まさかの戦争続行
新作が出来ました。是非とも読んでください。
「ソウルメイトは貧乏神」
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「ふむ。そう動くのか。それなら早く終わらせてくれると助かるな。……現状のままだとこちら側が不利になることは無さそうで何よりだが。しかし、後ろに抜かれた所もあるのか。戦力を出し渋ったのか? 今回の様な戦争で戦力を出し渋るなんて何事だとは思うんだが、普通は負けない戦力を用意するだろうに。それとも、個の力で突破されたか?」
どうやら停戦協議に入ったらしい。向こうが占領しているのは7か所。こちらが占領しているのは11か所。まあ、国力を考えればこちら側が優位に立っていると言う事ではあるんだが、そもそも占領をしているのは俺たちだけだと言う事なんだよ。他は全力で守りに入っていると言う事なんだよな。まあ、それでも7か所は突破されたと。戦力差はそこまで大きくなかったはず。全力で来ているのであれば、そもそも戦線が崩壊しているだろうからな。
そうなったら、他国が攻める事になる。俺たちが抜かれている間に、他国が蹂躙するだろう。他国を睨みつつ、こっちに攻め込んできているから、国力に差があっても攻め込まれていないだけなんだよ。なりふり構わず攻められていたら負けている。そういう状況になることくらいは解っているつもりだ。であれば、今回の成績は上々に感じる。俺たち以外に勝てた場所がないというのが情けないが。
なんにしても、いったんは休戦だ。これは向こうも攻めてこないはず。魔物たちにもその様に指示を出しておかないといけない。協議中に町を魔法爆撃していたら流石に不味いだろう。伝令を出さないといけない。それはベルフェゴールに任せるが。
後は知らせを待つべきだ。それ次第では全軍撤退の可能性もあり得るんだから。今の所は全軍撤退の可能性が一番高い。とっとと停戦した方が楽でいいからな。出来れば冬までには帰りたい。冬に天幕の中で生活なんてしたくないからな。極寒地故、凍死があり得る。そんな事は両軍ともに望まないはずなんだよ。
そんな訳で待った。かなりの時間を待った。交渉だけでどれだけの時間を使うのかと言いたくもなった。とっとと終わらせて凱旋したいというのに。停戦交渉に入ると言ってから既に30日が経過していた。余りにも遅すぎる。上は一体何をしているんだ? もうすぐ秋になってしまう。それから軍を引き上げていたら、冬支度が間に合わない領地も出てくるぞ? 俺たちの領地はそれでも問題ないが、そもそも食糧難になった地域では、農業も碌に出来ていない可能性がある。まさか徴兵できなかったところが抜かれたのか? その可能性は十分にあった。
「報告! エルグランド侯爵家より使者が参りました。こちらに通しても良いでしょうか?」
「ああ、通してくれ」
「はっ!」
漸く交渉が終わったのか。時間を掛け過ぎだ。何を要求し、何を要求されたのかは解らないが、交渉はスムーズに終わらせる方が良かったんだ。これで領地に帰れるな。内容次第では色々と考えないといけなくなってくるが、一先ずは大丈夫だろう。
「失礼します。エルグランド侯爵様より伝令を伝えに参りました。詳細は手紙の方に。この戦線を維持し、冬に備える様にと伺っております」
「は? 冬に備える様に?」
「その様に伺っております。詳細は手紙を見て貰えれば。では失礼いたします」
そういって伝令が帰っていった。……嘘だろ? 冬に備えろという事は、停戦協議が纏まらなかったと言う事しかない。慌てて手紙を読み込んだ。そこには驚きの内容が記載されていた。
「交渉の決裂と、戦争の継続? 馬鹿な。冬になるんだぞ? 戦争なんかしている場合じゃないだろうに。しかも、こちら側が強く出たのか……。ここは占領地が多くても引くべきところだろうが……! 何を考えている? 既に抜かれた7か所はどうするつもりなんだよ。こっちだって戦力が余っている訳じゃないんだぞ。今からその7か所を取り返すのか? 冬で戦えない内に取り返すつもりなんだろうか。それは見積もりが甘いんじゃないか?」
交渉の際に、多額の賠償金と占領地の交換、人質の要求に今後30年の不戦協定。これははっきり言って舐め過ぎだ。こんな状況でこんな条件を飲むはずがない。一体何を考えているんだよ……。とっとと終わらせるのがお前らの役割だろうが。何で強気に出たんだよ。時間はこっちの味方をしないんだぞ。今から秋になる。収穫が終わったら冬がやってくる。……その時に戦場で生活をするのか? この豪雪地帯で冬に戦争になると本気で思っているのか? やってられるか。占領地は放棄しないが、俺たちは街道の守護から町に入る。その位は想定しておいてくれないといけない。街道が使えるようになる初夏までなんとかしないといけないんだよ。
「報告がある。皆には悲報だろうが、戦争が継続になった。冬もこの街道を守護する様に言われてしまった。が、そんな命令を聞くほど俺も馬鹿じゃない。そもそも雪が降り始めたらどうしようも無くなるんだ。冬がやってきたら町へと撤退する。町で防衛戦をする事になる」
「あの、それは本当の話ですか?」
「疑問に思うのも無理はない。だが事実だ。どうもお偉方の頭の中には、この戦争が勝っているように見えるらしい。負けては居ないだけで、勝てているとは到底思えないがな。だが、諸君らは町でゆっくりとしていろ。俺が前線で魔物と防衛に興じる。春になったらこちらの戦場に向かってきてくれればいい。安心しろ。ちゃんと備えはしてある。次の夏までにはこちらもさらに準備をして他の町を落とす事を視野に入れている。無理はするな。そして、俺の事は気にするな。こっちはこっちで対処をする。まあ、魔物に任せることになるんだがな」
そもそもの話、補給網をちゃんと作る必要が出てくるんだ。それを兵士たちに見せる訳にもいかない。それなら町の守護として町に入ってくれた方が有益である。その位の事は出来るだろう。兵士も遊んでいる訳でないんだ。その手の訓練はちゃんとしてある。
問題は俺になる訳なんだが、ダンジョンで生活をする事になるだろう。その周辺で拠点を作り、ダンジョンで寝泊まりをする。そういう生活になるはずだ。簡易的な小屋を作る必要が出てきたな。これでこの冬が辛くなるのは確定だな。最悪に近い形になるだろう。最悪の展開だが、これも想定されたことだ。……悪い方の予想なんて当たらない方が良かったんだがな。3年程は戦争になるだろうという予想は当たりそうで嫌になる。ここまで愚かだったとはな。冬で戦争を止めるだけの頭があってくれれば良かったんだが。……味方に凍死者が出ても知らんぞ。碌に冬越えの準備なんてしている訳がないからな。俺たちはなんとかなるが。
こんな頭の悪い作戦を考えたのは誰なんだよ。普通は痛み分けで終わらせるのが普通だろうが。負けてはいないが、勝っても居ないんだ。その位の分別は付くと思っていたのが間違いだったか。この国の評価を2段階くらい落とさないといけないだろう。そうなってくると、この国に所属していて良いのかという疑問も出てくるわけなんだが、反旗を翻そうにも、国土も無ければ、行く場所もない。北の森を使えるように整備をするにしても、人間は住めないからな。
さて、冬がそこまでやって来ている。まだ秋口とはいえ、準備はしておかなければならない。雪が降り始めてから準備をしても遅いんだ。今のうちにやっておかないといけない。ああ、追加で魔物も大量に用意しないといけないな。次の交渉の時に負けて居たでは話にもならないからな。