緒戦で勝利したが……
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夏まで時間がもの凄くかかった。こんなに待たなければならなかったかと思うくらいには待った。いつもは仕事をしているからな。それ程時間を意識したことが無かったが、ここまで待たされるとは思ってもみなかったんだ。……兵士たちも若干士気が下がってきている。最初の頃は何時やってくるのかと怯えていたんだが、ここ最近はいつも通りに仕事に行って来るって感じで斥候の役割をしている。正直よろしくはないが、ずっと神経を研ぎ澄ませていろとは言えないからな。
だが、そろそろ真剣に取り組んでもらわないといけない。もうすぐとまでは言わないが、敵の軍隊がやってくるんだ。いつ来ても良い様に対処できる体制を整えておかないといけない。春とは違うんだ。夏になったのだから、敵兵が見えてきてもおかしくはない。俺だってすべきことはしているんだからな。兵士諸君にもやることはやって貰わないといけない。俺か? 俺は毎朝毎晩、ベルフェゴールに乗って空から偵察をしているんだよ。軍隊がやってきたら直ぐに解る様にな。
「だから、頼んだぞ。先に見つかったら死ぬ可能性もあるんだ。今日からでいい。しっかりと警戒する様に。まあ、失敗しても君らが死ぬだけなんだが、俺もそれでは困る。生きて帰ってくるように。魔物と違って替えがきかないんだからな」
「解りました! 改めて気を引き締めます!」
そうそう。それでいいんだ。死なれたら困るのは当然だ。人間は魔物と違って簡単には増えてくれないんだから。簡単に増えないのであれば、どうにかして守らなければならない。1年もすれば倍に増えているような魔物とは一緒に出来ないんだよ。
そうして20日後の夕方、ベルフェゴールの上で偵察をしていたんだが、敵の先遣隊を見つけた。数は100近く。後2キロもしたら兵士たちとぶつかるという所で天幕を張り始めた。……こちら側が見つかった可能性はあるんだけど、天幕を張るのか? そこを陣地とするのであれば解らないでもないんだけど、天幕を張っているのはどう見ても自分たちが利用するだけの広さでしかない。これは寝泊まりするだけの為か? そうするとまだ見つかっているようには思わない。本格的な天幕を準備するのであれば、少し下がった位置に天幕を張るだろう。2キロでは1時間もしない内に衝突する。そんな場所に拠点を作るのか? 疑問にしか思わなかった。
「釣りか? でも、後ろには軍隊らしき影は見えない。……もう少し奥まで探ってみるか」
そうして奥まで行って確認したんだが、そもそも本隊が居なかった。という事はこれが本隊か? デーデルの予想が当たった形になるのか。……最低でも1000程度は来るだろうと思っていたんだが、どうやら杞憂で済んだらしい。これなら1日もかからずに処理できる。なんならアントヒーローを突撃させるだけで終わってしまうのではないか。そう思った。そして、陣地に戻ってきたんだが、方針が中々決まらない。
「どうするか。敵はこちらに気が付いた様子はない。天幕を張り、休む気満々なんだよな。しかも距離はそこまで離れている訳でもない。となると、……夜襲が一番良いのかもしれないな。今夜にでもアントヒーローたちを向かわせるか。深夜であれば、夜番の奴らだけで戦いも避けられる可能性がある。今夜しかチャンスはない。ならばやるべきだろう」
方針は決まった。アントヒーローによる夜襲で自分の作戦が決まった。夜襲からそのままずっと引かずに最後まで戦い抜く。疲労を考慮しないといけないのは人間側だ。こちらには数の利がある。それを押し付けていく事こそが正道であると考える。正々堂々? 知ったことか。勝てばよろしいのだ。勝った側が正義なのだ。故に俺はこの夜襲に全てをかける。
兵士たちを撤退させて、なるべく火を使わない様にさせた。夜だから煙も見えないとは思うが、念のためだ。兵士たちを下げて、アントたちを前に出す。まだ時間的には早い。まだ向こうが起きていると思われる。だから深夜を待つ。ひたすらに待つ。そして、その時が来た。
将軍蟻人に命じて一気に戦線を押し上げる。俺たちもついていくためにニブルヘイムに騎乗している。鞍が無いからまあ居心地が悪いが、こればかりは仕方がない。闇夜に紛れて1万の大軍が敵の陣地に突っ込んでいく。
ドドドドドドドドド
地鳴りがするが気にしてはいけない。これだけの大軍が動くんだ。当然地鳴りくらいはするだろう。これにいち早く気が付かれれば、戦闘態勢を整えて迎え撃たれる危険性があったが、そもそも兵数は100程度。分隊であり、先遣隊ではないのだとしたら今回の戦争で戦う相手はこれだけなんだ。勝ちを拾いに行くために、全軍で襲う必要がある。迷いは捨てろ。既に判断を下した後なんだ。迷い、日和り、軍を引かせることがあってはならない。ここで決着を付けるのだ。例えチート野郎が出てきたとしても、しっかりと勝ち切るための準備はしてきたはずだ。5000人くらいならなんとかなる軍隊を用意したはずだ。であれば出来る。100程度、押し潰して見せる。その位の意気込みで挑んだ。
カンカンカンカン
敵の陣地が見えてきた時、向こうの鐘がなる音が聞こえた。既に察知されていたか。これは仕方がない。少数で行く事も出来た。空から一方的に攻撃することも出来た。だが、それらは対策が取られていた場合は、あっけなく沈む可能性があった。一番効果的なのは、全軍による突撃。数の利を活かした戦い方だ。多少バレていても仕方がない。準備期間は短かったはずだ。圧倒的な数の暴力に呑まれてしまえ。そう願いながら突っ込ませる。
警戒していたとしても、余程のチート野郎が居なければ、100対10000なんて相手にもならない。100倍の戦力差をひっくり返せるようなチート野郎が居ないとも限らないが、そんな事を考えていたら戦争なんて出来ない。故に突っ込むしかないのだ。天幕がどんどんと近づいてくる。マルコシアスとベルフェゴールの上に乗っている軍蟻人からの魔法攻撃が空から降ってきた。戦闘開始だ。かなりの規模の魔法が降り注ぐが、生き残りは居る筈だ。まずは弱い奴らを一掃する。それだけで良い。篩にかけるつもりで魔法の雨を降らせる。そして、そこにアントヒーローが突っ込んだ。そして、それだけで全てが終わってしまった。
「……弱すぎるな。魔法に対する対策も何もされていなかった。色々と出来る筈なんだがな。所詮は分隊だという事なんだろうか。いや、そもそも分隊と決めつけることが間違っているのか? しかし、斥候部隊だとしても後ろに軍が居なかったんだから、どう判断すればいい? これで本当に終わりなのか? こんなに弱くても良いのか? こちらとしては、決死の覚悟でここに来ているんだがな……。これではこの戦力を何処に向かわせれば良いんだ?」
勝ってしまった。それも、圧倒的な勝利だ。喜ぶべきなんだろうとは思う。が、余りにも弱すぎた。これでは何かありますと言われているような気分になってくる。戦線が多いから100人程度しか振り分けられなかった? そんなはずは無い。俺の所属しているタイガランド王国には、そもそも街道と呼べる場所が50か所あれば良い方だと思う。5000人しか軍隊が居ない訳がない。何かを見落としているのか? そもそも全力で来る必要も無いと思われていたんだろうか。となると、本隊は後ろの町に居る可能性がある? 様子見の軍隊だけを出してきた可能性は無いか? いや、普通は愚策でしかない。戦力を分けるなんて普通はしない。利があるのか? 俺には思い付かないだけの利があるんだろうか。利があった場合どうする? 軍隊を後ろに配置しておいて、突破したところから無傷の軍隊を押し付けることが出来る? いや、それならそもそもその軍隊を当てた方が有利だ。そうなってくると、俺には考えられないくらいの高度な策がある可能性があるな。そうした場合に俺がとる行動は……。