そしてこの大陸で生き抜くために、できる限りのことを学びたい。」


「それなら少しだけ協力しよう。君が生き残る手助けができれば俺としても嬉しいからな!」

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