政略結婚の防止
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「いやあ、めでたいですな。こういうことは早めに言っておいてくれるとこちらも準備が出来たのですが……」
「仕方があるまい。急だったのは事実だ。関係各所に連絡が出来ただけでもマシだ。これでも急いでいたからな。なんとかしないといけないとは思っていたんだ。……3年前から話はしてあったんだが、今回王家からの呼び出しがある。その関係で急がねばならなかったのだ」
「それはわたくしからも謝罪を。知ってはおりましたが、此度の状況を鑑みて、今しなければならないというのがわたしくの意見でした。申し訳ございません」
「エルナンデス殿が悪い訳では無いでしょう。寧ろ年齢的にはそろそろそういった話もあってよかった。それが使用人との結婚だとしてもです。王家からねじ込まれることを考えれば、今のうちにやっておくべきでしょうな。新婚故に2人目はお断りしますという口実が出来ますから」
「左様ですな。わたくしが王でも、ねじ込む可能性はあると思います。牽制程度にはなるでしょう。……今後も功を立てられるのであれば避けられないでしょうが、今回だけであればなんとかなるでしょう。今回だけ、でしょうが」
「仕方がないのは事実だ。2人ともそこまでにしておけ。エレノアが可哀そうだ」
「そうですな。主役を緊張させても仕方がありません。ささ、皆皆様方に挨拶を。多くの民を招待したのですから。……流石に顔役だけになりましたけどね」
「顔役以外を呼ぶのは無理だ。建物が小さすぎる。まあいい。では始めるとするか。あー、皆には集まって貰って感謝している。ありがとう。早速で悪いが――」
今日は冬が本格的に始まる前に結婚をしてしまおうという会である。所謂結婚式だ。俺のな。3年前から狙っていたというか、タイミングが合わなかったというか、そういった関係で伸ばしてしまっていたことを今日、この場でやることにした。相手はエレノア。使用人としてこの領主館で働いていた者になる。まあ、色々とあったのだ。色々とな。本当は戦争が長引かなければ1年前には結婚をしていたはずなんだが、1年延びてしまったからな。しかも、春の王家の呼び出しの対策もあり、急遽結婚式を上げることになったのだ。それで、町から顔役たちを呼び寄せて今回のパーティーを開いたという事になる。急ぎすぎかもしれないが、対策しておかなければねじ込まれる可能性もあると思ったのだ。
本当は春先にする予定だったのだが、繰り上げとなったがために、色んな所で連絡不足がありつつ、更には準備も不足している。それでもなんとか体裁は整えたつもりなんだ。今後はエレノアには代官夫人として役目を担ってもらう事になる。言ってしまえば、世継ぎが必要になるので、頑張って貰いたいと言う事なんだよ。代官は世襲だからな。競争に巻き込まれれば、ここの代官も当主候補がやることになるんだろうが、候補地は他にもある。というか、そっちがメインになるので、ここにはやってこないとは思うんだけどな。俺みたいな変わり者が居なければ。
普通は大きな町を選ぶんだが、俺みたいにこんな小規模の町を選ぶ変わり者が居るのかどうかだ。発展が見込めない町を候補に選んだ時点で負けは見えている。しかも、当主が決め終わったら代官職から解放されて領都で内政に携わるんだ。こんな辺境に来たいと思う奴の方が少ない。ああ、俺に関しては追い出された口なので、一生ここの代官をやらせてもらうんだが。デーデルには悪い事をしたとは思っている。何事も無ければ、息子がここの代官だっただろうからな。
それでもデーデルはよくやってくれている方だ。仕事についても真面目だし、息子も文官に抱え込んでいるが、反感らしきものは無い。既に孫も居るらしいが、野心は特に無いみたいなので良い事だ。こんな土地で揉め事を起こすのも面倒だからな。なるべく面倒は少ない方が良いんだ。俺が大馬鹿者で、どうしようもない屑なら取り替える可能性があるかもしれないが、客観的に見てもマシな部類だと思う。これで代官職は追われないだろうと思うぞ。真面目にやっていることはやっているからな。町が衰退するような事もなさげだし。
ただ、エレノアには苦しいかもしれない。使用人から代官夫人になる訳だからな。お世話する側からお世話される側になるのだ。慣れない事も多くあるだろう。その辺は頑張って欲しい。慣れて貰わないと困るのだ。色々と面会の要請もあるだろうし、代官夫人も暇ではないのだ。特に俺が何処かに出ている時には、積極的に動いてもらわないといけないだろう。そういう事もあり、中々難しい事になるとは思うんだよな。本人のやる気次第な所もあるんだが。
「何はともあれ、これで一息付けたのは確実ですな。後はお世継ぎだけになります」
「左様。出来るだけ早くにお願いします」
「それは俺だけではどうしようもないぞ。エレノアにも頑張って貰わないといけない。男だけで子供が産めるのであれば、そもそもそういう苦労はしないからな」
子供は男女で作らなければならない。もしかしたら、科学技術が発展した国では、試験管の中で子供が作れるのかもしれないが、今のこの国にはそんな技術はない。あっても倫理的にどうなんだって話にもなってくるんだが、とりあえず、男女が揃わないと子供が出来ないんだ。何人かは候補が欲しいよな。複数人子供を作らないといけないんだ。エレノアにも頑張って貰おう。俺が出来ることは殆どないんだがな。
「ぐふふふふふ。これで一安心ですなあ。最低限の仕事は出来るわけでございましょう? それでしたらこちらにも利益が望めるというものですので」
「お前は相変わらずだな、レッタニン。まあ、今回で得たものも多少はある。還元できるものについては還元していく。それまでは待て」
「解っておりますとも。解っておりますとも。しかし、他にも利用価値のあるものが居るというのは良いですな。楽しみにしておきましょう」
そうなのだ。ダンジョンに新たな仲間が加わった。1種類だけなんだけどな。見つけたときは、何に使うのかがよく解らなかったが、糸の生産に役立つだろうという事でダンジョンに取り込んだ形になる。……食用には向かなかったんだよ。それでもオーガスターたちは食べていたんだけど、俺は食う気にならなかった。まあ、普通に考えて蜘蛛だしな。
スパイダーをダンジョンに取り込んだ。そこまで進化しない方みたいなんだけど、まあ良いんじゃないかな。なんとなくだけど、蜘蛛ってアラクネってイメージがついているし、そっち方面に伸ばしていけるんじゃないかなって思っているんだ。進化してくれればそれでいいと思うし、進化しなければそれはそれで問題ない。使える魔物が増えたことは良い事である。蜘蛛から連想できる魔物ってそこまで居ないんだけどな。強くはならなさそうって感じなんだよ。まあ、仕方がないとは思うんだけど。
でも、糸は色々と使えるらしく、粘り気さえ取ってしまえば丈夫な糸に早変わりだ。粘り気も水洗いで大丈夫らしいので、しっかりとした糸にしてもらおうと思う。生産性の高い方が売り物にはなるんだけど、マットゴートの生地はどうしても高価だったからな。多少は民間向けに売っていたとしても、それでも平民ではちょっと高い買い物って感じになっていたし。もっと飽和して安売りできれば良かったんだろうけど。
今後は安い生地を作れるようになると思うので、期待してもいいと思うんだよな。スパイダーの糸を使った生地なんて安いだろうと思う。だって、寒い地域に薄着なんてな? 厚手の服にはならないんだよ。そっちはマットゴートと差別化出来るので、良いと思うんだけどな。