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読むと危険童話シリーズ

ワシのはなし


 あれは、1982年じゃったかのう?

 子どもが生まれたんじゃ、5つ子じゃ。わしはおどろいた、そりゃもう、びっくらへーこいた。

 あれから43年たった今、わしは自由を求めている。


 なんてこった、足が動かない、折れてしまったのか?

 年はとりたくないよのうと、ただ、悲しい。

 友だちなんていなかったが、次々と別れていったのは、悲しい。

 取り残されていくまま、まだ生けるんじゃのう。いってくれ……。


 おじいさんは、折上さんと、ケッコンしようとしました。

 けれど折上さんは、ケントさんとケッコンするの、と断りました。

 悲しんだおじいさんは、のどじまんカラオケ大会に挑戦。

 だけど勝てなかった、タカには……。


 わしが米寿で孫たちからお祝いの贈り物をそれぞれからもらったが、

 これは何かのう? とショウヘイに尋ねると、たまごっちゃだよ、と返ってきたんじゃ。

 昔にそんなおもちゃがあったような気がするがのう、と言うと、あれはあれそれはそれ、と全然違うものだよとユウヘイが教えてくれた。

 するとワヘイがやってみようかと言い出したので、丸いそれはツンペイが起動した。

 チンペイは、楽しそうに見るばかり。


 コンピューター、おばあちゃん。

 たまごっちゃー、おじいちゃん。


 なんとわしは、丸いそれの中に入ってしまった。

 すごいのう、科学の進歩は、驚きじゃ。

 窓からのぞきみる孫たちの顔は、大きくて、わしが小さいんだとすぐにわかる。

 それで? わしはどうなるんじゃ? 声がそもそも聞こえるのかのう? とわしは疑問だった。


「うるとらさん」

 女の子の声がして、わしは振り返った。そこにいたのは。

「もしや……折上ちよこさん?」「はい」

 懐かしい顔にわしは嬉しくなった。「あ、もう折上さんではなかったかのう」と頭をかいて、赤くなった顔をどうにかごまかそうとした。

 くすくす、とちよこさんは笑った。わしがさいごに見た、若いままのちよこさんじゃ。

「あのね、うるとらさん。お願いがあるの」

「何じゃ?」

「この先にある『長生きの秘穴』へ行って、一緒に冒険をしたいの」

「ほう? そこには何が?」

「とちゅうで『完璧の魔術』を手に入れて、暗黒魔神ガンミドラを倒して、スイミンの石を手に入れたら、国を救った褒美として、チョコレート姫とケッコンしてほしいの」

 なるほどガンミドラはガン見ドラ、長生きには睡眠、チョコレート姫は実はちよこさんの真の姿だったという筋書きかのう。年をとると、経験と知識は豊富よのう。

 国を救うというファンタジーか、楽しみだのう。


 2人はワクワクしながら歩き出した、さあ出かけよう、冒険に!

 明るい未来が、待っている。


「戻ってくるのかな」

「来ないよ」

 ショウヘイとユウヘイは、たまごっちゃを日当たりのよい窓辺に置いた。

「おばあちゃんに会えるかな」

「会えないよ」

 ワヘイとツンペイは、もう1つのたまごっちゃを、隣に置いた。

「2人とも仲よく楽園の中さ」

 チンペイは微笑んだ。


 高齢社会が産みだしたもの。

 たまごっちゃは、よく売れた。

 その先は知らないし、わからない。

 おじいさんは不自由から、自由になりたくて、

 孫たちに願いを込めて、名前をつけた。

 飛んでけ、シュワッチ。


 さあ出かけて、明るい未来だから。




 黒い童話行きに決定。


 読了ありがとうございました。

 感想など、もしあればお待ちしています。


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たまごっちゃ、恐るべし!
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